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131話 影に潜む刃

宿の部屋に荷物を置いたスノーたちは、夕食のために宿の一階へ降りていった。


黒曜の庵の食堂は広く、賑わっていた。旅人や商人たちが食事をしながら談笑している。


しかし、スノーたちが席に着くと、どこか刺すような視線を感じた。


「……見られてる?」


スノーが小声で呟くと、エルドリッジが静かに周囲を見渡した。


「気のせいではありませんね。明らかにこちらを意識している者がいます」


その言葉に、スノーは警戒を強めた。


クランレアドは魔王グリテアの居城がある都市——魔都市として知られ、彼の支配が色濃く反映されている。


そんな街の裏社会に巣食う犯罪組織、それが漆黒の剣だった。


スノーたちは彼らの詳細は知らないが、魔王の影がちらつく組織であることは察していた。


「……誰?」


スノーが視線の先を追うと、黒いコートを羽織った男が数人の仲間を引き連れ、こちらに近づいてくる。


「よう、お前ら。初めまして、とは言わないでおこうか」


不敵な笑みを浮かべるその男に、スノーは眉をひそめた。


リーティアが僅かに目を伏せる。


「グレオ……漆黒の剣の幹部ですね」


リーティアの言葉に、スノー、エルドリッジ、チビ雪も驚いた。


リーティアが漆黒の剣について何か知っているような素振りを見せるのは初めてだった。


「ほう、嬢ちゃんは俺のことを知ってるのか? 面白いな」


グレオは興味深げにリーティアを見つめた。


「そりゃ、魔都市にいれば嫌でも名前は聞こえてきますよ」


リーティアは平然と答えたが、スノーは彼女の言葉の裏に何か隠されたものを感じた。


「お前らがこの街にいるって話を聞いてな。せっかくだから挨拶に来たのさ」


「……それだけ?」


スノーが問い返すと、グレオはニヤリと笑い、テーブルに片手をついた。


「まさか。俺たちも商売だからな。情報ってのは売り買いできるもんだ」


「情報?」


「例えば、俺たちのボスが魔王グリテアとどんな“関係”を持っているのか……興味はあるか?」


スノーの背筋が凍るような感覚を覚えた。


「……何を知っているの?」


「おっと、話はここまでだ。続きが聞きたきゃ、俺たちの『取引』に応じてもらわないとな」


グレオはそう言うと、不意にニヤリと笑い、懐から一枚の紙を取り出した。


それをテーブルの上に置くと、スノーたちは目を見開いた。


「……カール?」


そこに書かれていたのは、スノーたちがこの街に来る直前に袂を分かった仲間、カールの名前だった。


「お前らの元仲間、今は俺たちの取引のカードってわけだ」


グレオは愉快そうに笑う。


「カールが……漆黒の剣に?」


スノーは奥歯を噛みしめた。カールとは価値観の違いで別れたが、彼がこんな形で再び関わるとは思っていなかった。


「スノーお姉さま、カールって……!」


チビ雪も驚きの表情を浮かべ、スノーを見上げる。


その小さな声には、信じたくないという戸惑いが滲んでいた。


「……私たちはどうする?」


イシェイルが低く呟いた。その目は鋭く、すでに次の行動を見据えている。


「どうするも何も、放っておくわけにはいかないでしょう」


タケルも腕を組みながら答えた。


「……でも、カールがどうして漆黒の剣と関わってるのか、それを知らないまま動くのは危険じゃない?」


「それは確かに……」


スノーはタケルの意見に頷きつつ、考え込んだ。


グレオはそんな彼女たちを眺めながら、口元に笑みを浮かべる。


「考える時間をやるよ。もし取引に応じる気になったら、明日の夜、東区の倉庫街にある『朽ちた門』に来な。そこで待ってるぜ」


そう言い残し、グレオは仲間たちと共に宿を後にした。


――――


その頃、グレオたちは宿を後にし、路地裏にある酒場「影の杯」に足を踏み入れた。


店の奥の席には、一人の男が腰掛けていた。


「カール、いい知らせだ。スノーたちはもうエサに食いつきかけてるぜ」


カールは杯を傾けながら、無表情のままグレオを見やった。


「そうか。奴らがどう動こうが、俺には関係ない」


「はっ、冷たいもんだな。昔は仲間だったんだろ?」


「過去は過去だ。俺はもうスノーたちの仲間じゃない。それに……もし戦うことになったとしても、俺は何の躊躇いもない」


カールはそう言った後、一瞬だけ視線を落とし、低く呟いた。


「……姉御、いや、スノーがどう思おうがな」


カールの目には一片の迷いもなかった。その言葉に、グレオは満足そうに笑った。


「そりゃ頼もしいこった。さて、面白くなりそうだぜ」


――――


一方その頃、スノーたちは食堂を後にし、静かに階段を上がっていた。


その時、パーティの一番後ろにいたリーティアが、小さく肩をすくめながら、不敵に笑った。


「うふふフフフ、これは面白くなりそうですね」



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