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悪魔)聖女を騙して魂を奪おうと思ったら失敗して聖女の願いを叶える為に全力を尽くさねばならない契約を結ぶ羽目になった。お陰で最強最悪の悪魔が人助けなんてやる羽目になってしまった。  作者: 黒銘菓
ここから俺と娘の人生は始まった。この娘は俺に魂を奪われる運命を確定し、俺はと言えば………何も言うまい。ここで言うまでも無く、全て書き記されているのだから。
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間抜けな事に契約に縛られることになってしまっているが、俺は最強で最凶で最恐な悪魔だ。覚えておいてくれ。悪魔さんとの約束だ。いいか。忘れないでくれ。

いいか。タイトルを忘れずに居てくれ。だから俺がその場で最適な魔法をアレンジしてあろうことか大規模で最適解を実行することに疑問を持ってはいけない。

 俺は強大な悪魔でドジっ子属性を偶に持っているだけなんだ。

 基本的に俺は泣く子がショック死するような恐るべき存在だ。

 『悪魔のディアベル

 俺の使う魔法の1つ。効果は、「音の届く範囲内のものを使用者のイメージの形に作り変える。」だ。

本来の使用目的は、街1つを化け物の巣窟に変えて住人が慌てふためくのを楽しむ&討伐隊と交戦させて血を流させる&争いの後に化け物を人間に戻してあげて討伐隊の絶望する姿を見て楽しむ。という素敵アイテムなのだが、今回は治癒を求められた。

しかし、悪魔の業に治すなんて元々は無い。

そこで俺は考えた。この悪魔の鐘を魔改造すればいいんだ。と。

この鐘は作り変えるもの。ならば怪我や出血を作り変えて元の状態に戻せばいい。

聖女に「治したい」というイメージを想像させ、俺がそれを臓器や皮膚、血を作り出して具体的に治すという形にする。

それらのイメージを鐘に乗せて鳴らせば効果は出るだろう。




 「凄い。皆さんの怪我が治っていきます。」

 空から見える人々の動きが変った。

 先程まで力無く歩いていた者の歩みに力が溢れて来た。

 体が動かずに倒れていた老人も、血を流して倒れていた若者も、足を切り落とされていた女の人も、立ち上がり、駆けていった。

 「有り難う御座います悪魔様。助かりました。」

 感謝を述べる。が、

 「娘。馬鹿を言うな。良く見ろ。何処が助かっているんだ?」

 そういって周りを見渡すと、力強く歩いていた者達の足取りがまたしてもおぼつかなくなってきた。何故?怪我は無い筈なのに。

 「馬鹿。火事の煙でやられてんだ。それに見ろ、幾ら怪我を直しても体が瓦礫に埋もれて出れないやつらも居るだろうが。」

 悪魔様の指摘通り、街のあちこちで煙が上がり、崩れた建物や角材に挟まれた人々がいる。まだまだたくさんの苦しんでいる人が残っていた。

 「では助けに行きませんと。」

 「待て、一人一人助けてたんじゃラチが明かねぇ。魔法でカタ着けるぞ。」

 「でもどうやって?火は水の魔法で消せても瓦礫はどうするのでしょう?水で流そうにも皆さんごと流しかねません。」

 娘の言う事ももっともだ。瓦礫をどうにかしようにもこの規模だ。一々一人ずつ助けるなんて芸当は無理だ。

かと言って先に火の方をノアの箱舟方式で洗い流そうにもそれをやったら人間も無事じゃすまない。かといって小規模な水で消そうとして消せる火じゃない。

 ならば話は簡単だ。

 「先に瓦礫を一気に消し飛ばす。燃えるモノが無ければ火は着かない。という訳で娘。お前も協力しろ。」

 「は…はい。解りました。では何をすればいいですか?」

 「お前がやるべきはイメージだ。瓦礫や角材が塵芥になって崩れる様を思い浮かべろ。それを魔法にする。」

 「はい。解りました。」

 直ぐに目を瞑り、イメージする。同期した俺の中にイメージが広がってそれを組み立てる。

 「よし出来た!唱えろ!」

 「解りました。」

 「「大地駆け 雲を運びし風に命ずる 街を駆けて命無きものの一切を記憶より滅せよ」」

 呪文と共に目の前に竜巻が生まれた。

 『風魔法:忘却の風』

 竜巻が街を駆け巡る。地上に散らばる瓦礫が風に触れた途端に風化して消えていく。

 人々を押し潰す瓦礫が消えていき、燃やす物の無くなった火も消えていく。不思議と人だけを残して瓦礫が無くなっていく。

 「本来は人間諸共街を消し飛ばす魔法なんだがな。」

 目の前の不思議な光景に気を取られているうちに人々を押し潰していた瓦礫と火が煙のように消えて行った。

 「有り難う御座います。」

 眼下で人々が逃げていくのが見える。良かった。後は…

 パキン!

 後ろから何かがぶつかる音が聞こえた。

 「何が?」

 「危ねぇ。全く、後はこいつ等を片付けるだけか。」

 悪魔様が呟く。後ろを振り返ると何かが飛んできた。

 パキン!

 矢である。矢が私目掛けて飛んできていたのだ。それが目の前で何かに弾かれるようにして火花を散らせて落ちていく。

 「こんなもんで俺のバリアは越えられねぇぜ。」

 眼下の矢を射かけた方向を見ると、そこには武装した男たちが固まって私目掛けて殺意を向けていた。

 「アレは…」

 「まず間違いなくここを襲ったヤツらだろうぜ。どうすんだ?ほっときゃ街の奴等は皆殺しか奴隷だ。」

 悪魔様は囁くように私に問いかける。私は人を殺したくないし、彼にも殺しは許しはしない。

 「追い返して下さい。多少傷付けても良いですが、決して殺さないように、手足を捥ぐ様な非道な事をしないで下さい。出来たら二度とここに来ないようにしてあげてください。」

 釘を刺されてしまった。しかも無理難題を吹っ掛けて来た。まぁいい。それならそれで責め方を変えるまでだ。

 「OK。娘。お前も手伝えよ。」

 「解りました。」

 悪魔と聖女の奇妙な組み合わせの初陣が始まった。


 「殺さずに挙句二度と来させるな」相当難易度の高い無茶苦茶を平然と言ってのけるこの娘。これは俺の圧倒的な力を信じているからだろうか?はたまた地で無理難題を吹っ掛けるようなサディストなのだろうか?

 前者であることを俺は心の底から渇望している。後者であった場合。俺は前途多難でそれは不可避な問題だろう。



PS:作者から代理で言うよう言われた。「批評やコメント、その他諸々あったら積極的に言って欲しい。」だそうだ。 

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