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33話 リーティアの秘密

「どうぞ、遠慮なく上がってください」


最初にヴィントナーに来た時以来のリーティア商会。二回目は客じゃなくて、まさか泊まりに来る事になるなんて思いもしなかった。


居住スペースになっている、お店の二階へと案内された。


「そういえば、あの魔動車タクシーってまさか私物なの?」


「いいえ、あれはちょっと拝借したのです」


「拝借?」


「ええ、しばらく貸して欲しいと言ったらドライバーの方は喜んで貸してくれましたよ」


それ以上聞かなかったけどおそらく…いや絶対何かしたな。だが面倒事は御免だ。ここはハッキリと言っておく。


「リーティアさん、私と一緒に来るというのなら…」


「分かってますよ。あの魔動車タクシーはちゃんと返しておきます。迷惑は掛けません」


食い気味にリーティアが答えた。本当に大丈夫なのかと不安になるが。


「スノーお姉さまが一番のトラブルメーカーですし、何をそんなに不安になってるんですか」


「ちょっとチビ雪ちゃん! それどういう意味!」


チビ雪の辛辣なツッコみ、勝手に危険なクエストを受けた事をまだ根に持っているのか。でもチビ雪のツッコみも久しぶりで、このやり取りもちょっとだけ嬉しかったのが本音。


リーティアの部屋へと案内されると思ったよりも普通…の訳もなく、何やらポスターやらグッズやらが大量に置かれていた。


「悪魔の部屋だから変な魔道具が置いてあったり動物の骨が合ったりと、もっとおどろおどろしいかと思っていたけど。この部屋は何ていうか、まさかアニメオタク?」


リーティアにそう聞くと、顔を赤らめて恥ずかしそうに少し頷いた。実はリーティアは以前に日本人から見せられたアニメに魅了され、それ以来アニメにドハマりしているという。


(他人を魅了するリーティアを魅了する日本のアニメ…私も好きだから気持ちは分からんでもないけど)


それにしても凄いグッズの数々だ。日本のアニメは、日本人の多いガーデン・マノスでは人気のカルチャーになりつつある。それらに似せたアニメグッズも大量に作られた。そもそも父上がアニメ大好きだったから、魔界でもアニメが作れないかと部下に命じてたらしいけど。


「私がヴィントナーでお店を開いたのは、ガーデン・マノスからアニメグッズの取り寄せがしやすいからです」


「まさかアニメの為に、このお店をやってたの!?」


「はい、お店の売り上げのほとんどはグッズに消えました。元々はアニメ専門のお店だったんですけど、ヴィントナーではまだそこまで認知されてないので嫌々衣装店に変えました」


ガチだ、この悪魔。閑古鳥が鳴いてたのは大型デパートが出来たせいもあったんだろうけど、そもそも店主自身にも問題あったんだな。


「お茶入れてきますね。お二人は寛いでてください」


チビ雪が座ったけど、私はリーティアの部屋を物色する。


「スノーお姉さま! 勝手に触ったらダメですよ!」


手に取ったフィギアは、私が子供の頃に憧れた美少女戦士のフィギュアだった。今の私は美少女戦士には程遠い事をやってるなと現実を突き付けられる。


だけど一つ不思議に思った。確かにガーデン・マノスではアニメグッズが作られるようにはなったけど、このアニメのフィギアなんてあったっけなと。


そう思いながらフィギュアを見ていたら、そこにお茶を用意したリーティアが部屋へと入ってきた。


「スノー様、もしかしてその子が好きなんですか?」


「え? いや、そういう訳でも! 物珍しいから見てただけよ!」


「良かったらあげますよ。私の自作ですし」


「じ、自作!?」


「ええ、アニメグッズもまだまだ種類が少ないので。それならと私は自分で作る様になったんです。この部屋にあるグッズの半分以上が私の自作です」


マジか、ここまで本気で没頭できるって素直に凄いと思ってしまった。確かに変な悪魔だけど、意外な一面を垣間見れた。


「それなら有難く。ありがとう」


「いえ、どういたしまして」


テーブルを三人で囲むように座り、リーティアが淹れてくれたお茶を頂く。


「明日は早朝に出発しようと思ってるから、今日は早めに休みましょう」


「それなら私が夕食を作って来ます」


そう言ってリーティアがまた部屋から出て行った。それまでお茶を啜りながら、チビ雪とゆっくりしようかと思っていたら。


「出来ました。早速食べましょう」


速攻でリーティアが戻ってきた。手には大きな鍋を持っている。


「早過ぎでしょ!? 何作って来たの?」


「メデューサの髪の毛で作った鍋です。美味しいですよ」


メデューサの髪の毛って、つまり頭の蛇って事? 何て物を食べさせようとしてるのかと思ったが、意外にもチビ雪は美味しそうに見ている。


「知り合いにメデューサの子がいて、たまに新鮮な頭の蛇を分けてもらうんですよ」


「新鮮な頭の蛇って言葉がパワーワード過ぎて付いていけない…」


最初は断ろうかと思ったけど、折角用意してくれたのに悪いしな。リーティアが鍋を取り分けた皿を受け取り、覚悟を決めて恐る恐る口へと運んだ。


「あれ? 美味しい」


「見た目はあれですが味は絶品なんですよ。栄養素も豊富で明日のための栄養補給にも最適です」


「あの、私おかわりいいですか?」


「ええ、チビ雪さん。遠慮しないでどんどん食べてください」


チビ雪が意外にもゲテモノ大丈夫だったのか。という事はホワイトガーデンで出された料理の反応も、もしかして私の方がおかしいと思われたのかな。そんな不安に駆られながら三人でメデューサの髪の毛鍋を平らげ、明日に備えて早めの就寝となった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。


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