24話 首狩り騎士の正体
「ぐあああ!! くそぉ! 放しやがれぇ!」
ジュパルの悲鳴が暗闇の廃墟にこだました。
上から不意を突いて攻撃した首狩り騎士の剣はジュパルの左肩に深くめり込み、ガーディアンの武器とも言える大盾を使う事は最早不可能な状態になった。
そして完全に息の根を止める為に、首狩り騎士がさらに力を込めて剣を押し込む。
ジュパルは左手が全く使えなくなった状態で右手だけで必死の抵抗をしているけど、いずれ殺されるのは時間の問題だ。
早くジュパルを助けに行きたいのは山々なんだけど。邪魔はさせまいと、首狩り騎士を操るアデムが炎系呪文で攻撃をしてくる。
「僕は魔戦士だけど呪文もそれなりにできるんだ! 特に炎系呪文を得意としていてね! 自慢じゃないけど本職の魔導士にも負けない自信があるよ!」
アデムが高笑いをしながら、炎系呪文を撃ってくる。本当に目障りな攻撃。大体、自称白い稲妻のくせに得意なのは炎とか意味わかんないし。
だけど魔導士にも負けないは言い過ぎだ。正直チビ雪の呪文だったら、いくら仮面の加護があってもミスリルソードでガードなんて不可能。
つまりアデムの呪文なんてその程度なのだ。呪文攻撃をミスリルソードでガードしたり回避したりしながらアデムを挑発した。
「は? こんな、へなちょこボールで魔導士にも勝てるですって?
笑わせるんじゃないわよ! 私の知る魔導士なら一撃で私を黒焦げにしているわ!どうせ剣じゃ私に勝てないから、そんなショボい炎系呪文でしか攻撃できないんでしょうね!」
挑発を受けて高笑いをしていたアデムの顔は、一気に血管が浮き上がる程に紅潮した。
「このアマァ!! 下手に出てりゃ付け上がりやがってぇ! 上等だ! 剣で決着つけてやるよ!」
よし、上手く挑発に乗ってくれた。そう思ったが、これは少し相手を見くびり過ぎた。
アデムの顔が、みるみるうちに元のポーカーフェイスに戻っていく。
「なんてね! 僕はその程度の挑発には動じないよ! 大方僕を挑発して首狩り騎士の動きを止めようとしたんだろ?」
「本当にヤな奴ね、あなたって」
「なあスノーさん。良かったら僕と取引しないかい? そしたら、そこのデカブツを助けてやってもいいよ!」
「スノー! そんな奴の言う事に耳を傾け…ぎゃああ!!」
ジュパルが叫ぶと、アデムが手に持ったアクセサリーをかざし首狩り騎士を操る。首狩り騎士の剣は今にもジュパルの左胸を貫きにそうになっていた。
「外野は黙っていろ。これは僕とスノーさんの大事な話しなんだ!」
「聞くだけ聞くわ。言ってみなさいよ」
「簡単な事さ。キミが持っている魔剣を僕に譲ってくれ! 親父がひどくご執心でね! あとキミが僕の物となれば言う事はないよ!」
やはり魔剣スノーフェアリーの事はローエンから聞いていたか。マントで隠れているけど左腰に一応帯刀はしていた。
今まで使ってないのは、決してもったいぶっての事じゃない。まだ私に使いこなせるか不安が大きいからだ。
あと私が、こんな奴の物になるとか死んでも御免だわ!
「聞くだけ聞いたわ。アンタを殺す」
「はあ、残念だよ。それがキミの答えか。なら二人まとめて死んでくれ! その後でキミから魔剣を奪えばいいだけの話しさ!」
次の瞬間、首狩り騎士の剣はジュパルの左胸を貫き、口から大量の血を吐いて体全体が痙攣した。
「ジュパルー!!!」
「アハハハハ! さあこれで最後の一人だよ、スノー!」
アデムが不敵に笑う。残念だけどジュパルは心臓を斬られ確実に助からない状態になった。だがここで、最後の力を振り絞ったジュパルが最期の言葉を口から吐き出す。
「ス、スノー…頼む…オレと、ダチの仇を取…って…く……れ……」
「うるさいゴミだな。首狩り騎士、さっさと首を斬れ」
アデムの命令に従い、首狩り騎士がジュパルの体から剣を抜いて首を斬ろうと横に薙ぎ払う。
「ジュパル、約束する。このアデムは存分に苦しめてから、あなたとダチのヘマクの下へ送ってあげるわ。そしてユリリムと一緒に三人で存分に痛めつけてやるといいわ」
「やっぱりスノーさんは面白い子だなー! 殺すには惜しい、僕の物になってよ!」
当然アデムのふざけた申し出を無視する。
だがジュパルの首を斬ろうとした首狩り騎士の剣は、途中でジュパルの首に引っ掛かり止まってしまう。首狩り騎士はジュパルの頭を片手で掴んで力で無理矢理首を切り離した。
その光景を見て、私は強い違和感を覚えた。
街道で襲われた時、首狩り騎士はヘマクの首を斬る時も少し手こずった。そして今回のジュパルも。
だけど私は覚えてる。ユリリムの首が一瞬で飛んだ事を。あれはかなりの衝撃だった。よくよく考えれば、ヘマクの右腕を切り落とした時も一瞬だった。
そこで共通するのは一瞬で斬り落とした時は、首狩り騎士は骨馬に乗っていた。
確かに首狩り騎士の力は強いが、それだけでサビ付いた剣があんなに切れ味がいいはずがない。力任せに振れば斬れるほど剣は簡単じゃない。あの切れ味は骨馬のスピードがあってのものだと推測した。
ジュパルの首を切り落とした首狩り騎士は、切り取ったジュパルの頭を放り投げて今度はこっちに向かって斬り込んできた。
だが今までと違い、その攻撃に全く動じる事はない。
「思った通り、よく見れば首狩り騎士の動きは大した事はないわ」
首狩り騎士の動きは決して速くない。それどころか、冷静になれば剣の腕も余裕で見切れるものだった。
敵の攻撃は力任せの大振りばかりで、実に単調な動きしかしてこない。
首を落とす為の横薙ぎの攻撃か、相手の動きを止める為の上からの大振りばかり。これなら剣で受けるまでもなく難なく避け切れる。
これならイケる、私にあっさりと躱された首狩り騎士の振りかぶった剣が地面にめり込んだ。その瞬間の隙を見逃さない。
「ハアッ!」
渾身の力を込め、首狩り騎士の首筋に向けミスリルソードを打ち込んだ。それまで数多の首を刈って来た首狩り騎士の兜が宙に舞う。
ピシィッ!
だけど、すでに限界ギリギリだったミスリルソードにも大きくヒビが入り使い物にならなくなる。
「ミスリルソード、よく頑張ってくれたわね」
お互い初めての実戦、今まで戦ってくれた剣を戦友のように労う。剣を自身の分身のように大事に扱うというのは父・マサオからの教えだった。
だが悠長にしてられない。ここでミスリルソードをすぐに鞘に納め、頭のない首狩り騎士から距離を取った。
「分かってるわよ。どうせ、これぐらいじゃ死なない事ぐらい。やっぱりアデムから緑の魔石を奪い取るしかなさそうね」
首狩り騎士の首を斬った時、兜に当たった衝撃こそあったものの斬った感触がなかった。つまり鎧の下は空っぽか、実態のない何かだと推察した。
「流石だね、首狩り騎士が首を斬られて死んだら笑い話にもならないだろ! こいつをどうにかしたかったら僕からタリスマンを奪うか壊すしかないよ!」
タリスマン、あの大きな魔石の事か。前に聞いた事あった気がするんだけど、確かチビ雪が教えてくれたんだったかな? 黒魔術で使う魔道具の一つだったと思う。私の記憶が確かなら、霊魂を操る魔道具じゃなかったっけ。
となれば首狩り騎士の正体は謂わば幽霊、つまりアンデットという事になるんだけど。
それを証明するかのように、首狩り騎士の鎧の中には実態となる体が存在してないようだ。
兜を失った首狩り騎士だが、そのまま何事もなかったかのように立ち上がる。そして兜が無くなった鎧の部分からは、黒い煙のような物が溢れ出ていた。
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