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31話 出発の準備

「チビ雪ちゃん! 久しぶりー! 会いたかった―!」


「うわー!」


一週間ぶりのチビ雪との再会、感情が抑えきれず思わず抱きついてしまった。そして悲鳴をあげるチビ雪にお構いなく、髪型がクシャクシャになるぐらいに頭を思いっきり撫で回した。


「何するんですかー!? 小雪様ー! 止めてくださいー!」


「おっと、ごめんごめん!」


チビ雪はクシャクシャにされた髪型を直しながら、こっちをジッと見てきた。


「チビ雪ちゃん、どうしたの?」


「いえ、小雪様が前よりも大きくなられたような気がして」


「え!? 私太ったように見える!?」


思わず戦慄が走った。

食事には気を使っていたつもりだったけど、ここの宿屋のミントさんは残すと怖いから全部平らげていた。いつも量が多くてキツかったんだけど、素直に言うべきだったかな。


「あ、そういう意味じゃないです。何というか、雰囲気が変わったような」


そういう事か、驚かさないでよ。ホッと胸をなでおろしたのも束の間、今度はミントさんが食堂に入ってきた。


「スノー、邪魔して悪いんだけどさ。さっきからその子『小雪様』って呼んでるけど、あんたまさか」


「え? あ、あー! この子ったら私の事をからかってそう呼ぶんですよー! ホント人前では紛らわしいから止めろってあれ程言ってるのにー!」


「そ、そうなのかい!?」


その場を見たチビ雪が空気を察して、咄嗟に私に合わせてくれた。


「そうなんですー! ごめんなさい! えっと……あ、スノー様!」


「スノー様?」


「ス、スノーお姉さまでしょ! ね? チビ雪ちゃん!」


「そ、そうです! お姉さまです!」


これ以上ここに居ると墓穴を掘る。一旦部屋に戻る事にした。


「ミントさん! 私たちは部屋に行きますね!」


「ああ、分かったよ」


つくづく私は嘘をつくのが下手なようだ。今のでバレたかもしれないと不安になりながら、チビ雪と二人で部屋へと戻った。


部屋へ戻ると被っていた仮面を取り、部屋に一つしかない椅子へと座る。チビ雪にはベッドに腰掛けるように促した。


「さっきは申し訳ありません。魔王という身分を隠しての旅でしたね」


「いいのよ。でも今後は私の事はスノーと呼んで。普段から言ってないと慣れないと思うから」


「分かりました、こゆ…スノー様」


「様付けもダメ! 呼び捨てでいいから!」


「呼び捨ては言い辛いので、ならスノーお姉さまと言います」


チビ雪は私の妹という事にしておけば、とりあえずは大丈夫でしょう。偽名も考えたが私より露出がないので、魔界でも知っている者は少ないはず。久しぶりの再会を喜んだのも束の間、魔王という身分を隠すのも大変だ。


だが、のんびりもしていられない。


「チビ雪ちゃん、ヴィントナーに着いて早速で悪いんだけど、明日ヴィントナーを発つわ」


「随分早いですね」


「ええ、色々あってね」


この一言がいけなかった、当然チビ雪が何があったのか尋ねてきた。


「いや、大したことじゃないんだけど」


思わず目を逸らして答えてしまう。


「スノーお姉さま、私の目を見て話してくれませんか?」


観念した私は、チビ雪に首狩り騎士事件の事を洗いざらい話す事にした。もちろんチビ雪は大激怒だ。


「何を考えているんですか! そんな危険なクエストを勝手に受けてもし命を落としたら! 私が合流するまではヴィントナーで観光でもしている予定でしたよね!」


「だって暇…今後の事を考えると、ある程度仕事が出来るようにしておきたいじゃない」


「それは私が合流してからでも出来る事でしょう!」


「チビ雪ちゃん、もっと声を抑えて…」


「これが抑えてなどいられますか!」


今まで見た事ないぐらいの迫力でチビ雪が怒鳴り散らす。


しかも壁の薄いボロ宿、一階からバタバタと上がってくる音が聞こえ、部屋のドアを大きくノックする音が響いた。


「さっきから何騒いているんだい! 他の客に迷惑だよ!」


「ごめんなさい! 気を付けます!」


部屋の前まで注意しに来たミントさんに謝る。チビ雪はプイっと顔を逸らし、あからさまに怒ってる。今日は厄日なのか、怒られてばっかりだ。


「悪かったわよ。もう今後は勝手な事はしないと約束するから。機嫌直してよ」


チビ雪の御機嫌取りを必死に行い、何とか場を収める。チビ雪も何とか機嫌を直して、今後の予定を計画する事にする。


「ヴィントナーを出たら、ここからさらに東へ行ってみようと思ってるんだけど」


「ここから東は、小さな集落が街道沿いにいくつかあるだけで、大きな街まではかなり掛かりますね」


「魔道列車は使えないの?」


「使えるには使えますけど、それだとすぐにお金なくなりますよ」


中央大陸は、東西南北を横断するように大陸横断鉄道が整備されている。ヴィントナーからも、いくつかの路線があるけど旅感がなくなるのと予算の節約のため、自分達の足で歩く事になった。

という訳で、旅の支度の為に必要な物を揃える為に二人で買い物に出る事にした。少なくとも数日分の食料は確保しないといけない。訪れたのは大型デパートのあるビルだ。ここで旅に必要な道具や食料を調達する。


「スノーお姉さま、先に寝泊りする為のギアを揃えましょう」


「やっぱり…野宿もしないといけない?」


「必ず宿がある街に泊まれるか分からないんですよ。必要となれば、その辺の虫も食料にする覚悟が必要です」


「良い旅だったわ! さあガーデン・マノスへ帰りましょう!」


「極端な事を言えばです! しっかり準備していけば大丈夫ですから! 私だって虫なんて食べたくないですよ!」


とにかく最低限寝泊りに必要なギアだけを買う事にした。しかし、それでも結構な荷物になる。私とチビ雪の二人だけでは、それだけの装備を持って移動するのは辛いようにも思うけど。


「便利呪文、異次元箱ディメンション・ボックスを使えれば、多くの荷物を運べるんですけどね」


異次元箱ディメンション・ボックスは、異次元にある空間の中に道具などを保存しておける呪文だそうだ。食料もその中に入れておけば腐る事もないそう。


「チビ雪ちゃんは使えないの?」


「はい! 残念ながら!」


自信満々に答えるんじゃないわよ。これに、さらに食料を持って歩くのって、かなりの重労働になるんだけど。


「ま、魔王のする事じゃないわ…」


野宿のためのギアを買い揃えた後は、食料品売り場へと足を運んだ。すでにガーデン・マノスから持って来ていたお金が、半分以下にまで減っている。やっぱりクエスト報酬は素直に受け取っておくべきだったかと、少し後悔していたのは内緒の話し。


「食料を買い揃えたら、もうお金は全然残らないわね」


「私も少しは持ってきましたけど、このお金は万が一の時の為に残しておきましょう」


チビ雪と予算の相談をしながら非常食などの食料をカゴに入れていると、後ろから突然声を掛けられた。


「魔王小雪様、こんな所で会うなんて偶然ですね」


びっくりして後ろを振り返ると、そこにいたのは服や防具を揃えたリーティア商会の店主・リーティアだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!


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