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116話 依頼人との接見

一週間ぶりに目が覚めて体力も戻っていないというのに、宴が始まればお構いなしに盛り上がり出した。


イシェイルが作ったというモクテルは、お酒入りのカクテルと両方作っていたようで、吞兵衛組はアルコール入りを飲んで騒いでいる。


料理の方は、元々パーティーを想定していたものではなかったから、そこまで豪勢なものでもなかったけど。


ただ一週間ぶりの食事だったからか、気付けば自分の料理を一番に平らげてしまっていた。


「お姉さま、良かったら私の分も食べてください!」


チビ雪が少し料理を分けてくれた。


「俺のも食べてくれ! 元気を出すには食事からってな!」


「スノーさん、よかったら僕のも」


「いやいや、みんなで私を太らせる気!?」


とは言いつつ、全員から貰った料理も手が止まらない。明らかに体が食べ物を欲していた。


「リーダーは明らかにやつれてるし、少しでも食った方がいい」


「そういえば私が眠っている間、どうやって栄養補給していたの?」


「私とチビ雪さんで、毎日少しずつ魔力を供給していました。魔力は魔族の力の源、ハーフ魔族のスノー様でも魔力の供給があれば一カ月は生きられるはずですから」


「そっか、寝ている間も助けられていたのね。本当にみんなありがとう」


今回のクエストは、自分一人だったら確実に命を落としていたと思う。それだけ大変なクエストだった。


だけど…そんな事を考えていたら、気になっていた事を思い出してしまった。


悪霊退治を依頼したゲオルグ、彼とエルドリッジ、そしてカテリーナとの関係性について。


「ねえ、ずっと聞きたかったんだけど、クエスト達成の報告はしたの?」


「いえ、クエストを受注したのはスノー様です。報酬の受け取りはスノー様しかできません

一応クエスト達成の報告は領主のハイドリッヒから伝わっていると思いますが、詳しい事は我々も依頼の守秘義務の観点から領主にも伝えてないのでゲオルグもまだ知りません」


「じゃあ、まだゲオルグに会っていないのね?」


「ああ、俺達も色々と聞きたいことはあったけど、姉御が目を覚ますまで我慢していたぜ」


なら、すぐにでもゲオルグに会って確かめなければいけない。あの屋敷で行われていたことを。


何より屋敷の中にゲオルグの肖像画が飾られていたことも。


「スノー様、事の顛末は聞いています。明日、スノー様の体が回復していたらゲオルグの元へと行きましょう。次は私も同行します。

私も彼と直接会って話しをしたいので」


「ええ、リーティアお願いね。おそらく彼は大事なことを隠してると思うから」


ゲオルグは単なる悪霊退治と言っていたけど、どうしても私にはカテリーナが単なる悪霊だったとは思えない。


最後に助けを求めたきた姿が、未だに脳裏に焼き付いている。


以前に冒険者を食い物にしていたローエン親子の件もあるし、もしかして私は当たる依頼人の運が低いのかもしれないな。


でも、直感になるけど今回のゲオルグはローエンのように悪人にも見えない。


実際に依頼の話しを聞いた時も、私達にすがるような雰囲気だった。何かを隠してはいるけど、幽霊屋敷に巣食う悪霊をどうにかして欲しいという気持ちは本当だったようにも思う。


「まーた姉御は難しい顔をして一人で考え込んでいるな! 悪い癖だぜ!」


「こういう場では、一人でもつまらなさそうにしてる奴がいると場がシラケる! リーダー、余計な事は明日にして今日は遊ぶぞ!」


そう言うとイシェイルはテーブルにトランプを叩きつけるように置いた。


「ポーカーで遊ぶぞ! やる奴はいるか!」


「よし! 姉さんとカールに乗った! 僕は参加する!」


「今日こそはカールに勝ちます! 今まで特訓を重ねてきたんです! ネオチビ雪の実力を見せてあげます!」


「よーし、また泣いても恨むなよ! ネオチビ雪ちゃん!」


突然始まったトランプでのポーカー。


今はまだ、そんな気分じゃないというのに。


「スノー様、つまらない話しは明日にして今日は楽しみましょう」


私の気持ちを察したのか。


テーブル中央に置かれたトランプを手に取ったリーティアは、手慣れた手付きでカードを切りだした。


結局この日は、ポーカーに強制参加させられる事になり、これが朝方近くまで続いてしまう。


ネオチビ雪ちゃんは、残念ながら今回もカールに泣かされる結果となったのは言うまでもない。


そして次の日。


全員が起きて来たのはお昼過ぎになっていた。私の体の方は全快とは言えないけど、外出する分には全然問題ない。


それを見越してか依頼人ゲオルグには、リーティアが領主を通してアポを取ってくれていた。


クエスト達成の報告と報酬を受け取るために、いよいよゲオルグのいる港湾組合に向かう。


「チビ雪ちゃん、今回は全員で行くから一緒に来て」


六人全員で行く必要はないけど、どうしてもチビ雪には一緒に来て欲しい理由があった。


「はい、もちろん一緒に行きます!」


チビ雪からは力強い返事が返って来る。


全員の行く準備が整い出発、港湾組合に向かう道中では、ゲオルグに何から話せばいいか考えを張り巡らせる。


屋敷を出発してからしばらくして、港湾組合のある建物に到着した。


「いよいよだな、ゲオルグをぶん殴ってでも真実を聞いてやるぜ!」


「カールさん、過激な事をすれば私達はまたお尋ね者ですよ。それに依頼人を詮索するのだって、本来であればマナー違反でしょう」


確かにリーティアの言う通り、そもそも無用なトラブルを避けるためにクエスト村では、お互いに無益な詮索はしてはならない事になっている。


ローエンのように冒険者を食い物にしていた訳でもないし、疑念があるとはいえゲオルグに関しては個人的な疑念の方が多い。


だから今回の一件でクエスト村から追放されても仕方ないと、腹を括っての判断だ。


まあそうなった時は、他に収入源を考えればいいし、最悪旅を止めればいいだけのこと。


意を決して港湾組合の入り口ドアに手を掛けて、ゆっくりとドアを開いた。


「スノー様、そして御付きの方々、お待ちしておりました」


ドアを開けてすぐ、出迎えて来たのはなんとゲオルグ本人だった。


深々と頭を下げて出迎えたゲオルグは、頭を上げてこちらを見上げる。


「それでは私の部屋へ……か…カテリーナ!?」


「ゲオルグさん、どうかしましたか?」


「あ、いえ…失礼しました。さっそく私の部屋へと案内いたします」


ゲオルグは明らかにチビ雪を見て狼狽えた。


そして私は聞き逃さなかった。小さな声でカテリーナの名前を呼んだことを。


ゲオルグの案内に無言で頷くと、ゲオルグを先頭にエレベーターへと乗り込む。


僅かな時間だけど、沈黙があまりにも長い時間に感じられた。


「どうぞ、お入りください」


三階にあるゲオルグの執務室に通される。


ゲオルグがドアを開けて横に立ち、先に私達全員が部屋へと入る。


初めて訪れた時と同じ、小さなソファーが両面に二つ。


それぞれ三人ずつに分かれて、両方のソファーに座る。私は入って右手側、チビ雪とリーティアが一緒に座った。


対面にはカール、イシェイル、タケルの三人が座る。


それを見てゲオルグは、一番奥にある自分の椅子に前に立つ。


「領主殿から報告は受けております。全員無事であったこと、非常にホッと安堵しました。そしてクエスト大変お疲れ様でございました。

これが報酬になります。どうぞお受け取りください」


ゲオルグは三百万ミラを机の引き出しから取り出して置いた。


もちろん報酬は貰う。だけど、ここに来たのはそれだけじゃない。


「ゲオルグさん、ここに来たのは報酬もそうですが、他にも用があってきたんです。あの幽霊屋敷の悪霊について詳しくお聞きしたい事があって」


「悪霊について……ですか?」


顔を一瞬曇らせたゲオルグは、チラッとチビ雪を見たようだった。


しばしの沈黙が流れたあと、ゲオルグは自分の椅子にドスンと腰を落とした。

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