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8. ピコリペッシ盗賊団

 盗賊団アジトは、パッと見ではただの民家だった。

 郊外にある長閑(のどか)な住宅街の、何の変哲もない民家。

 そんな所でブレスキー刑事が総員配置につけ!なんて言いだし、思わず目が点になった。


 こんな民家に、本当にアジトがあるのか?


 俺たちは民家を囲う塀の裏に皆で隠れて、変装したブレスキー刑事が玄関へと1人で向かいインターホンを鳴らす。



「シダンデさんの御自宅でしょうか? お届けものです〜!」


 インターホンと言っても、地球のよりかは流石に幾分か発達していて、玄関に半透明なモニターが出現するとモニターの向こう側に気だるげな表情の梟みたいな宇宙人……αハブルーム星人の顔が現れた。


「お届けもの? 誰からです?」

「え〜っと、依頼人は匿名でして……」

「はあ? ったく、あのクソ新興ギルドのせいで最近ほんとそう言うの多いなーーとりあえず玄関に置いておいて下さい」

「あの、受け取りの証にサインか電子署名が必要なのですが……」

「ッチ、分かりましたよ」



 これで相手が出てくればそこを取り押さえる。

 出てこなければ、荷物を置いて相手が出てきたところを飛び出して取り押さえる。今回はそういう手筈だ。

 ちなみに、荷物を置いておく場合は俺の念力で荷物を地面に向けて引っ張ることで実質的に荷物を重くして、時間を稼ぐ予定だ。


「……はい、確かに電子署名を頂きました!ではここに置いて行きますね〜」


 ブレスキー刑事がわざと玄関から出て塀が死角になるような位置に荷物を置くと、足早に去っていく。と言っても、直ぐに俺たちの位置につく訳だが。


「さあ、頼むぞ念力少年」

「はい」


 ブレスキーが引っ込んで暫くすると、一瞬モニターに映っていた梟の様なαハブルーム星人が玄関に現れる。

 梟のような見た目なのに、彼は器用に羽を丸めて羽で梱包された箱を持ち上げようとする。

 そこに念力で箱を地面に引っ張ると、梟男はぐぬぬと声を絞り出し箱と格闘をし始めた。


「ちょっ、そんなに箱強く引っ張ってるの?」

「俺の念力は強力なんです」


 ブレスキー刑事がやや驚いたような様子でそう言うと、男は箱を持ち上げるのを諦め、目元に羽を当てるとスカウターを起動し始めた。

 今から恐らく電話するつもりなのだろう。


「あー、もしもし? なんかまた変な依頼だかで玄関に荷物が届いたんだが、重すぎて持ち上がらん。人を寄越してくれ、出来れば重力使いがいい」


 内心でしめたとニヤついていると、他の宇宙人が少しして玄関から現れる。兎人、犬人、亀人とよりどりみどりで、およそ家族には見えない。

 本当にここはアジトだったのか。


「なんだよ、この小さい箱が本当に持ち上がらないのか?」

「いや、配達の女は普通に持っていたんだが……あの女トロールかギガースかなんかだったのか?」


「……死ね」


 ボソッと警官にあるまじき呪詛を俺の傍で吐く刑事を他所に、男たちが4人で箱を囲む。

 まだ念力で地面に引っ張っているから重さは絶大だ。


「げ、何だこの重さ。持ち上がらねえじゃねーか!」

「だから言っただろ!俺が合図したら持ち上げるぞ……せーのっ!」


 ゴツン。


「え?」

「ちょっ、今のは何がーー」

「いいから、確保しましょう!」


 そいつらが合図すると同時に、俺も合図に合わせて4人の頭を思い切り念力で後ろから押し、4人の顔面衝突を起こす。

 少し念力の加減が強すぎたのか、気絶させるどころか何人か流血しているがまあそこは気にしない事にしよう。



「な、なんでこいつら気絶してるんだ……?」

「これ、まさかアーティが?」


 しっかし俺が独断で念力でハメたのはいいが、この作戦我ながら地味過ぎるな。


「さ、今なら玄関も空いてますし突入しましょう」


 本来の目的でブレスキーをなじると、ハッと思いだしたようにブレスキーが先頭に立ち、武器と思われるフラフープ並に大きな戦輪(チャクラム)を手に取り中に突入する。


「……なんだこれは」

「空間魔法を検知……空間拡張魔法ね」


 ブレスキー刑事がそう呟く中、俺たちは奥へと進む。


 家の中はまるで前世の頃の会社の事務所の様になっており、広大な作りとなっていた。なるほどこれは空間拡張魔法だろう。

 なんで家のガワを使ってこんなデカいアジトを作ったのか理解に苦しむが、給湯室と思われる部屋から地球人が現れると同時に俺は念力で下顎を上顎に縫い付け、念力で乱雑に吹き飛ばして見せた。


「んぐっ!? んーんっ!! ん……」


 後頭部を打ったそいつが気絶するので、丁度いいと言わんばかりにブレスキー刑事が魔封じの効果を持つ手錠を彼に嵌めて、更に魔法で縄を生み出し縛る。



「おい、侵入者だ!」

「ちっ、おいブレスキー、見つかったぞ!」

「止むを得ないわね。突撃よ!」


 仲間の別の冒険者が合図を送ると同時に、彼女は戦輪を投げる。


 侵入者を知らせた盗賊団の一人がそれを飛び越えて躱すと、斧を構えて此方に走り出した。


「【電気ショック(エレクシェル)】!」


 冒険者の1人が電気の束を前方に放つと共に、俺は投げられた戦輪のベクトルを念力で反転させる。


「無駄だ!俺はそもそも雷属せーーギャッ!」

「えっ!?」


 電気の束を回避した瞬間、その戦輪が彼の後頭部にヒットし盗賊が顔から地面に叩きつけられる。

 慌てて戦輪をキャッチしたブレスキー刑事は一瞬驚いた顔で此方に視線を送るが、すぐ様切り替えて駆け出す。


「なるほど、ただの念力使いってわけじゃないのね……なら話は早い!」


 俺も銃を取り出し、ブレスキーに続く。

 盗賊団の一味が更に数人現れ、それぞれが火と氷の魔法を放ち俺たちは回避を余儀なくされた。


「【火炎輪(クラバール)】!」

「【水の壁(ディモイス)】!」


 ブレスキーが火炎の輪を放ち、続けざまに戦輪を投げる。

 敵が水の障壁を展開し火の輪を打ち消し戦輪の勢いを殺すと、水の壁が凍り付き氷の矢がその壁から放たれた。


「矢は俺に任せろ!」

「ああ、【大木の木槌(ウドマッシュ)】!」


 冒険者共にそう告げ、銃弾を放つ。

 弾丸が氷の矢を打ち砕き、推力を失った所で念力で再び推力を与え、別の氷の矢を破壊させる。

 その状態で冒険者が前に出て武器と思われる杖を樹木に変化させると氷の壁を打ち砕き、中に閉じ込められていたブレスキーの武器が解放される。

 すぐ様それを念力で刑事の手元に送ると、彼女はそれを手に取り投げることなく盗賊を切りつけてみせた。


「【真空波(リソニック)】!」


 彼女が空を切ると同時に、真空の衝撃波が飛んでいき敵を攻撃する。

 そこに俺が更に銃撃で追撃すると、ガラスが割れるような音とともに、盗賊の一人の輪郭から黄色い破片のような物が飛び散り、そいつは膝を付いた。

 シールドを破壊できたらしい。


「クソっ!お頭にーー」

「させねーよ。【平伏の奇跡(サークロウ)】」

「があっ!!」


 膝を着いた敵を、重力魔法で床に縫いつける。

 じっとしていてくれないと、シールドが破壊された敵をうっかり殺しかねない。だから暫くは地面にキスをしていてもらう。


 シールドが破壊されると、人間の身体は無防備になり、あらゆる攻撃が致命傷となる。

 ドライブが発明されたことによってこの宇宙の治安は大幅に良くなったが、それ故に破壊された時のリスクを鑑みない奴もでてしまったのは事実。


 シールドが破壊された状態で火の玉を受ければ当然炎上するし、氷の中に閉じ込められれば凍死する。

 電気を浴びれば心臓麻痺と言うか、体内を火傷して死ぬし、斬られればそこから出血多量で死ぬ。爆発が起きれば吹っ飛んで即死。普通はそういうものだ。


「おいおいおい、なんだこれは」



 一番奥まで進んでいくと、そこには10人余りの盗賊が1人のメタリック星人を囲うように陣形を組んで現れる。



「盗賊団ピコリペッシ首領のソンツァイ・カンミー。パストラル警察本部よりお前に逮捕状が出ている」


「はあ? 警察(ポリ公)かよ」


「強盗罪及び窃盗罪の容疑でお前ら逮捕する。大人しくしろ」

「だそうだぞ、お前ら。大人しくするか?」


 首領のカンミーの言葉に部下の盗賊たちがゲラゲラと笑い始める。


「まあでもお頭、どうせ警察(ポリ公)がここにいるならここを引き払わないと行けませんね」

「ちげえねえな。まあでも引き払うためにも、こいつらをとっとと始末するか」

「……やれると思っているのか?」


 ブレスキーがニヤリと笑いながらそう言うと、他の冒険者たちが俺たちに合流した。9対10か。ほぼほぼイーブンってところだな。


「やれるかやれないかじゃねーんだよ。やるんだよ」

「ほう」


 ブラック根性丸出しだな……とかこっそりと思っていると、部下の一人が雑に飛び出し槍を構え、振り下ろそうとする。

 他の冒険者がそれに気付き、飛び出してブレスキーを守ろうとするがその前に俺は念力で槍を腕から引き抜き、そいつのケツに槍の先端をザックリと突き刺す(アッー!させる)


「なっ!?」

「生憎うちは戦力が整っている。行くぞ、全員逮捕だ!!」


 それを合図に、俺たちは全員でかけ出す。

 盗賊団討伐戦が今終盤を迎えようとしていた。

無双にするつもりは無いのですが、やはり念力って強すぎますね……

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