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12話 恐怖心

「今日はありがとうございました。原因が分かっただけでも良かったです」


奈美さんにお礼を言って、魔導士学校を後にする事になる。


力になれなかった事を奈美さんは謝ってきたけど、出来る限りの事をしてくれたので私には感謝しかない。


しかも、この後も私の魔力について調べてくれるという。


「小雪様、今はハッキリとしませんが、少なくとも魔力を使おうとするのは控えた方がよろしいかと思います」


「大丈夫です、使いたくても使えませんから」


皮肉にも取れる冗談を言って、また奈美さんを困惑させてしまった。

ちょっと口の悪さを考えないといけないかも。


奈美さんに別れを告げて、魔導士学校から歩いて二時間以上かかる、マノスヒルズへ帰る事になる。


「小雪様、私も一緒に帰るので列車を使って帰りましょう」


ガーデン・マノスは都市国家だけど、その広さはかなりのもの。


父上が以前言ってたけど、日本にある東京という街の二十三区というエリアがすっぽり入るぐらいあるとか。

全くピンと来ないけど、とにかく広いのだ。


ガーデン・マノスは五角形の城壁で囲まれた都市国家だけど、街の中は八つの地区で分けられている。


まず六つのエリアが城壁に沿って囲むようにあり、北東がA地区、東がB地区、南東がC地区、北西がD地区、西がE地区、南西がF地区。


それら六つの地区に囲まれた四角いエリアが魔都市中枢がある中心部に当たり、さらに中心部は左右に東地区と西地区に分けられている。


マノスヒルズやホワイトガーデンは中心部西地区にあり、中心部東地区には魔都市上層部のエンシェントタワーがそびえ立つ。

そのため中心部は別名で西地区を魔王エリア、東地区をエンシェントエリアと呼称される事もある。


ガーデン・マノスには、それら六つのエリア全体をグルっと一周する魔動列車が整備されている。


さらに東のB地区と西のE地区を繋ぐ、中心部を左右に横断するように魔動列車が走っていて、魔動列車に乗ればガーデン・マノス全体を行き来する事が可能となっている。


魔導士学校があるのは、学校の多い南西のF地区。


なので、ここから北上してE地区に入る必要があるが。

私は一度も利用したないから不安だけど、チビ雪と一緒なら大丈夫か。


駅へと向かう為、再び変装しようとしたが、怪しいからマスクは外せとチビ雪に言われた。


少し気まずい空気の中、二人で最寄りの駅まで歩いていた時、チビ雪の方から口を開いた。


「小雪様、さっきはごめんなさい。思わず睨んでしまって」


やっぱりチビ雪は、さっきの事を気にしていたんだ。


尊敬している恩師が、目の前であんな事故になってしまって相当焦ったんだと思う。


幸い奈美さんに怪我はなかったけど、それはチビ雪の咄嗟の判断があったからだ。

もし私と二人きりだったらと思うと、正直ゾッとする。


「気にしないで、私が未熟だからこうなってしまった所もあるし」


少し笑みを浮かべながら、チビ雪の頭に軽くポンと触れた。

チビ雪も、どこか安心した表情を浮かべる。


このまま魔力を扱えないのかもしれないけど、あんな危険な事になるなら私は使わない方がいいとさえ思う。

例え、他の魔族達からどう思われても。


その時はその時、私よりも魔王に相応しい魔族が魔王をやればいい。


私は密かにそう決意する。


魔導士学校から歩き始めて約十分、魔動列車の駅に到着した。


「まずは、ここで列車券を買ってください」


「私魔王だし、タダで乗れないの?」


「乗れません。都合のいい時だけ魔王を振りかざさないでください」


うん、いつものチビ雪ちゃんに戻った。

年下なのに、全然私よりしっかりしてる。


列車券を発行する機械の前に立ち、マノスヒルズ行きまでの列車券を購入。

出てきたのは少し固めのカード。


「これを持って、そこのゲートから駅のホームへと向かいますよ。列車券をゲート前の…」


初めての列車券購入。

チビ雪が話し終える前に、列車券を持ってすぐさまゲートの付いた入り口へと入るが。


「ぐはぁ」


ゲートが開かず、下腹辺りを思いっきり強打してしまう。

その場でうずくまり、プルプルと震えて悶える。


完全に無防備だった、これは痛い。


その様子に駅に勤める魔族が、慌てて駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか? ここに列車券をかざして頂くとゲートが開きますよ」


そ、それを早く言って…チビ雪ちゃん、なんで教えてくれなかったの…。

恥ずかしい…。


先に別のゲートから通過したチビ雪が、ゲートの先で他人の振りをして待っている。


いやいや、そこはフォローしてよチビ雪ちゃん。

最近、私にちょっと厳し過ぎない?


少し息を乱した状態で列車券をゲートの右側にあるパネルにかざし、パネルの横にあるランプが赤色から緑色に変わった。


「何してるんですか。見てるこっちが恥ずかしいですよ」


チビ雪のこの一言には、流石に我慢の限界を超えた。


「むしろ何で教えてくれなかったの? 今のはちょっと意地悪じゃない?」


駅のホームで大声を上げてしまう。


その声に、周りの魔族達が「あれってもしかして魔王小雪様か!?」と、立ち止まってざわざわし始めた。


だがチビ雪からの思わぬ反論。


「私は教えようとしてたのに、そそくさと先に行ってしまったんですよ。人の話しは最後まで聞いてください」


そうだったっけ。


それより周囲がざわついているので、一旦その場から離れる。


誰もいないホームの端に、二人で移動した時だった。


「小雪様、冷静を装ってますけど、本当はまだ動揺してるんじゃないですか?」


核心を突かれたようで、ドキリとしてしまう。

確かに動揺してないと言えば嘘に……いや違う。


自分の魔力に恐怖心を抱いてしまってる。


いつか暴走するんじゃないか、いつか自分が支配されてしまうんじゃないか。


意思のあるという魔力が一体何者なのか…。


分からない事だらけで、この先どうなってしまうのか恐怖でしかない。

冷たい汗が額から頬に向かって流れ落ちる。


「小雪様、一人で抱え込まないでくださいよ。大丈夫です! 私も全力でサポートします! 何とかなりますよ」


チビ雪が左手を出して、そっと私の右手を握ってきた。


その言葉に、僅かばかりではあるけど恐怖心が少し和らいだ気がする。

何だかんだ、いつも一緒にいるチビ雪に助けられてるな。


「そうだね、先の事を考えても分からないものね。まだ起きてもない事に不安になるのはもうやめるわ! 何より私らしくないもの!」


私はチビ雪の左手をギュッと握り返して、深く感謝をした。


そこへ、ようやく魔動列車が到着。


そのまま手を握ったまま二人で列車へと乗り込んだ。

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