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悪魔)聖女を騙して魂を奪おうと思ったら失敗して聖女の願いを叶える為に全力を尽くさねばならない契約を結ぶ羽目になった。お陰で最強最悪の悪魔が人助けなんてやる羽目になってしまった。  作者: 黒銘菓
ここから俺と娘の人生は始まった。この娘は俺に魂を奪われる運命を確定し、俺はと言えば………何も言うまい。ここで言うまでも無く、全て書き記されているのだから。
1/17

そう、全てはここから始まってしまった。この時。もし俺が召喚されなければ悲劇は決して起きなかった。

 この時、俺は魂を渇望していた訳では無かった。ただ、暇つぶしに絶望を与えようとしていたのだ。

 この後自分が絶望に打ちひしがれるとも知らずに。

寺院の地下室にて、それは行われようとしていた。

 暗い部屋の中で、蝋燭の明かりに照らされる本、本、本。

 羊の血で書かれ、くちゃくちゃに丸められた失敗作の魔方陣。

雑多な物で溢れている中、誰も見ていない中で、二つのものが異様に目を惹いていた。

1つは魔方陣。赤い血で書かれた円に沿って複雑な記号や文字がびっしりと書かれていた。それが何を示しているのかは解らないが、とても嫌な気分がするものであった。

二つ目は少女。所々に焦げ跡の有る服を身に纏い、目の前の魔方陣に向けて聖女は目を閉じ、祈るように呪文を唱えていた。

「おいでませ・おいでませ・おいでませ 私は願います 邪なる神に願い奉ります」

それに呼応するかのように目の前の魔方陣は怪しく光を放ち始めた。

「乙女の血の門は開かれました 供物の命も御座います」

光は地下室を照らし、それでいて太陽のような安らぎは無く、祈る少女に不安を抱かせた。

「邪なる神に願い奉ります そのお姿と力を今一時 卑しい私にお貸しください」

光は力を増していき、部屋は嫌悪の色の光で眩く包まれていった。

 最後に呪文を唱え終え、懐から短刀を取り出すと自分の指の先端を切りつけ、滴る血を魔方陣に垂らした。

 ポタ

 その血に反応するかのように、光が止まった。


「……え?」

 さっき迄の光や不気味さが無くなり静かになった。

 そう思っていたら。

 カッ

 「きゃ」

 さっき迄とは比べられない程の強い光が周囲に撒き散らされた。

 今度は背筋が凍りそうな光。眩い。眩いのにその光は周囲を照らすのではなくすべてを黒く飲み込みそうな、そんな光であった。

光が集束し、少女が目を開けると、目の前の魔方陣に誰かが、否、何かが居た。

誰か、ではなく何か。

それは人間にしてはあまりにも異形じみていた。

そして、この世のものとは思い難い禍々しい雰囲気を纏っていた。

「あなたが…」

少女はそれに問いかけようとした。しかしそれを何かが遮ってこう言った。

「オマエがオレを呼んだのか?。。。聖職者か?」

禍々しい何かはそう言った。不思議そうな、未知のものを尋ねるかのようにそう訊いた。

「はい。私があなたを呼んだものです。」


この時すぐに帰れば、あるいは惨劇は起こらなかっただろう。否、もう遅い。覆水盆に返らず。後悔先に立たず。手遅れなのだ。この時の事をこうやって思い返す他に俺には何も出来ない。ただ、契約を全うするだけだ。

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