45話 ユトグア到着
ガーデン・マノスを出てから二つ目の街、ユトグアに到着した。
ここは貿易で栄えたヴィントナーと魔都市クランレアドとの中継地点として利用する者が多く、商人だけでなく観光者や旅人が多い町。さらに大陸横断鉄道も整備されたため、彼らをターゲットにした飲食店や宿屋が多く立ち並ぶ。
すでに夜遅くになっていた為、すぐに宿を探す。さすが宿屋が多い町と言ったところか、いきなりの訪問だったのに一件目で宿泊が決まった。
泊まる事になったのは、インテリアル・パレスというお洒落な名前のホテル。
「四人で四万八千ミラになります。こちらが部屋のキーになります。ごゆっくりどうぞ」
部屋のカードキーを受け取ると、一番最上階の七階の部屋へとエレベーターで向かった。
部屋に入ると、ヴィントナーで泊まったボロ宿とは雲泥の差とも言える豪華な内装。一人で寝るには勿体ないぐらいの大きなベッドが四つ完備されている。
「これで一人あたり一万二千ミラってやっす!」
ホテルのレベルと金額が良い意味で釣り合ってなくて、驚きを隠せなかった。チビ雪も大きなふかふかのベッドにダイブして、子供みたいにはしゃいでいる。
あ、子供だったか!
だが…一つ大きな不満がある。厳密に言うとホテルにではない。
「ところで、何であなたまで一緒な部屋なの?」
ホテルのチェックインの手続きは、雑用係となったカールに任せた。そしたら、このざまである。
「だって、俺一人だけ違う部屋って寂しいじゃないか! 別に変な事はしないよ!」
「それでも女性には、色々と見られたくない状況もあるんだけど?」
「見られたくない状況って、どんな時なんだ?」
「あんた、そういう事をストレートに聞くかな…」
カールの村では当たり前なのか、それともこの男が単純にデリカシーがないだけなのか。
頭を悩ませていると、リーティアがフォローに入る。
「スノー様、都合の悪い時は私のディメンション・ボックスに、この男を放り込みますのでご安心を」
「おい! 俺はお荷物かよ!」
「お荷物でしょ、実際に」
とりあえずリーティアの提案を受け入れ、カールも同じ部屋である事を了承した。
ホテルに到着してラフな格好になろうと思い、早速ディメンション・ボックスにカールを放り込んでもらう。
「うああ、何しやが…」
やかましいカールは、リーティアのディメンション・ボックスに吸い込まれた。
「ふう…楽になったわね」
マントを取り腰の魔剣を下ろして、被っている仮面を取った。そして防具も取り、荷物から普段の服を取り出して旅の格好から着替える。
チビ雪も普段の格好に戻るが、そこで質問をしてきた。
「スノーお姉さま、カールには身分を明かすんですか? 秘密にしておくのなら仮面は取れないと思うんですけど」
「あ……」
何も考えてなかった。でもそうなると、私はずっと仮面を取れない事になる。
「でも、あの男。口が軽そうだし秘密にしておいた方がいい様な気も…」
「いいのではないですか? もしカールが秘密をバラしそうになったら、悪魔の契約に従って私が彼をバラすのでご安心ください」
「リーティア、たまに凄く怖いこと言うよね。でも行動を共にするのなら秘密を隠し通すのも無理があるし、ここはそうしましょうか」
不安は残るけど、カールに私の正体を明かす事にした。
ディメンション・ボックスからカールを取り出して、素顔を見せて正体を明かす。だけど最初は信じようとしなかった。カールのいた村では、誰が魔王かなんて顔も知らないらしい。魔王グリテアの事すら顔は知らないという。
「信じる信じないは勝手だけど、私が魔王である事実は本当よ。この魔剣だって私にしか使えない物なの」
「そうだったか、まさかガーデン・マノスの魔王様だったなんてな。何で正体を隠して魔界を旅に?」
「まあ色々と理由があってね。この事は内密にお願いするわ」
「勿論だよ! 俺は口が堅い男だ! ていうか素顔可愛いね! ずっと仮面なんて外しててくれよ!」
大きな溜め息が出る。話しを聞いていたのか、こいつは。
ていうか魔王の顔を知らなかったのなら、正体を言う必要なかったな。
リーティアが記憶を消そうか耳打ちしてきたけど、流石に頭の中を弄り回すのは気が引けるので止めておいた。
「それよりスノーお姉さま、私お腹空きました」
チビ雪がベッドに座りながら、少しひもじそうにこちらを見てくる。
「そうね、ここのホテルの一階には併設された飲み屋があるし、今日はそこで食事にしましょうか」
「はい、私も久しぶりに呑みたいです!」
「よっしゃ酒だー!」
リーティアが珍しくテンションが上がってる様子が見て取れる、もしかして酒好きなのかな。そしてカールは相変わらずうるさい。
再び仮面を付けて、四人で一階のフロアに下りてお店に入った。
「私とこの子は水を」
「私はビア三杯お願いします」
「俺もとりあえずビアで!」
各々が飲み物を注文して、後は好きな料理をメニューから選ぶ。なんとここのお店、宿泊客なら飲食料は無料だそうだ。
ホント至れり尽くせりと言った感じ。
そして店員が運んできたドリンクを受け取り乾杯をした。
「それでは魔王小雪様にかんぱ…ぐはぁ!!」
カールが立ち上がって、いきなり盛大に名前を叫んだので瞬時に腹パンした。周囲の客たちが、何だ何だと怪奇そうに見てる。
「す、すまん。つい…」
「なら気を取り直して。みんなお疲れ様。乾杯!」
「「「かんぱーい!!!」」」
四人で乾杯をしてから、次々に運ばれてくる料理を堪能する。
「あの、ビアおかわり。また三杯で」
「ちょ!? もう三杯呑み終わったの!?」
「さっき乾杯したばかりだぜ!?」
「実は私、お酒には目がなくて。これでも昔より、かなり弱くなったんですよ」
かなり弱い奴が、ビア三杯を一気に飲み干す訳ないじゃん。私達が驚いているのを横目に、おかわりのビア三杯が運ばれてきた。
「昔は最初に五杯はいけたのに、本当に弱くなりました」
これはもう話しが嚙み合わないやつだ。もう好きに吞ませておこう。
でもこういうのも悪くないかもね。久しぶりに安心しながら、みんなとワイワイしながら食事を楽しんだ。
最後までお読みいただきありがとうございます!
少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします




