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39話 チビ雪の後悔

「村には、あなた達の仲間はどれだけいるのかしら?」


一人を先頭に歩かせ、他の捕らえた漆黒のつるぎのメンバー三人から、村に向かう道中を歩きながら尋問する。もちろん答えなければ、スキアーが強力に締め上げる。


「ぐああ……む、村にいるのは……十人だ。そこに…俺達のボス、ヌフール様がいる。おまえなんかが敵う相手じゃない…へへへ、精々俺達にたて突いたこと…今の内に後悔しな」


「そのヌフールってのは、そんなに強いの?」


「片手で、巨大なハンマーを振り回す程の怪力の持ち主だ。貴様なんぞ、一撃で粉々だろうぜ」


大方の情報を聞き出すと、捕らえた三人は邪魔だから土に埋めておく事にした。首だけ出して。


一旦止まる様に先頭を歩かせている盗賊に命令し、その場でスキアーが器用にシャベルのように変えた腕で、三人分の穴を掘り盗賊の体を埋めた。


「て、てめえ! 俺達をこんな目に遭わせて、タダで済むと思ってんの…いてぇ!」


吠えてきた盗賊の頭を容赦なく蹴る。


「殺さないだけ有難く思いなさい。覚えていたら戻ってきてあげるわ。覚えていたらね、ウフフ」


私は今悪い顔をしているのが鏡を見なくても分かる。


三人の盗賊の顔が、かなり引きつっていた。すると道案内をさせている盗賊が思わぬことを言って来る。


「なあ、俺もここに埋めてくれ! 帰ったらヌフール様に殺されちまう!」


「あんた何言ってんの? 自分で埋まりたいとか」


だが埋まった三人は、この男の言った事を聞いた途端に埋められた事に安堵した表情を浮かべ始める。


「し、し、し…仕方ねぇ! 悔しいが俺達の負けだ! ここで埋められといてやるぜ!」


「ああ! 悔しいが仕方ねぇな!」


「全くだ! 悔しいがな!」


「そんなに悔しいなら出して一緒に連れて行くわよ?」


「「「あなた様に負けたのなら光栄の極みであります!」」」


何故そこでハモるのか。目の前の男も泣いて懇願してくる。


他人の命は散々奪っておいて、都合が悪くなると命乞いとか。


「あなたは道案内。しないのならこの場で殺すわ。村の前まで来たら埋めてあげる」


「わ、わかった。それで頼む」


スキアーに首輪のように繋がれている盗賊を再び先頭に立たせ、村までの道案内をさせる。


そして村に向かって再び歩き出そうとした時だった。後ろから大声が上がった。


「な、何しようとしてんだ!」


「お、おい! あんたの子分が俺達を殺そうとしてやがる!」


後ろを振り返ると、なんとチビ雪が呪文の詠唱を唱えていて、埋めた三人を殺そうとしていた。


その目は明らかに今までのチビ雪とは思えない程の怒りと殺気に満ちている。


「チビ雪ちゃん! 止めなさい!」


さっきから、ずっと様子がおかしいと思っていたけど一体どうしたというのか。普段は私以上にしっかりしているのに。


「こ、こいつらは…自分達より弱い者を虐げ、さらには子供まで奴隷として売り飛ばしているんですよ。全員生きている価値などない者達です」


「スノー様、申し訳ありません。実は最初に捕らえた四人から、こ奴らのやっている事を聞き出していたのです」


なるほど、チビ雪がさっきから様子がおかしかったのは、そういう事だったのか。


チビ雪は元は奴隷だったから、漆黒の剣のやっている事が許せないんだろうな。


私も聞かない様にしてたから詳しくは知らないけど、たぶん奴隷時代は相当な苦労や辛い事があったんだと思う。


だけど、私はチビ雪を止めないといけない。


「何で止めるんですか! こいつらは極悪人です! 今すぐに裁きの鉄槌を与えるべきです!」


「チビ雪ちゃん、裁きの鉄槌なら他の者に任せればいい。あなたのやる事じゃないわ」


「もういいです! スノーお姉さまがやらないのなら、私が独断でやります!」


「う、うあああ!! 助けてくれ!!」


チビ雪の持つ杖から巨大な炎が現れ、地面に埋まっている三人の頭の上より少し前で燃えている。


埋められた三人の盗賊は、助けて欲しいと言わんばかりに私の方を恐怖で淀んだ目を向けてくる。


「これは私の復讐の炎だ。お前達がやってきた事で、どれだけの者が苦しんだか思い知れ」


その炎が今にも放たれようとした時、私は間に入り炎の目の前に立った。メッチャクチャ熱いのを我慢して。


「な!? スノーお姉さま何してるんですか!?」


「チビ雪ちゃんに、こいつらを殺させない」


「何でですか!? こいつらは生きる価値もない奴らですよ!? そこをどいてください!」


「どかないわ。やるなら私ごとやりなさい」


ワナワナと震え始めるチビ雪、悔しさなのか怒りなのか。チビ雪の目から大粒の涙が溢れ出てきた。


「な、何でですか…こいつらは……グスッ……ヒクッ……うっうわああん!!」


チビ雪はその場で泣き崩れ、巨大な炎は姿を消した。私はゆっくりと近づき、中腰になってチビ雪を抱きしめた。


「いいのよ。辛かったね。大丈夫、どの道こいつらは死ぬより辛い拷問が待っている。チビ雪ちゃんが手を汚す価値もないわ」


「でも私は、もう一人手にかけて……命を奪ってしまいました……」


漆黒の剣がやっている悪事を聞き、それで奴隷だった過去を思い出して復讐の炎が心の中で燻ぶり出し、それが怒りとなってチビ雪を突き動かした。


だけど目の前で自分の放った呪文で死人が出た事で、チビ雪の中で消化しきれない程の衝撃があったんだと思う。


言いようのない怒りと後悔、それが同時に来たのかもしれない。どうしようもなく、どうしたらいいかも分からず、ただただ怒りに身を任せてしまおうとしてしまったのか。たぶん、その方が楽だから。


「チビ雪ちゃん、あれは事故…と言っても納得はできないよね。でも本当の戦いでは綺麗事は言ってられないのも現実なの。私達はあまりに未熟、だから強くならないといけないの」


正直言って、私もどう言ったらいいか分からない。何を言えば正解かも。ただ少なくとも言えるのは、さっきチビ雪がやろうとしていた事を止めなければ、取り返しのつかない事になっていた事だけは分かる。


私の言葉を聞いても、チビ雪は押し黙ったまま私の体に顔をうずめている。


「スノー様、そろそろ行きませんと」


「ええ、分かってるわ、スキアー。チビ雪ちゃん、あなたはここでリーティアの所へ帰りなさい。ここからは私とスキアーでやるわ」


するとチビ雪がようやく顔を上げて、重たい口を開いた。


「大丈夫です。私も行きます。それにスノーお姉さまだけじゃ心配ですから」


むしろこっちが心配なんだけどな。でも今更一人にさせるのも危険かと思い、このまま一緒に行く事にした。


だが…マントにはチビ雪の鼻水がべっとりと付いている事に気付き、さすがにテンションが下がる。


我慢できずに、埋まっている三人の盗賊に八つ当たりをした。


「さっき覚えていたら戻ってくると言ったけど、必ず戻って来ると訂正するわ」


「ほ、本当か!?」


「ええ、そして魔王グリテアの下へ送ってあげる。この意味あなた達なら分かるわよね? ウフフ」


「「「…………」」」


魔王グリテアの拷問が死よりも辛いというのは有名な話し。三人の盗賊は、再び地獄のどん底に突き落とされた表情を見せ、それを横目に私達は村へと急いだのだった。



最後までお読みいただきありがとうございます!



少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。



よろしくお願いします。


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