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     Tuffy-5 ビギナーズクラス

 FCIは、AKCやJKCも加盟している国際的な犬の組織で、

登録されている犬種は、三百以上もあると言う。

そして、そんな犬たちから選ばれる人気犬も、その時代や場所によって違っている。


 昭和二十年~三十年代の日本では、

日本スピッツが大流行していたそうだ。

私が子供の頃にも、家には日本スピッツから生まれた真っ白なMIXミックス犬がいた。

純血ママが白と黒の二匹の子犬を産んだので、白い方がうちにやってきたのだ。

そのふあふあの、小さな白熊のような可愛い子犬は、

立派な番犬に成長し、良く働いてくれた。


 時は変わり、「番犬」よりも「愛玩犬」が増え、

最近は、留守番をしている犬の様子を、携帯電話で見れる、

ハイテクサービスもある。

昔は番犬として、家や家族の安全を守っていた犬たちも、

今や、飼い主の方が安全を見守ってくれる時代になった。


 そんな日本とは違い、アメリカでは、大型犬の人気は高く、

護身用に飼う人も多い。

ところが、ドッグトレイナーに言わせると、

きちんと訓練されていない犬は、護身用犬にはならないそうだ。

もちろん、飼い主を守ろうとする犬はいるし、実際、守ったヒーロー犬もいる。

とは言え、それは、たまたまで、(守らなかった場合、話題には上らならないし)

守ろうとして、相手に大怪我をさせてしまっては元も子もない。


 我が家で唯一、AKCに登録されている雄犬、

三キロの重さも無いヨーキー犬タフィーは、

当然、護身用犬にはなれないけれど、

番犬にはなれるかもしれない。

犬の吠え声は、生きた警報機みたいなものだ。

特に、ヨークシャーテリアは、犬種の中では新米の方で、

小型犬になった日も浅く、小さい割には低い声を出す。

姿さえ見えなければ、不審者は、怖そうな犬と勘違いするかもしれない。

だとしたら滑稽だけれど、

うるさ過ぎても困るので、しつける必要はある。


 犬のしつけは、大型犬より、扱いやすい小型犬が楽、

と思っている人は多いかもしれない。

ところが、問題が多いのは、扱いやすいはずの小型犬の方だそうだ。

小型犬が従わないのは、

飼い主が、すぐにあきらめて抱っこしてしまうので、犬の方は

「別に従わなくても」

と思ってしまうのがあるらしい。

大型犬の場合は、従わないからと言って、

その度に抱っこする訳にはいかない。


 おまけに、アメリカでの大型犬の噛む事故件数は、

扱いやすい性質のゴールデンレトリバーが、

怖そうな犬種と肩を並べていると言う。

扱いやすいと思われる犬種が問題を起こすのは、意外だけれど、

悪いのは、犬のせいではない。

すべての犬には、適切な訓練が必要なのだ。

と言いつつ、それでは私の犬はどうなの、と聞かれると、

自慢できるほど訓練が出来ているとも言えない。


 それで私は、タフィーを連れて、グループクラスに通うことにした。

(本当は、ナナを連れて行きたかったのだけれど、妊娠中だった)

犬の訓練クラスは、ビギナーズクラスだけでも、

たくさんの事を楽しく学べるので、

私は、すべての犬の飼い主にお勧めしたい。


 とにかく、私が、一番関心があったのは、自分の犬の安全だった。

例えば、ある犬は、車の多い通りで飼い主とはぐれてしまい、

気が付くと、通りのこちらと向こう側に離れ離れになってしまっていた。

その時、飼い主は、道路の反対側にいる犬に、

声と手の合図で「お座り」をさせ、「待て」の命令を出した。

そして、自分がそこへ行くまで、犬を待たせて事なきを得たそうだ。

私も、これくらいしたい、と思う。


 もちろん、色々な芸も教えられたら楽しい。

私の友人が飼っているスタンダードのダックスフンドは、

お客様に色々な芸を披露してくれる。

まず初めに、ご主人様は、芸をさせながら、オヤツ数個を転がして食べさせるのだけれど、

一個だけは、食べてはいけないと言う。

犬はそれを残して、鼻パクから、「バーン!」と言うと死ぬフリをするなんて、

色々な芸をやって私たちを楽しませてくれる。

たとえ、そのオヤツの近くに行っても、

まるで忘れてしまったかのように無視する。

最後に、ご主人様が「おしまい」と言うと、犬は

「えっ?」

と、落ち着かない。

そしてご主人様に、

「何かお忘れではありませんかー?」

とでも言うかのように、そわそわする。

ご主人様は、思い出したかのように、

「あ、そうだったね」

と、その最後のオヤツを食べてもいいと許可する。

するとワンちゃんは、それを嬉しそうに食べていた。


 その飼い主の夫婦は、子供たちも巣立ったので、

犬との親しい関係を夫婦で楽しみたいと、訓練したそうだ。

感激した私は、1匹だけなら出来るかもしれない、

いや2匹でも出来ない事は無い、と思いつつ、

今まで、ほとんど何もしていない。


 ところで別の友人が昔に飼っていた犬は、「頭が悪い」と思われていた。

飼い主の言うことは何一つ聞かないしょうがない犬だったそうだ。

そんなある日、彼女の子供たちが、子犬を拾ってきた。

するとこの頭の悪い犬は、突然にすべての命令に従い、

なんとそれまでやった事の無い「死ぬふり」の芸までやって見せた。

数日後、子犬の新しいご主人様が見つかり、子犬が貰われていくと、

その犬は、また元のダメ犬に戻ってしまったそうだ。

そして、二度と、自分がどれほど賢いかを見せること無く、

その生涯を終えた。

それもまた、賢いと言えるのかもしれない。


 とにかく、うちでも「お座り」や「待て」、「来い」、「行きましょう」、「ハウス」などの、

基本的な訓練はやっている。

そして、教えたことは、習慣にすると良いそうだ。


 例えば我が家では、夜の寝る時間になると、

犬たちはケージに行く習慣になっている。

と言うか、遅くなると、

「ケージに行かせてー」

と催促する。

そこは自分のベッドなので、居心地も良く、結構気に入っているらしい。

(たいてい朝までそこで寝ている)


 昼には一階を占領している犬たちが、

夜には二階のケージで大人しく寝るので、

夜中の一階は、夜行性の猫たちの遊び場と化する。

猫たちは、お昼は、ほとんど二階にいて、

時には、ドタドタと遊んでいる音がする。

テリトリーを交換すると、匂いが両方に付くので、

犬vs猫の騒動を、押さえるのに役立つらしい。


 とは言っても、この習慣が出来るまで、

私たちは、紆余曲折を経なければならなかった。

始めの内、ナナとタフィーは、私たちのベッドで寝ていたからだ。

(前の家ではケージの中で寝ていたのに)

もちろんナナは、

「今更、ケージで寝るなんて気に入らない」

と、ケージの中で寝る初めての夜は、しつこく数時間も吠え続けた。

(タフィーは、ナナにお任せして静かだった)

そして、その後、ナナは、

階段の下に作ったドッグハウスのドアも、かじって壊してしまった。

初めから犬たちに、ケージで寝させていたら、こんな問題は無かったはずなのに、

と思ったけれど、後の祭りだった。


 今でも、ティムはベッドで読書をする時、犬たちを横で寝せたりする。

最近は、猫たちも一緒に寝ている。(と言うか、猫たちの方が先だった)

就寝時になると、寝ているワンコたちをケージに移すか、起こしてケージに行かせる。

それは、寝てしまった子供を寝床に連れて行くかのようで、可愛い。


 とは言うものの、犬と一緒に寝ると役立つ時もある。

私が友人とキャンプに行く時は、ティムが来れなくても、ワンコたちは連れて行く。

特別に訓練はしていないけれど、テントで一緒に寝て、

見張りをしてもらうのだ。

(それと、夏でも夜は冷えるので、湯たんぽ代わりにもなる)


 ある夏、私は、友人たちと、日本から来ていた私の父を、

山や海のキャンプに連れて行った。

父は、RVキャンピングカーで寝て、

私は、テールゲートカバナを車に取り付け、

それをテント代わりにして寝ることにした。

ペットフリーのキャンプ場だったから、

夜中でも犬を連れて歩いている人もいるし、

野生の動物が近くに来るかもしれない。

そんな時のナナはとても頼もしい。


 タフィーは、と言うと、全く何の役にも立たなかった。

夜中にカサカサと音がするので、眠気眼まなこの私は、

「何かが車に近付いたなー」

と思ったその瞬間、ナナが吠え始め、

タフィーはあっという間に枕の下に隠れてしまった。


 次の日、お隣さんのキャンプファイヤーを、夜遅くまで楽しんだ後、

カバナに行こうとすると、タフィーが「やだー!」と足を踏ん張って行きたがらない。

仕方が無いので、父が寝ているRVに連れて行くことにした。

するとタフィーは、たたっと、入り口のステップを上りドアの所でポインティングする。(そんな所でするなよ!と言いたい)

私がドアを開けると、さっさと中に入り、

父の寝ているベッドの上に乗って、

もう動かないぞと言わんばかりにそこで横になった。

山奥のキャンプ場だったから、タフィーは、

狼やマウンテンライオンなどの、

恐ろしい肉食獣の気配でも感じていたのかもしれない。


 街中の我が家の周りは、狼はいないけれど、

コヨーテはいて、猫を襲うこともあり、

猫より小さいタフィーは、格好の餌食になってしまう。

また、フクロウなどの猛禽もいるので、

この都市では、小型犬を外に出しっぱなしにするのは勧められていない。

ところがお気楽のタフィーは、家の中は安全だと分かっているらしく、へそ天の寝相からして全く野性味は無い。

ニッキーは、

「情けない。襲うふりをしてタフィーの野生の感覚を呼び起こしたら?」と言う。


 訓練しても私のためには戦ってくれそうもない、頼りないタフィーだけれど、

自分の雌犬たちを守るためには、雄々しく戦う。

そんなタフィーは、やっぱり可愛い、かな。

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