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悪魔)聖女を騙して魂を奪おうと思ったら失敗して聖女の願いを叶える為に全力を尽くさねばならない契約を結ぶ羽目になった。お陰で最強最悪の悪魔が人助けなんてやる羽目になってしまった。  作者: 黒銘菓
ここから俺と娘の人生は始まった。この娘は俺に魂を奪われる運命を確定し、俺はと言えば………何も言うまい。ここで言うまでも無く、全て書き記されているのだから。
2/17

この時まで、俺は最強最悪の悪魔として振る舞い、悪魔らしく無垢な娘を騙し、その魂を奪えると思っていた。そう、思っていたんだ。

そう、ここが運命の分かれ道だった。もし、この時、契約書の文章の順番が違ければ、契約をサインで行っていれば、署名欄を作っておけば。俺は今、別の道を歩んでいたかもしれないのだ。

「で?」

 「で?と言いますと?」

 「魔方陣使って悪魔呼んだんだ。お前にはやりたいことが有るんだろう?」

 そう、私が魔方陣を使って行っていたことは悪魔召喚の儀でした。

 神に仕える者がその様な邪な行いをすることは許せないでしょう。しかし、私にも理由があるのです。

 「その事ですか。それでは単刀直入にお願いします。悪魔様。どうか私に人を救う力を。巨大な力をお与えください。」

 私は跪き、悪魔様に願いました。

 「良いぜ。なら契約だ。」

 非常にアッサリ同意をしてくれた。当然だろう。

 「お前の望みを1つ。叶えてやろう。その代わり。叶えた後にお前の魂を貰う。」

 それが彼(?)の目的なのだから。

 「解っています。約束を叶えてくれるのでしたらそれで構いません。ですから私に力を……」

 「………。ならこの契約書に署名しな。安心しろ。悪魔は決して契約を破らない。」

 悪魔は何もない手の中から紙を取り出した。そこには未知の文字でびっしりと何かが書かれていた。

「えー……っと…。」

 困惑する私の表情から察したのか悪魔は解説する。

 「契約内容:私、悪魔ノーデスカリア=ディアベルは本契約に同意した者に自身の力を貸し、その者の願いを叶える。叶える内容は…」

 言ってみろ。と促されて私は言う。

 「私にお力を貸して下さい。貴方の持つ、全てを蹂躙する力を貸して下さい。私に願いを叶える力をお与えください。それと、悪魔様には力以外にも私の願いを叶えるべく全力で御力添えをして頂きたいのです。私の願いが叶った暁には悪魔様にこの魂。捧げます。」

 その言葉に反応するように紙に文字が刻まれていく。

 「OK。たかが人間の小娘一人の命が尽きるまで位付き合ってやろう。ただし、契約が全うされた時。俺はお前の魂を貰う。最後の確認だ。それでいいな?」

 さらに文字が刻まれていく。

 「構いません。」

 刻まれていく文字。

 「よし、じゃぁ」

 最後に指で紙をなぞると何かの文字を契約書の一番下の方に浮き上がらせた。

 「これで良し。じゃぁ血を証としてここに。」

 そういって契約書の一番下を指差した。

 指を紙に近付ける。

 これに契約した瞬間。私は神から見放され、悪魔と契約した魔女となる。後戻りはできない。もう二度あの穏やかだった日に戻ることは無い。死後も神の元へは行かず、この悪魔の腹の中で永劫苦しみ続ける。覚悟をしていたが、矢張り怖いものは怖い。

 しかし、私がここで退けば人々は苦しみ、救われない。

 「解りました。それでは。お願いします。」

 指を横に一閃する。鮮血が契約書を赤く染めた。

 「契約完了。それでは契約を履行しよう。」

 悪魔様はそう言っておもむろに私に近付くと。私の胸に手を入れた。

 触れたのではなく、手を入れた。体の中に何かが入り込んでくる感覚がある。

 「早速だが、お前の魂を貰うぜ。」

 ドクン

 鼓動が速く、強くなる。体中に電気が走り、今まで感じたことの無い痛みが全身の悉くを暴れまわっていった。

 「アァ、アァ。アァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアア!!」

 何?何が起こっているの?

 「簡単さ。お前の魂をいただいているからだ。そりゃ、魂を体から引き抜けば痛いわな。」

 魂?でも私は未だ願いを叶えてもらってない。

 「叶えてもらってないのに何で?って顔してんな。契約書にあったろ?契約にサインした後十分の間は魂を問答無用で取られても文句は言わないってな。」

 悪意のある微笑みでこちらを見る悪魔。そんなことは書かれていなかった筈。

 「最後に書き足した文にちゃあんと書いてあったぜ?契約書はちゃんと見なくちゃなぁ。」

 笑いながら苦痛で悶える私を見て楽しんでいるような、邪悪な笑みを浮かべていた。

 「アアアァァア!責ェエアアアアアアア!責めエテエエエエ!上の人達だけでエアアアアも救って、救ってクダサイ!」

 息絶えそうになりつつ最後の慈悲を願う。

 「ィヤだよ。じゃあな。次がありゃ、契約は確認するんだなぁ。」

 「そ、そんなぁ…」

 ごめんなさい。ビアードおじさま、ステラおばさま、シスターベルネ、村の子どもたち…。私は何もあなた達のお役に立たないまま死んでしまうことを。力になりたかった。

 そして主よ。愚かなこの私の行動を御許し下さい。

 さようなら。皆さん。

 悪魔が私の胸から手を抜き取っていく。意識が遠くなっていった。








『ドゲリャァァマッッピアァァ!!!』

奇声が地下に轟いた。

この時までは俺は最強最悪の悪魔ノーデスカリア=ディアベルとしての尊厳を持ち、振る舞えていた。そして悪魔に相応しく、下衆で非道で外道で醜悪な手法で無垢なる魂を奪えると思っていたんだ。

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