14話 統魔の指輪
連載再開になります。
タイトル、あらすじ変更しました。
よろしくお願いします。
地方魔王として初めて、ガーデン・マノスを訪問した魔王クライド。
魔王小雪との会談を終えたあと、そのままホワイトガーデンで夕食会となった。
いつもなら、こんな面倒な夕食会はパスするのだけど。
魔王クライドであれば話しは別。
ただ大勢でガヤガヤするのは性に合わないので、双方一部の側近達のみでの少人数で行われた。
こちらからは、チビ雪と堅造のみが参加。
魔王クライドの方も、それに合わせ二人に絞ってくれた。
「僭越ながら私、クライドが挨拶をさせてもらおう。今日という、めでたき日を祝し魔王小雪様とガーデン・マノスに乾杯とさせて頂く! 皆の者に幸あらん事を!」
グラスを片手に、クライドが上にグラスを突き上げ挨拶をする。
その挨拶と共に、その場にいた者達全員がグラスを上げ乾杯をした。
以前、ホワイトガーデンで気持ち悪い料理が出てきて以来、今日の夕食会ではゲテモノは絶対に出すなと口酸っぱく言っておいた。
そのおかげか、今日の料理は街の高級レストランで見かけるような、ちゃんとした料理が出て来る。
「あー美味しい。やっとまともな料理が食べれた」
「まともな料理?」
私が思わず出してしまった言葉に、魔王クライドが反応した。
前にホワイトガーデンであった事を話すと、またいつもの屈託のない笑顔で大笑いしてくれた。
「それは災難でしたな! あのカエルもちゃんと調理をすれば、見た目は気にならなくなりますが。まあ私は姿煮でも全然構わんですぞ!」
「私は絶対に嫌です!」
時折冗談なんかを交えながら料理を食べる手も進み、魔王クライドを筆頭にいい具合にお酒も回り始めている。
ちなみにだけど魔界では、特にお酒が呑める年齢などはない。
自己責任で、いくつからでも呑める。
ただ父上が、「二十歳を迎えるまでは絶対にダメだ!」と言っていたので、私とチビ雪の二人はお酒は飲まない。
何でも父上のいた日本では、生まれてから二十年を経たないと呑めないらしい。
「いつか小雪様とも酒を酌み交わしたいものですな」
魔王クライドがそう言うが、呑もうと思えば呑める。
だってここは日本ではないのだから。
「一応父上の言いつけは守っているので、あと三年待ってください」
魔王クライドからすれば、三年なんて一瞬だ。
それこそ瞬きするぐらいの時間の流れだろう。
なのに待ち遠しいと言わんばかりの顔をする。千年以上も生きてるくせに!
程よくお腹も一杯になり、呑んでた組はお酒も周り、夕食会は終わりを迎える。
だがここで、魔王クライドがまだ話しがあると言ってきた。
出来れば他の者達のいない所でと言われたので、夕食会場には堅造を片付けのため残して魔王室で話しをする事になった。
「それではこれで、私は一旦貴賓室に行ってから魔王室へと向かいましょう」
この一言で夕食会はお開きとなり、魔王クライドは夕食会場を側近のヴァンパイア達を連れて夕食会場を出て行く。
その後に、私とチビ雪の二人で魔王室へと向かった。
最初は私一人かと思ったけど、チビ雪も来て欲しいという事になった。
自分だけハブられたと、堅造はちょっと寂しそうにしてたけど。
仕方がないじゃない、相手は吸血鬼王クライドなんだから。
下手に逆らったら、どうなるか分かったもんじゃない。
変に義理堅いから地方魔王なんてやってるけど、その気になったら私より全然強いと思う。
もしかすると、あのおじ様にとっては四十年経った今でも、未だに暇つぶしの余興が続いているのかもしれない…。
まあ、そのおかげで他の地方魔王もガーデン・マノスに簡単に手出し出来ないんだけど。
そしてチビ雪と二人で魔王室に到着し、しばしの羽休めを行う。
「今日は疲れた。でも話しって一体なんだろ」
「確かに気になりますね。他の者に聞かれたくない話しでしょうか」
わざわざ夕食会を終わらせてまでの事だから、間違いなく周囲には聞かれたくない内容だと思う。
おそらくだけど今回のガーデン・マノス訪問も、それが本当の目的なのかもしれない。
一つ気になるのが、途中でチビ雪も居てもいいと変更してきた点。
それはつまり、チビ雪にも知っておいて欲しい事なのか、はたまたチビ雪は知っている事なのか。
魔王の椅子に座りながら、思考を張り巡らすが答えなんて当然出ない。
「扉を開けてもらえますかな?」
魔王クライドの声が、魔王室の扉の前から囁いた。
声を聞いて、チビ雪が急いで扉を開ける。
扉を開けると、何やら大きな棺が出入り口を塞いでいた。
「何ですか!? その大きな棺は」
「これはヴァンパイアの塒ですな、まあ私はアイテムボックスにしてるんですがね!」
魔王クライドが笑いながら言い放ち、上手く角度を変えて棺を部屋に入れると、自分より一回り大きい棺を肩に担いだ。
重さは軽く見積もっても、一トンは超えるらしい。
私もチビ雪も、そんな棺を軽々しく担ぐ魔王クライドを見て戦慄する。
二階の貴賓室から、それを担いで三階の魔王室まで来たのかと。
ホワイトガーデンは広いから、かなりの距離があったと思うんだけど。
ていうかアイテムボックス代わりって、他にも代わりになる便利なアイテムはあるでしょうに。
「よく誰にも見られずに、ここまで来れましたね」
「何をおっしゃいます。何度も見つかりましたが、その度に付いて来ないようにとお願いしておきましたぞ」
おそらく、お願いしたんじゃなくて脅してきたな。
そりゃあ魔王クライドに脅されたら、誰も逆らえないからな。
大きな棺を床へと置くと、おもむろに棺を開け始めた。
「実は今日参ったのは、これを渡す為でもあったのです」
魔王クライドは棺から、赤い宝石の付いた指輪を取り出した。
「え? もしかして求婚ですか?」
「はっはっはっ! それはいいですな!」
いきなり跪いた状態で指輪を渡してくるから、思わずツッコんでしまった。
だって魔王クライドなら本当にやり兼ねないし。
父上から昔聞いた事があったけど、五年に一度だけガーデン・マノスに全魔王が集結する評定がある。
その時に魔王クライドは、私が即位する前は魔界で唯一の女性魔王だった、魔王ツキシグレを口説いて戦争になりかけたとか。
なんでも父上が間に入り、必死にお互いを取り持って何とか場を収めたそう。
(父上も相当大変だったんだろうな)
魔王をやって、ようやく分かる父上の苦労。
人間の年齢として考えても早過ぎる死は、やはり魔王としての重圧も影響あったのかもしれない。
だが今は、それよりも気になる事がある。
「なんで指輪一つ持って来るのに、そんな棺に入れてくる必要があるんですか!」
「いやいや、その指輪はついでです。本命はこっちですが先に指輪の説明からしましょう」
クライドに言われてよく見ると、棺の中には半分ぐらいの大きさの箱が入っている。
チビ雪ぐらいなら入りそうだけど、そんなまさかね。
棺を覗き込む私に、魔王クライドが指輪の話しを始めた。
「その指輪は『統魔の指輪』と呼ばれる魔道具です」
「統魔の指輪?」
聞いた事が有るような無いような、魔道具に関しては本当に疎い。
「それはモンスターを使役できる魔道具ですね」
さすが、チビ雪は知っていたみたい。
横目でチビ雪が、少しは勉強してくださいという圧と共に、目線が痛いほど突き刺さる。
魔界には多くの種類のモンスターが存在する。
彼らは魔獣とも言われ、魔界の大地にある膨大な魔力により生み出されるが、そのメカニズムは未だによく分かっていない。
基本的には大地の魔力が結晶化した魔石に、さらに魔力が集まりモンスターが形成されるという事だ。
それ以外にも死んだ者の魂、つまり霊魂に魔力が集まりモンスター化する者もいる。
例外として、呪法を使い自らをモンスター化する魔族もいるが…。
だが魔王クラスともなれば多くのモンスターを配下に加えている。
だけど、それも強大な魔力を扱えてこそ。
凶暴なモンスターは、時に魔族すらも襲う事もあるのだ。
「魔力が使えない小雪様は、この統魔の指輪が役立つと思いますが」
このクライドの言葉を聞いて、私もチビ雪も明らかに狼狽えた。
つまり私の秘密を知っている、もしくは気づいていたという事だから。
「おっと、これは申し訳ない。実は私はマサオ殿から小雪様の秘密を聞かされていましてな」
父上まで私の秘密を…全く母上といい、律儀に秘密を守っていたのは私本人とチビ雪だけじゃん。
だから途中で、チビ雪も居ていいと言ってきたのか。
「小雪様、不満はあるでしょうが、マサオ殿は自分がいなくなった後の事を私に託された。だから私はこうやってお節介を焼きに来た訳ですな」
「はあ、つまり魔王の資格がない私にこの指輪を渡しに来たという事ですか」
モンスターを使役するというのは、言ってしまえば飼い慣らすという事だ。
一般の魔族ではテイマーと呼ばれるクラスのやる事だけど、統魔の指輪を所持していればテイマーと同じようにモンスターは魔族に主人として従うようになる。
己の魔力量で使役できるモンスターを増やせるテイマーと違い、統魔の指輪では使役できるモンスターは一体だけらしいが。
ただ魔王クライドが言うには、私に渡した統魔の指輪は特別製で三体まで使役できるそうだ。
これを聞いて思わず、
「この指輪を使って、私も魔力が扱えるように見せて誤魔化せばいいのですね」
知らぬところで両親に秘密を勝手に暴露されてた事を立て続けに知り、それが少しショックでつい悪態をついてしまった。
「小雪様、あまり魔王クライドを見くびってもらっては困りますな」
魔王クライドの眼つきが変わった。
こんな指輪一つで誤魔化せられるほど、魔王の座は甘くないと。
背中が少し冷たくなる感覚、蛇に睨まれた蛙の如く言葉も返せなくなる。
額から嫌な汗が流れた。
「魔力を使えない、これは確かに魔王として以前に魔族としても致命的。大革命以前なら、真っ先に淘汰されたでしょう。だが今は時代が違う。強大な魔力を使えればいいという時代はとうに終わった」
流石というべきか、千年以上も生きていれば時代の流れが変わる事は何度も経験してきたはずだ。
魔王クライドは変にそれに逆らわず、その時その時で時代の流れに合わせてきたからこそ、未だに魔王の座でいられるのかもしれない。
「だが今も魔族絶対主義の思想は、魔界各地で根強く残っているのも事実。小雪様、あなたはこの統魔の指輪を使って自分だけの近衛兵を作りなさい」
「私だけの近衛兵ですか?」
「そうです。例えあなた自身に微塵も力がなくとも、優秀な部下を付き従えていれば十分に魔王としての威厳を確保できる…はず」
ちょっと嫌味を言われたような、さっきの悪態の仕返しだろうか。
だけど私だけの近衛兵か、これはちょっと面白そうだと思ったのが本音だ。
魔王クライドとチビ雪が説明してくれる。
統魔の指輪を使ってモンスターを使役した場合、単に配下に加えるのとは違う。
主人とは一心同体とも言っていい存在となり、主人が受けた恩恵を使役したモンスターにも共有される。
仮に私が支援系呪文を受ければ、使役するモンスター全てにも反映される。
だけど一番のデメリットととして、主人の死はモンスターの死にも繋がるという点。だからモンスターも簡単に使役されようとはしないそうだ。
「統魔の指輪は、正に小雪様の力量が試されるという訳です」
なるほど、決して簡単な話しではないという事ね。でも三体だけとはいえ、正に私だけのモンスター軍団を作れるの事実。
魔王クライドに言われて統魔の指輪を右手の薬指に嵌めると、大きさが変化して私の指にピッタリとフィットした。
今日の夜にも投稿予定です!




