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3. やや近未来的な採集

「これが薬草なあ」


 地元のパストラル地区南西部には森がある。

 パストラル地区と言っても、昔はここはパストラル王国だ。パストラル樹海と呼ばれるその森はそれなりに広く、魔物もよく出る事で知られている。


「こんなのがポーション的な奴になるのか……」


 手に取った薬草をスカウター越しに確認すると、ハオマ草と呼ばれる草である事が分かった。


 スカウターは俺たち宇宙人にとっては生活必需品だ。

 前世で言うゴープ〇等のウェアラブルアクションカメラとスマホを合体させたようなものと思えばいいか。モデルは様々だが、どれも有用で1人で何種も機能をインストールしている人も多い。


 例えば、俺のスカウターには簡易鑑定機能をインストールしている。

 スカウターが俺の視線や瞳孔の開きを読み取り俺が今何に焦点を合わせているかを探知する事が可能で、それによって俺が今注目している物が一体何であるかを自動で視界に映すことが可能だ。


 初めて探索採集の依頼を受けた時に苦戦した事を反省しソフトウェアをダウンロードして見たら、これがなかなか使いやすい。


 鑑定って、創作物の解釈次第では何処までもチートになれるポテンシャルを秘めているのに、そんな物をスキルとか関係なく誰でも鑑定が出来るとはいい世界だ。


「まあ、こんなもんで良いだろう」


 空間魔法で中身が拡張されている自分のリュックに薬草を放り込む。

 そろそろ帰らなくては。



「……はい、確かにハオマ草ですね!依頼達成お疲れ様でした。報酬は口座に振り込ませて頂きますので、翌報酬支給日となりましたらまたご確認ください。また本日は報酬支給日ですので、先月分の報酬についてお確かめ下さいませ」

「はい、ありがとうございます」

「ギルドランクについても月に一度の更新が有りますので、ご確認の程をお願い致します」


 お辞儀をする猫耳地球人に軽くお礼を言い、ATMへと向かう。

 空間魔法なんて便利なものがあっても、ATMは宇宙でもATMのままらしい。


 ただ地球のソレと大きく違うのは、宇宙のATMは宙に浮いていて平べったい。それこそ空間魔法によってキャッシュが納められている所は亜空間だかになっていて、金額を入力するとポケットみたいなところが開きそこにお金がポップする仕組みだ。

 2000年ぐらい前までは認証は魔力によってされていたらしいが、今は魔力が複製されてしまうケースが後を絶たないため、それは無くなった。


「ふむふむ、なかなか稼げたな」


 ポップしたのは☆5万程。

 念の為に受けた依頼の報酬額を領収書と照らし合わせて、問題ないか確認する。


 うむ。問題なく振り込まれていたようだ。


「前世で初任給貰った時どうしたっけなあ……」


 前世ではバイトの初任給は確か親に花を買った気がする。んでもって正社員の初任給はメシを食いに行った記憶がある。

 今回()そうするべきなのだろうか?

 一応この身体になってから初めての報酬なのだし達成感とかもっとあっても良いはずなのだが。やはり前世の記憶があるとこの辺の感動は褪せるな。


 うん、今回はバイトみたいなもんだしやっぱメモリア夫人(お母様)には花を買って帰ろう。

 きっと喜ぶぞこれ。


 そんなことを考えつつ、ついでにライセンスをポケットから取り出してそれを裏返してみる。

 ライセンスは機械とかに通さなくても自動的に更新される。

 俺のランクはお陰様で変化を見せていたのだった。


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


アーティ・メモリア(重属性)

人種:地球人(ラルリビ出身) 男性 17歳

基本ドライブ:Rk(重属性)

総合ランク:2

・スペード:2

・ハート:2

・クラブ:3

・ダイヤ:2


- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -


「おっ、クラブ上がってる」


 クラブはたしか採集系の依頼をこなしてると上がるんだっけか。

 ランクが上がればその分稼ぎのいい依頼を受けれるし頑張りたいところだ。

 今正にやっていた恒常依頼のハオマ草収集とかは単価が低いし。


 ハオマ草は栽培できない代わりにラルリビ星の森ではよく見かけるものなのだ。これを製薬会社が買い取って色々と加工すると市販のポーション(シールドヒーラー)になるのだ。

 だがコモンな物なので、まあ誰でも出来る。これが欠点だ。

 稼ぐためにはもっと上の依頼を受けないといけない。

 そして稼げれば、それだけ早く地球に行ける(帰れる)




「ねえアーティ!」


 翌日。

 学校が終わり、先生から連絡事項を聞いていわゆる放課後状態になった。

 今日も依頼を受けて帰ろうかなあと呑気に思いながら席を立つと、声を掛けられた。


「んー?」

「今日暇?」


 なんだ藪から棒に。

 そう言外に視線を送ると、俺に声を掛けてきたラトニス・ミリティーストが瞬きをした。


「この後クラスの人間何人かで一緒に依頼を受けに行くことになってるんだけど、良かったらその……一緒に来ない?」


 ラトニスはキメラ人だ。


 キメラ人と言うのは、複数の宇宙人の特徴を併せ持つ人種を総称した単語だ。

 ラトニスの場合は地球人とγハブルーム星人のハーフだ。

 γハブルーム星人は蝶のような宇宙人であり、彼女の父親がそうであるらしい。

 お陰で彼女は地球人の体を持ちながらもアゲハ蝶のような羽を持ち、頭には申し訳程度に触角を付けている。普段使うことは無いそうだが、試しにイタズラ半分に握ったら思い切りはっ倒された事がある。


 そんな訳でγハブルーム星人の特徴としてみなそう言った宇宙人は小さく、それを受け継いでいるラトニスは、言ってみれば妖精のような見てくれと言えば分かりやすいか。


 ……妖精と言うには些か巨大ではあるが。


 いや、でもγハブルーム星人が総じて小柄なせいでラトニス自身も地球人よりも体の大きさは小さい。体長1mぐらいだろうか? 多分普段から羽で飛んでて宙に浮いているから邪魔くさく見えるのだろう。

 コイツなんか鬱陶しいんだよな。別に悪い子じゃないんだけど。


「課題の魔物討伐?」

「そうそう、ランク4相当らしいんだけど、パーティ組めばなんとかなるかなって」

「パーティ組む必要あるのか? アレ……」


 うちの学校では必修の授業として戦闘魔術の授業があり、このクラスは今月の課題として魔物の討伐を課せられていた。

 討伐は特に種類や数を求められてはいないし、ソロでもパーティでも問題は無いとのこと。

 この課題、雑過ぎませんかね。


「でも討伐した魔物の強さ次第で成績変わるって言うし〜……」

「はあ。んで、他のパーティメンバーは?」

「今のところモートンは誘ってる」

「モートンか。あいつならまあ大丈夫かな……」


 モートンは人工惑星メタリックに多くいるメタリック星人の一人だ。

 いわゆる猫型の宇宙人なのだが、ことこのメタリック星人と言う宇宙人は……まあ、早い話がハ〇ーキティにクリソツ(・・・・)なのだ。


 はじめて見た時、思わず『キティちゃん……!?』と大声を出してしまい、誘拐事件の後遺症かとお母様に思われ泣かれた事がある。


 それぐらい似ている。男ならあのオスのキティに似ている。あれ名前なんだっけ。

 ムニエルじゃなくて、デニールじゃなくて、ダスターじゃなくて……


 ああ、思い出せねえ。年取るって嫌だな。

 まだこの身体での年齢は未成年のはずだが。



「ん、待てよ。ラトニス後衛だよな?」

「ま、まあ、私はサポート系ではあるけれど……」

「俺はほら、オールラウンダーではあるけど明確なアタッカー系じゃないからさ。せめてもう1人ぐらい前衛が欲しい」

「前衛ね……分かった、探してみる」


 俺の持っているドライブはモデルRk(リパルスキネティック)だ。

 ドライブに紐づいている固有スキルはシンプルに『念力』。魔法における基本中の基本で、傍から見れば何がいいのか分からない、ハズレにも近いドライブ。

 って言うか、念力を使うだけなら物体浮遊の呪文を唱えればいいので、このドライブは傍から見ればハズレその物だ。


 最もそれは、ドライブを1つ(シングル)しか持てない人(ドライバー)の場合の話ではあるが。

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