9. 公務執行妨害
「【逆さ吊り】!」
銃を向けて弾を放つフリをし、敵を一体天井に縫い付け逆さ吊りにする。
盗賊の1人がそれに反応しレーザー銃を放ち俺に牽制攻撃を仕掛けると共に、ブレスキーが戦輪に火をつけて放ち攻撃を仕掛ける。
「ちっ、光魔法か」
光は重力の影響を受けない。俺の弱点属性だ。
超強力な重力魔法が無いと光属性に重力属性が勝つのは難しい。
そう言う魔法は燃費が悪く、なかなか使えないと言うのが実情だ。
「重力使いか!【光の玉】!」
見事にヘイトを向けられた俺は、咄嗟に念力を使い空を飛び敵から放たれる魔法を回避する。
その隙にブレスキーが戦輪を手元に引き寄せるとそれを自分の顔の前に構え、戦輪の内側に魔法陣を展開し擬似的に炎のブレスを吐いて攻撃する。
「このポリ公は炎か!水使いを出せ!」
カンミーの一声で盗賊の1人が氷の槍を放ち応戦する。
そこで俺はレーザー銃を再び回避しながら槍の運動ベクトルを反転させ、棍棒を抱えた冒険者の背中を念力で押して加速させる。
「【機関掃射】」
銃口に魔法陣を展開させ、本来なら有り得ない速度で魔弾を乱射する。
普通の銃でも機関銃の様に弾を乱射出来るようにする魔法で辺りを雑に薙ぐと、たまらず盗賊たちが防衛体制に出てみせる。
「甘いな」
守りに身を固めたのを確認し、改めて1発の銃弾を放つ。
それに俺は空いている手で銃弾に指示を出し、弾道を捻じ曲げる。
盾や障壁を回避する様に弾丸が不自然に軌道を曲げ、盗賊の膝を撃ち抜く。
「ぎゃあっ!?」
「【排斥の網】」
締めに膝を着いたのを確認し銃を向け、斥力の網を銃から放ち敵を床に固定する。
これで1ダウンだ。
「クソっ、【ゴーレムの腕】!」
続けざまに別の盗賊が腕に土を纏い殴り掛かる。
これを咄嗟に自分の身体を念力で強引に動かし、横にスライドして回避すると床を殴り付けた衝撃で盗賊の腕から土塊が舞う。
ブレスキーが戦輪を手に回転斬りを行い数人の盗賊を薙ぎ払うと、盗賊頭のカンミーが動いた。
「手こずりやがって」
カンミーはそう言うと手を握り締める。
その手の甲からはクロスボウが矢じりを覗かせていた。
「来るぞ!」
「【斥力場】!」
そのクロスボウから空中に矢が放たれると、天井に刺さった矢を起点に魔法陣が展開され、岩石の矢が降り注ぐ。
俺は咄嗟に斥力場を展開、回避するが、他の冒険者の体力が削られて行く。
可能な限り念力で降り注ぐ矢を敵に誘導するが、物量が間に合わない。
「お、お頭ぁ!」
「ちっ、【光の螺旋】!」
盗賊の光魔法を回避し切れず、その光のビームが脇腹を抉る。
続けざまに振られる剣を回避し、脳天に銃弾をぶち込むと共に、念力で血液を無理矢理体内に押し留める。
「刑事!後ろ!」
シールドの機構で脇腹が修復されていく。
その中で冒険者のひとりが叫ぶと、刑事の後頭部に手斧が一直線に飛来していく瞬間が視界に映る。
念力でこの軌道を捻じ曲げ、明後日の方向に手斧が吹っ飛んで行くと見兼ねたカンミーが此方に憎しみの籠った眼を向け、発言する。
「あの重力使いの小僧を叩け!敵の主力はあの猿だ!」
その一声で、全方向から魔法が押し寄せ始める。
重力が効きにくい光と風の魔法だけはピンポイントで避けて、それ以外の魔法は展開しっ放しの斥力場で無理矢理凌ぐ。
「【風神拳】!」
「【誤電弾】!」
「【槍光投撃】!」
風使いが風を纏わせた拳を放ち、これを身体を捻らせるようにダイブして空中に逃げる事で回避。
続けざまに別の盗賊から投げられたスカウターをバグらせる光の玉を斥力で強引に弾き飛ばしつつ、カンミーから投げられた光の槍を無理矢理天井に自分を叩きつけるように念力を働かせ、張り付く事で避ける。
「はあああああっ!!」
ブレスキーが戦輪を振るうと、盗賊が咄嗟に剣でそれを受け止め鍔迫り合いに発展する。
この乱戦で鍔迫り合いなんかして1点に留まったらただの的だ。
咄嗟にそう判断した所で、俺は再び投げつけられた光の槍を天井で前転するようにして躱すとブレスキーの戦輪を念力で敵の方に押し込む。
スパン!といい音がすると、盗賊の胴体が斜めに一瞬分離し、すぐさまシールドの修復機能で元に戻って見せた。
「ぎゃああああっっ!?」
一瞬とはいえ身体を真っ二つに斬られた盗賊が金切り声を出すと、彼のシールドが破壊される。
すかさずそこに魔封の手錠をブレスキーが投げつけ動きを封じると同時に、カンミーが手元に剣を生成し彼女に後ろから殴り掛かろうとした。
「くそっ!」
天井に張り付いたまま銃を撃ち、剣に当てることでその軌道を逸らす。
すると歯ぎしりをしたカンミーが剣を此方に向け、剣から矢を放った。
「えっ!?」
咄嗟のことで斥力場の出力を抑えていたために、攻撃を逸らせず自分の足首に矢が刺さる。
痛みで顔が勝手に歪むが、その中でカンミーの剣を見てみればその剣には先程のクロスボウが備え付けられていた。
「可変型武器か!」
クロスボウの機構を備えた剣だ。
カンミーは再びクロスボウを剣に変形させると、その手で冒険者の1人を袈裟斬りにして攻撃をし、そいつのシールドを破壊してみせた。
可変型武器は見た目では分かりにくいことがしばしばある。
クロスボウソードなんて初見殺しもいい所だ。
「ちょっ、可変型ですって……!?」
「ははっ、こいつは昔武器屋から盗んできたものだが、なかなか使い勝手が良くてな!」
カンミーが矢を放ちそれが床に着弾すると、魔法陣が広がり火柱が立ち上がる。
ああそうだ、火属性は重力に弱いんだわ。
閃いた。
「自滅しろ、カンミー!」
別の冒険者がシールドをそれによって破壊され戦闘不能になる中、俺は念力を全開にしその火柱を真横に折り曲げて攻撃。
90度折り曲がった火柱を敵に向け、更に蛇口をひねるように火柱を回して擬似的に火の大砲で辺りを薙ぎ払ってみせると、ガラスの割れるような音が辺りに連続して響く。
「ぐあああっ!」
「熱ううううい!!」
「なっ……!?」
カンミーがハッとした様子で慌てて魔法をキャンセル。しかし後の祭りだ。
雑魚共は今ので一掃する事が出来た。
「終わりよ、カンミー。神妙にしなさい」
「くっ……何だこの重力使いは……無茶苦茶だ……」
味方が自分の攻撃によって全滅した事に唖然として膝を付くと、カンミーは力なさげにそう呟いた。
「いつつ……ブレスキーさん、これでオッケーですかね」
「ええ。ソンツァイ・カンミー、貴方を公務執行妨害の現行犯で逮捕する」
足に刺さったままの矢を念力で引き抜きつつ尋ねてみれば、ブレスキー刑事が魔封の手錠をカンミーに嵌めて見せた。
任務完了だ。




