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     Romanov & Hapsburg-2 名前の由来

 ロマノフとハプスブルグの名前は、歴史好きの夫ティムが付けた。

ニ匹の子猫ちゃんが、我が家へやって来た時、

ティムはちょうど、ロマノフ王朝に関する本を集めている最中だったのだ。


 子猫たちの名前を初めて聞いた時、

私は、「えーっ?!」と思ったものの、ほかに良い考えも浮かばないのでこれに賛成するしかない。

それにティムには、名前に対するこだわりがある。

だから、私が賛成しようが反対しようが、たとえ、子猫ちゃんたちがどう思おうが、この名前になる事に変わりはない。

ティムはその名前を付ける時、ピンと来るものがあったと言う。


ロマノフは存在感があり、その名からティムが連想するのは、

「Chummy つまり親しみがある、粗野なロシア人」だそうだ。

ロマノフ家のルーツを調べてみると分かる、とティムは言う。

とは言うものの、うちのロマノフが親しみを持つのは、ティムに対してだけである。


ハプスブルグは、「洗練され、ふふんっと上品に振舞うオーストリアの貴族」を思わせるそうだ。


 ミンディは、

「高尚な名前を、特にガスなんて、ひなびた名前からロマノフになるなんて!」

と言って感激してくれた。(それでも「粗野」だけど)


 他の友人たちは、「なにそれ?」とか、「長い名前だね」とか、いまいちの反応だった。

ハプスブルグが、いったい何なのか知らない人もいて(ベル薔薇がアメリカにはなかったからかも)

説明しても「だから?」と言う。

今はこの名前も定着して、だれも文句は言わない。

私は、「ロマちゃん」とか、「ハプスちゃん」とか呼んだりしている。


 ところで、人にあだ名を付けるのが好きなティムの命名のセンスは侮れない。

時が経つ内に、ロマノフはロマノフ家、

ハプスブルグはハプスブルグ家、のような性格になってきた。(と思う)


 さらに、

「ハプスブルグの髭のひねり具合と鬢の感じが、

オーストリア皇帝フランツ・ヨセフにそっくり」とティムは言う。

(写真は、別のブログに載せているので、皆さんもそう思えるかどうか、どうぞこちらをご覧ください

http://frisky-friends.a-thera.jp/ )


 おまけに、ティムの古いレコードを引っ張り出して、オーストリアのマーチを聞いていたら、(私の趣味ではない、念のため)

なんと、ハプスブルグがやって来て、スピーカーの方を向いて、耳を欹てて聞いているではないか。

「ありえない! 偶然かもしれない!」

と思って別の時にもう一度やってみたら、やはり同じ反応だった。

「さすがわが夫!」と、娘如きのニッキーに自慢した。

とは言うものの、ロマノフはロシア音楽に全く関心はない。


 ロマノフとハプスブルグが我が家へやって来た時は、

まだ生後八週目で、とても小さく、片手に乗るくらいしかなかった。

大人となった今の、彼らの頭ぐらいの大きさだ。


 我が家にやって来た頃の二匹は、お互いを励まし合うように固まっていた。

突然に母親や姉妹たちから離され、知らない所へ置き去りにされ、おっかなびっくりだったのだ。

食べる時、水を飲む時はいつも一緒。

さらに、おしっこやウンチも一緒にする。

子猫用のミニ砂箱は、成長する2匹が一緒に用足しをするには、あっという間に小さくなってしまった。

一匹が用足しをしている間に、私は、

「待ってー!」と言って、じたばたするもう一匹を押さえる。

急いで大きい砂箱に取り替えた。


 とにかく、子猫ちゃんたちが私たちに馴れるのには、ちょっと時間がかかった。

この子猫たちは、ノルウェージャンフォレストキャット系のMIXと思われる。(英語の猫図鑑で、ロマノフに瓜二つの猫を見つけた)

それで、気位は高くても、個性が強い分、フレンドリーであるはずだ。


 それなのに、なかなか馴れないのは、人間に警戒するよう、母猫に、しっかりと教育されていたからかもしれない。

さらに、養育係のミンディたちは忙しく、

子猫たちは留守番ばかりさせられていたので、人間に馴れる機会も少なかった。

とにかく二匹はよく逃げる。


 綿毛に足が付いたような子猫たちの、あわてて逃げるそのうしろ姿は、なんとも言えない可愛いさがあった。

本人たちは必死なのだけれど、どうも緊張感というか、野性味が感じられないのだ。

そこが「箱入り」と言える由縁なのかもしれない。

フリスキーを見ているので、特にそう思えてしまうのだろう。

あまりにも、走り去る時のお尻と後ろ足が可愛いので、

私は、お客様があるたびに逃げる子猫たちを見せて一緒に笑った。

捕まえて来ては、ぱっと離すのだ。


 お客様と言えば、こんなことがあった。

子猫たちがお客様に慣れてきたころ、

若い綺麗な女性が、その美しい爪で、ロマノフの鼻をほじっているのだ。

「どうしたの?」と聞くと、「ロマノフの小さな鼻に何か付いている」と言う。

それは、生まれた時からピンクの鼻に付いている、黒ゴマのような点だった。

綺麗なお姉さんに抱っこされたロマノフは、意味もなく鼻をほじくられても、

可愛らしくじーっとしているのであった。



 ロマノフとハプスブルグのお遊び姿も、もちろん可愛かった。

2匹が離れて遊んでいる時に、ふっとお互いに気付くと、動きを止めて見つめ合う。

そして、姿勢を低くして小さなお尻を上げ、ふりふりっとする。

次の瞬間、両方からタタタッと走り寄ってって来たかと思ったら、急に立ち止まる。

同時に万歳をして、上にぴょんと飛び上がり自分を大きく見せようとする。

その後は、ただひたすらレスリングと追っかけっこだ。

それが、昼も夜も続く。


 夜中に走り回る子猫たちの、トコトコトコと家中に響き渡る音を聞きながら、

"Don't they sleep?!"(いつ寝るんだー?!)

と叫んだものである。

ペギーは、子猫たちが二歳ぐらいになったら、一日のほとんどを寝て暮らすようになると言う。

それが待ち遠しかった。


 私たちは、家の中で夜遊びをする、うるさい子猫たちに起こされない為、ベッドルームのドアを閉めることにした。

それが気に入らない子猫たちは、

「あけてーっ!」と、夜中でも、鳴きながらドアをスクラッチする。

私はこの時、これが人間の子供たちでなくて本当に良かったと思った。

もちろん人間の子供であれば、労を惜しまずに世話をするだろう。

とはいえ、その苦労たるや並々ならぬものがあると、

今さらながら親たちの労力を、敬意を持って深く思わざるを得なかった。


 そして私たちは、子猫だから心置きなく無視する。

しかも嬉しいことに二匹一緒だから寂しくはない。(ミンディの夫が言ったように)

その内、あきらめた猫たちは、再び自分たちで遊ぶ。

それを、夜な夜な繰り返す。 



 ところで、ミンディの所に残っていた二匹の姉妹たちはというと、

その後もなかなか貰い手が見つからなかった。

それで、新聞に載せて探すことになった。

ロマノフとハプスブルグが兄弟同士で引き取られたので、

この際、姉妹たちも二匹一緒に引き取ってくれる人を探すことにしたと言う。


 連絡してきたのは、喫煙者のいる家族で、

「間接喫煙を心配したけれど、感じの良い人たちだったから、この家族に決めた。」

とミンディが言っていた。



 今でもたまに、ロマノフとハプスブルグが生まれたあたりを通ると、

母親の女帝野良、そして年上の兄猫や姉猫たちは、どうしているだろうと思う。

もちろん、ノルウェージャンフォレストキャットは狩りが上手だし、

自然が整っていれば、十分に野外でも生きていける。

だから、彼らは、たくましく生き続けているに違いない。


 ミンディたちの引越しの予定が延びたので、四匹の子猫たちは人間と暮らすことになった。

もしそうでなければ、ロマノフもハプスブルグも、

その名前すら付けられず、野良猫として、未だにここに住んでいるかもしれない。

いや、ロマノフは大きくなれずに死んでしまったことだろう。


 そんな飼い主の思いも知らず、

ロマノフとハプスブルグは、

毎日、楽しそうにドタバタと走り回って遊ぶ。

そして、ぬくぬくと、窓越しの暖かいお日様の光を浴びながら、

のんびりと昼寝をしている。


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