表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

25/132

25話 魔剣スノーフェアリー

兜のなくなった首狩り騎士が、こちらに向かって間合いをじりじりと詰めてくる。ミスリルソードが使えなくなり私は無手の状態だ。魔剣スノーフェアリーは出来れば使いたくない。


ここは一か八か危険な賭けだけど首狩り騎士の初手を躱し、その隙を突いてアデムからタリスマンを奪うしかない。


「どうしたんだい、スノーさん? 早く魔剣を抜きなよ。じゃないと殺されちゃうよ」


「あんた如きに魔剣を使うまでもないわ」


「強がり言っちゃって! さっきからキミが一切呪文を使って来ないのは、おそらく相手に決定打を与える程の呪文を使えないからだろ? だったら剣で戦うしかないと思うんだけど」


本当に嫌な奴、最初はチャラい単なるバカかと思っていたけど、そこまで私を推測してたとはね。

あいつの言う通りではあるけど、ちょっと違うのは呪文を使わないのではなく、使いたくても使えないんだけどね。


この場にチビ雪が居てくれたら、どんなに楽だったか。最後の望みに賭けるため、ミスリルソードを鞘ごと外して右手に持った。


「ミスリルソード、最後に一つだけ頑張って」


「壊れかけのミスリルソードを棍棒代わりにする気かい? まあいいや。やれ! 首狩り騎士!」


アデムの命令により、首狩り騎士が剣を振りかざして突進してきた。チャンスは一度きりだ、首狩り騎士が上から振りかざしてきた剣を瞬時に躱す。


首狩り騎士の攻撃が空を斬る中、攻撃を躱したのと同時に敵の右腕と肩を踏み台にして、首狩り騎士の後ろに飛んだ。

そして、そのまま奥にいるアデムのいる所に全力で走る。


「やっぱりそう来たか! 僕からタリスマンを奪う気だね! でも甘いよ『フレイムボール』!」


アデムが呪文を放って来たが、これも予想通り。あいつ程度の呪文なら、剣が無くても耐えられると判断していた。両手でフレイムボールをガードし、熱さに耐えてそのまま間合いを一気に詰める。


「何!? 僕の本気のフレイムボールを両手でガードだと!?」


これはアデムも流石に意外だったようだ。仮面の加護とリーティア商会で貰った防具が、アデムの呪文を打ち消した。


「覚悟しなさいよ! アデム!」


完全にアデムを捉え、鞘に納まったミスリルソードで殴り掛かった。だがアデムが慌てて剣を抜き、迫るミスリルソードを薙ぎ払う。


バキンッ!!


アデムの剣を受けて、ミスリルソードは鞘ごと折れてしまう。


一発逆転を狙った攻撃を躱された事で、一旦アデムから距離を置いた。


「……あと少しだったのに」


「ちょっと危なかったよ。でも僕が魔戦士だと忘れてなかったかい? 近接戦が本来の主戦場だからね!」


後方からは首狩り騎士も迫り、完全に挟まれた状態になってしまった。


「さあ大ピンチだね! 最後の警告だ。魔剣を渡して僕に従属を誓え。そしたらキミは助けてあげるよ」


またもやピンチに陥ってしまった事で、つくづく自分の実力の無さを痛感していた。魔王なんて肩書はあっても所詮こんなものだったのかと。

他の魔王ならこんな小悪党如きに、ここまで苦戦しないだろう。


そう考えると悔しさで涙が溢れ、仮面の下から頬をつたって零れた。


「スノーさん、まさか泣いているのか? これはこれは! 女を泣かしてしまうなんて僕は本当に罪な男だ!」


「……――黙れ」


いい加減、この男の耳障りな声を聞くのもウンザリしてきた。

もうどうにでもなれ。


首からネックレスのように下げていた、魔剣スノーフェアリーの魔石を外す。


「おいおいスノー、この俺にまだそんな舐めた口を利くんだね? いいさ、もう死ねよ」


アデムが命令し、首狩り騎士が後ろから襲いかかろうと動き始めた時に、魔剣スノーフェアリーの柄に右手を置いた。


「いいわよ、そんなに魔剣がご所望なら見せてあげるわ! ただし、どうなっても文句言わないでよ!」


魔剣に力を入れると鞘をがっちり掴んでいたツバが開き、暗闇の中でも一際ひときわきわ立つ妖麗な刀身が姿を現した。


真っ赤な月明りに照らされ、赤く光り輝く魔剣スノーフェアリーは、まるで生き血でも欲しがっているかのような美しさと不気味さを纏っている。


それを見たアデムが可笑しなまでのテンションになり、嬉しそうに見つめる。


「素晴らしい! 素晴らしいよ! キミのような未熟な女魔戦士に持たせておくのは実に勿体ない! この僕にこそ相応しい魔剣だ! 親父にだって渡すものか!」


眼をギラギラさせ口から汚く飛沫を飛ばしまくりながら、アデムは大声を張り上げ歓喜の鐘をつくように笑う。

そんなアデムを余所に、スノーフェアリーの鍔にある窪みに魔石をはめ込んだ。


「スノーフェアリーは、これで真の力を発揮する。果たして私に使い切れるのかしら……」


多少の不安を覚えながら、魔剣スノーフェアリーを両手でしっかりと握る。


そして真っ黒だった魔石は、次第に氷のような透明感のある青色へと変わっていった。


そこへ後ろから首狩り騎士が、私の首を落とそうと後ろから横薙ぎに剣を振りかぶる。


「これで魔剣は僕の物だ! アーハッハッハッハ!!!」


勝ち誇ったように高笑いするアデムだったが次の瞬間、パキン! という優雅とは言えない金属の嫌な音が廃墟に響いた。

私の首は胴体から離れることなく、それどころか全く傷一つない。金属音の正体は、首狩り騎士の持つ剣の切れ端が床に落ちた音だった。


「ば、バカな!? 何で首狩り騎士の剣の方が斬れるんだ!?」


魔石をはめ込んだ直後、後ろから斬りかかった首狩り騎士の斬撃を魔剣でガードしたのだ。それだけで斬りかかって来た側の剣の方が、蜘蛛の糸のように真っ二つに斬れてしまった。


しかも斬られた首狩り騎士の剣はスノーフェアリーの冷気によって、瞬く間に凍ってしまった。


「ふう……魔剣を見たいと言ったのは貴様だ。今更後悔するなよ?」



明らかに口調の変わったスノーを見て、アデムの表情から余裕が消えた。


真の姿を現した魔剣スノーフェアリーは、刀身から溢れんばかりの強い魔力と殺気が、冷気となって冷たく燃えるように輝く。

魔剣スノーフェアリーはさらに美しくそして不気味さを醸し出し、圧倒的な威圧感で場を支配し始めていた。




――――




一体何なんだ、この女は。魔剣を握ってから明らかに雰囲気が変わった。まるで別人だ。

それに、さっきまでは全く感じなかった魔力がスノーの全身から溢れている様に感じる。


「キ、キミは一体何者なんだ!?」


「……――貴様の首を斬る者だよ」


違う、やっぱりさっきまでのスノーじゃない。仮面で顔が隠れているが、見えなくても顔つきが変わっているのが分かるほどの強い殺気を向けてくる。

僕は震える足を抑えながら、タリスマンをかざし首狩り騎士に命じる。


「早くやってしまえ! そいつは危険だ!」


先端が無くなり半分となった剣で再び斬撃を加えようとする首狩り騎士にスノーは後ろを一切見ることなく、真上に飛び上がり宙返りをしながら上から首狩り騎士の右腕に斬撃を行う。

頑丈な鎧も魔剣の前には何の役にも立たず、まるで布でも切るかのように鮮やかに斬ってしまった。そして斬られた右腕も、斬られた剣と同じように瞬く間に凍ってしまう。


「た、盾だ! 盾を使え!」


焦ったアデムは、片腕となった首狩り騎士に命じるが、


「……――遅い」


首狩り騎士の左腕は盾ごとあっさりと切り裂かれ、両腕とも失い最早立っているだけのデクの坊と化してしまう。


「何者なんだ!? さっきまでと動きが全然違うじゃないか!?」


その首狩り騎士の両脚すらも容赦なくスノーは素早く斬り落としてしまい、胴体だけとなった甲冑は虚しく地面に叩きつけられた。

さらに首狩り騎士の胴体はスノーフェアリーの強力な冷気で凍ってしまい、中にいるモンスターも外に出れなくなってしまった。これではタリスマンは何の役にも立たない。


「く、くそおおぉぉぉ!! フレイムボール!!」


アデムは渾身の魔力を込めて、スノーに向かってフレイムボールを放つ。


しかしアデムの放ったフレイムボールは、スノーの数メートル手前で打ち消された。


「な、なんだと!?」


魔剣スノーフェアリーから発せられる強力な冷気が、スノーの周囲を燃えるように囲んでいる。

アデムのフレイムボールは、その冷気の壁によって簡単に消されてしまった。


「う、うわああああ!?」


アデムは恐怖のあまり腰から地面に落ち、大きく尻もちをついた。今にもちびりそうになりながら後退りしていく。

今度は逆にスノーの方がおびただしいほどの殺気を纏って、じりじりとアデムに迫って来るのだった。



――――



薄れゆく意識の中で、僅かに聞こえた耳をつんざく様な悲鳴。そして魔剣スノーフェアリーを持つ右手に感じる、生温くて纏わりつくような液体が付着した不快感。

ハッと気づいた時、目の前には左腕を斬られたアデムが泣き喚きながら許しを乞うていた。


斬られた腕の切り口は氷で覆われていて凍傷になり始め、落ちた腕の方は完全に凍らされている。

右手に感じた不快感は、アデムの返り血を浴びていたからだ。


「た、頼む! 僕が悪かったよ! 助けてくれ!」


さっきまでの威勢はどこに行ったのか、完全に戦意を喪失したアデムは剣もタリスマンも地面に落とし、斬られた腕を抑えながら痛みと冷たさによる苦痛に必死に耐えているようだ。

それだけではなくアデムの周囲も所々が凍っていて寒いのか怖いのか、それとも両方なのかブルブルと震えている。


だけど今はアデムの事などどうでもいい。自分に何があったのか、とにかくそれを知りたかった。

魔剣スノーフェアリーの魔石が青く光り出してからの記憶が一切なくなっていたからだ。


すぐにスノーフェアリーを鞘に納め、魔石を取り外して元のネックレスに戻した。

そしてアデムに問い詰める。


「助けてほしかったら、噓偽りなく私の質問に答えなさい。その上で、あなたを助けるか考えてあげるわ」


アデムは大きく頷き、鼻水を啜りながら私の質問に答え始める。

最後までお読みいただきありがとうございます!


少しでも楽しんで頂けたら、ブックマークや評価をして頂けると嬉しいです。


よろしくお願いします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ