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おはようございます、そしておやすみなさい。

目が覚めたとき、わたしは、私だった。


意味がわからない。うん、何度考えても意味がわからない。

一人称が違うけど、この場に二人いるとかそういうことではない。肉体はひとつしかない。それでも、確かにわたしも、私もいる。

「え、いや、どういうことだよ!?」

頭の中はパニック状態だ。いや、状況を整理したらもっとわからなくなった。

まてまて、状況を整理するのと同時に、情報を整理しなきゃだめだ。


私はレイフェル・スアートリア。スアートリア家の一人娘で優しいお母様と少し厳しいお父様の三人家族。

年齢は13歳。スアートリアは公爵家なので、私は公爵令嬢ということになる。名前からわかる通り、日本人ではないのは確実。なんなら、部屋の内装だって外国っぽいので、そもそも日本じゃないっぽい。


ここまではいい。いろいろ気になる点はあるけど、それよりも大きな問題がある。そう、わたしのことだ。


わたしは望月(もちづき)咲良(さら)、日本人。家族構成は同じ三人家族。ゲーム会社に勤めていて、所属は乙女ゲーム専門の役職はプランナー。あ、プランナーっていうのはディレクターの補佐みたいなもの。

享年23歳。フラフラしながら帰宅していて、横断歩道で信号待ちしてたときにハンドル操作をミスったらしい車に轢かれて、そのまま…。


私は、わたしで。わたしは私で。何が言いたいかっていうと、(レイフェル)にはわたし(咲良)の記憶があるってことだ。というか、私の体をわたしが動かしているって感じか。

「(おーん、マジか。二重人格とかそういうのですかね…)」

そしてさらに問題なのは、明らかに日本ではないここが、わたしの携わったゲーム『ストレンジ・アトラクティブ』の世界っぽいってこと。


『ストレンジ・アトラクティブ』異世界魔法学園もの。通称、ストアト。世界観は、ファンタジー空間、魔法と剣で戦う世界。剣は練習すれば身につくが、一部の魔法は生まれ持った才能がないと扱えない。人間社会においては、階級が存在し、下の階級の人間はまともな教育すら受けられない。魔法生物なんかもでてくる。喋る猫とか笑うお花とか。

いや、まて。今はストアトの情報を並べる場合じゃない。状況と情報を整理したいだけなのだ、詳しく考えなくたって大丈夫。


さてさて、ここまで整理してみてわかったことがひとつ。これは現実ではないということが判明した。

おそらくこれは夢なのだ。たぶん、わたしが帰宅しようとしたあたりから夢なんじゃないだろうか。きっとデスクに突っ伏して寝ているに違いない。それもストアトのことを考えながら寝ちゃったんだろう。それでこんな夢を見ているんだ。そうでなければおかしい、ゲームの中にトリップするとか、そんなことが絶対に起こるはずがない。

考えれば、私になったのは今日(?)の朝なわけだし、案外寝てみたら起きるかもしれない。夢の世界で寝るっていうのもちょっと不思議な体験だ。

「(のんきですねって?そんなわけがあるか、現実逃避じゃ。…いまわたしは誰につっこんだんだ?)」


これでいつもだったら、ちょっと夢の中を楽しんじゃお、とか思うわけだが、今回ばかりはそういうわけにはいかない。寝てしまったわたしが馬鹿なのだけれど、明日の出社時刻までに、バグ発生状況の再現やレポートをまとめる必要がある。現状はβテストが終わったところで、そこで信じられないほど厄介なバグが発見された。それが、ほぼ全てのルートにおいて進行不能になるというもの。

いや、もう。βテストを行った全てのソフトで同じ場所で同じフリーズをするとか、どういうことなのって感じ。幸いにもそれ以外のバグは軽度なものばかりで、修正箇所は少なそうだった。


「(あー、いやいや。こんなこと考えている場合じゃない、起きなきゃ)」

さて、どうやったら起きられるだろうか。さっきも考えたけど、寝てみる?といっても、ベッドにもぐるだけになりそうだ。起きたばかりだから、眠くない。なので、あとで試そう。

次。死んでみる、とか。たまに夢の世界で死んだと同時に目がさめたとか聞くし。いやでも、夢の中じゃわたし(咲良)が死んだ状態で(レイフェル)になったみたいだし、これで死んだらさらに面倒なことになりそう、却下。

どうしよう、なんかほかにさっと試せていい案はないだろうか。案外、誰かが起こしてくれるかも。でも朝に起こされたらどうしよう。やっぱり自力で起きるしかないか。


よし、寝よう!起きたら(レイフェル)わたし(咲良)になってる、はず!

そうじゃなかったら、あとはゲームクリアするまでとか、そんなことしか考えられないよ!

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