41話 激突
「斬れないって確証がなかったのに、何て危険な事をするんですか!」
さっきヌフールにスノーフェアリーで斬られそうになった時に、避けなかった事が相当焦ったらしく目に少し涙を浮かべる。
「確かに根拠はなかったけど、助かったからいいじゃない!」
「良くないです!」
チビ雪が人質に取られたまま、私に向かって怒ってくる。
なんだろな、私としては謎の自信があったんだよな。ヌフールにスノーフェアリーが渡った瞬間、いつも感じる威圧感のような物が消えた気がしたから。
「貴様ら、俺達を無視して呑気に会話とは良い度胸してるな」
盗賊のリーダー、ヌフールが自分の武器である巨大ハンマーを持つ。
「遊びは終わりだ。こいつで貴様の頭をかち割ってやる」
「今まで遊んでたの? 随分余裕ね」
「ほざけ! こっちには人質がいるんだ。貴様に勝ち目はない」
不愉快だけど奴の言う通りだ。
本当はさっきやろうと思えばスキアーで奴を仕留める事はできた。だけどリーダーの男が倒された瞬間に、チビ雪が殺される可能性を考えて魔剣を奪い返すだけに留めた。
そうこうしている内にヌフールが巨大なハンマーを持って、こっちに走ってきた。
「うおりゃああぁあ!!!」
ハンマーを思いっきり振りかぶって攻撃してくる、だけど、そんな大振りな攻撃なんて簡単に回避できる。
瞬時に横に回避して、激突したハンマーの衝撃によって地面がえぐれた。
「スキアー! こいつを抑えて!」
影からスキアーが再び鞭のように伸びる。
だが、ヌフールは不敵に笑みを浮かべてハンマーを軽々しく横払いした。
「な!? ぐぅ!」
「スノーお姉さま!?」
いきなりの攻撃を受けてスキアーが飛散して、巨大ハンマーが私を襲った。
あんな巨大なハンマーを振り下ろした直後に、しかも片手で素早く次の攻撃をしてくるなんて。
スキアーは攻撃こそできるが、敵の攻撃を防ぐ事は出来ない。スノーフェアリーでガードして何とか凌いだけど、それでも体が宙に浮いて数メートル後ろに飛ばされた。
「俺に何度も同じ攻撃が通用するか! そいつは物理攻撃が効かないのだろうが、それでも煙のように一瞬飛散する。つまり足元のアンデットモンスターが攻撃してこようが、お構いなくテメェに攻撃を加えればいいって訳だ!」
「あんた本当に鬱陶しいわね!」
それを見た他の三人の盗賊もヌフールに加勢し、四対一の状況になる。しかも人質を取られて身動きが取り辛い。
「スノーお姉さま! 私の事は気にしないで、そいつらを蹴散らして!」
そういう訳にはいかないでしょ。姉妹同然のように育って来たのに、見捨てるなんて出来る訳ない。
「スノー様、私が奴ら四人を抑えます。その隙にチビ雪様を」
「統魔の指輪を持つ私から離れると、あなたは弱体化するのよ」
統魔の指輪で使役したモンスターは、主人から一定範囲を超えると弱体化するという欠点がある。常に私の影に擬態させているのは護衛の為だけど、それも理由としてあった。
「何をごちゃごちゃ言ってやがる! 野郎共やっちまえ!」
ヌフールと命令を受けた部下三人が一斉に襲い掛かってきた。
「例え弱体化しても私は物理攻撃では死にません。アンデットなのに死ぬというのも変ですが」
「分かったわ。最低でも一分は抑えて!」
スキアーとの打ち合わせを終え私はチビ雪を助けに走る。そして影から離れたスキアーは、大きな蛇のような姿になりヌフール達に巻き付いた。
「くそ! 目障りなモンスターだ!」
ヌフールが巻き付いたスキアーを振り解こうとする。
「絶対にスノー様の元へは行かせん!」
スキアーが頑張って四人を抑えてくれてるが、他の雑魚達はともかくヌフールは何時までも抑えておくのは難しそうだ。
「チキショウ! 止まりやがれ! このガキがどうなってもいいのか!」
チビ雪を人質に取る男が喚いて来るが、構わず突撃した。
「スノーお姉さま!」
「チビ雪ちゃん! 今助ける!」
ここで私と離れた事で弱体化してしまったスキアーが、ヌフールを抑えきれなくなり離してしまう。
「邪魔なモンスターが!」
ヌフールの攻撃を受け、体を構成する魔力が飛散し他の雑魚三人も離してしまった。
「スノー様、申し訳ありません」
だけど十分な時間稼ぎになった。あと少しで魔剣の届く範囲に入る。
「くそぉぉ! このガキだけでも、ぶっ殺してやる!」
私の接近に次第に焦り出した盗賊がチビ雪の杖を放り投げ、代わりにナイフを持ってチビ雪に突き刺そうとした。
ダメだ、このままじゃ間に合わない。咄嗟にスノーフェアリーを盗賊に向かって投げた。
「な!? ぐはあぁあ!!」
「きゃああ!!」
投げたスノーフェアリーは盗賊の左肩付近に命中し、突き刺さったまま後ろに倒れ込んだ。
チビ雪もそのまま地面に落ちる。
「チビ雪ちゃん! 大丈夫?」
「私に当たったら、どうするつもりだったんですか!」
よし、大丈夫そうだ。後はスノーフェアリーを、あいつから取って…
「今度は、この魔剣が人質だ!」
「ちょっ!? は? あんた何言ってんの!?」
肩にスノーフェアリーを突き刺さった盗賊は立ち上がると、なんと剣をそのまま人質? にして私から離れていく。
ダメだ、無手の状態じゃ私はあいつらに勝てない。ヌフール達は、すぐそこまで迫っていた。
「終わりだ! 仮面の女ー!」
だけど四人が一斉に襲い掛かってきた時だった。急いで杖を拾ったチビ雪が呪文を詠唱し終え、
「終わるのはアンタ達だ! 『チェーン・ライトニング』!」
全体攻撃可能な雷系呪文を放った。
「「「「うがああああ!!」」」」
ヌフール達はチェーン・ライトニングを受けて、バタバタと地面に倒れた。しかしヌフールはフラフラになりながらも、まだ立ち上がってくる。
「おのれ…小娘共が…」
両手でハンマーを持って近付いて来るが、私は地面に落ちているナイフを拾い投げた。
電撃を受けて体が思うように動かないヌフールは、そのナイフを避けれずに腕でガードする。
「ぐうあああ! おのれー! 小娘がー!」
腕にナイフが刺さり一瞬怯んだ所に、トドメの一撃と言わんばかりにチビ雪が炎系呪文を放った。
「これで最後だ! 『ファイアー・ブレイズ』!」
杖から放たれた巨大な炎が大蛇のようにヌフールを襲う。
「ぐおおおお!!!」
あっという間に火だるまになり、その姿を視認できなくなる程の火柱が上がる。
これで終わった、そう思った時だった。
「舐めるなー! 『アース・ウォール』!」
炎の中からヌフールの声が聞こえ、地面から土の柱が出来上がり火柱を包み込んだ。
しばらくして土で出来た柱にヒビが入り始め、中からハンマーで自ら作った土の壁を壊してヌフールが出てくる。
「はあ…はあ…やってくれたな。今のは危なかったぞ」
奴は土の柱で炎を囲んで、空気を断って消火したのか。まさか地系呪文を使えたなんて。
「く! ならばもう一度!」
「何度も喰らってたまるか!」
チビ雪が追撃をしようとした時、ヌフールがハンマーで地面を殴り、無数の石や土の塊が私達を襲った。それによりチビ雪は呪文の詠唱ができず、その隙にヌフールが襲ってくる。
「俺をここまで追い詰めた事を褒めてやるぞ! 小娘共!」
ダメだ、この攻撃は防ぎようがない。せめてチビ雪だけでも!
「スノーお姉さま、何を!?」
自分の体を盾にしようとチビ雪に覆いかぶさった。
だが、
「ぐ、また貴様かぁ!」
焦るヌフールの声が聞こえ、後ろを振り返ると体を再構成したスキアーがヌフールに巻き付いていた。
「スノー様! 今の内です!」
「よくやったわ! スキアー!」
スノーフェアリーの鞘を腰から取り、ジャンプして思いっきりヌフールの頭を鞘で殴りつける。
「ぐふ…おのれ!」
頭から血を流すがまだ倒れない。しぶとい男だ! だけど足元は、かなりフラフラだ。もう一発くらわせば。
「二人とも下がってください! 『サンダー・ボルト』!」
「え!? ちょっと待って!」
私とスキアーが慌てて離れる。チビ雪の雷系呪文により、頭上から雷が落ちヌフールに直撃した。
「ぐおおおおおお!!」
この呪文を受け、ヌフールは白目を剥いて完全に気を失う。ようやく勝利した瞬間だった。
だけど、あと一歩遅かったら一緒に雷に打たれてたところだった。
「チビ雪ちゃん! 私に当たったらどうするの!」
「さっきのお返しです!」
ホントいい性格してるわ、この子。
「スノー様、魔力を使い過ぎました。一旦指輪の中に戻ります」
「ええ、お疲れ様。スキアー」
スキアーを統魔の指輪の中へ戻し、早くスノーフェアリーを人質に取ったバカな盗賊を追わないと。
「私の魔剣、絶対に取り返す」
村の中心に逃げた最後の盗賊は、まだ村の中で隠れているはずだ。面倒だけど村の中を探しに出る。
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