表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

さよならライオンさん~もふもふ?いえ、カチコチです~

作者: 茅野

 満月の日。


 「いよいよ今日で皆とはお別れか」


 昼間は子供たちの歓声であふれるここも夜は静寂であふれている。

 そんなここで、ライオンさんは仲間へと別れの挨拶を切り出した。


 「「……」」

 「行かないでくだせぇ、ライオンの兄貴!俺はまだ納得できません、なんで兄貴がここを去らないといけないんだ!兄貴は俺たちの中でも一番子供に人気があるってのに」


 他の物達が押し黙る中、パンダさんだけが叫んだ。


 「仕方のないこと、これも時代の流れだ。ワシ達の仕事は子供たちを喜ばせる事。ワシのような年寄りは子供を傷つけてしまうおそれがある。特にワシは古いからな、もう齢なのだよ」

 

 パンダさんを宥めるように、ボロボロになった体に哀愁を漂わせながら、ライオンさんは語る。

 雨の日も風の日も子供がいないときでも彼らはここに居続けた。

 だからこそ身体は摩耗し、直しても直しても、限界の時がやってきた。

 中でもライオンさんはここ40年のベテランだ。ライオンさんを生んだ会社の方が先に亡くなっているので、これでも長生きしたほうだろう。


 「あとは……子供達の笑顔はお前達に託す。みんなに笑顔を」

 「兄貴……」



 ある日。


 「あっ、ライオンさんがない!」


 一番乗りで公園にやってきた子供は、ライオンさんがいないことに気づき、声を出した。

 目の前にあるのは、ブタさんとパンダさんとゾウさんだけ。いつも先を競って取り合いをしていたライオンさんだけがない。

 仕方なく子供は塗装が真新しくなったパンダさんへと跨り遊んでいく。


 『兄貴、今日も子供が兄貴のことを探してましたぜ。俺もいつか、兄貴みたいに求められるような遊具になれるのかな……いや、なってみせる。超えてみせる。俺はパンダだけど、兄貴にみたいな立派なライオン以上に』


 楽しそうに遊ぶ子供を乗せ、体の下に取り付けられたバネを大きく揺らしながら、パンダさんは去って行ったライオンさんへと誓っていった。


 あなたも昔、ライオンさんたちと遊んだことがあったのではないだろうか?

 少子化や安全基準によって年々とライオンさんを始め数々の遊具が引退をしていっている。

 暇があれば昔遊んだ公園に行ってみてはどうだろう?きっと様変わりをしていて驚くことになる。あるのはベンチだけ、公園という名の憩いの場になってるだけだ。

 でも安心してほしい。もうそこにはライオンさんたちの姿形はないけれど、今も私たちの頭の中へと楽しい思い出として残ってくれているのだから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ