表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらのままならない世界  作者: いない
少年と世界
50/72

40-1

 カロンが魔術を作るまでの間、しばらくは作戦の穴埋めに俺たちは時間を費やした。というか、まだまだ穴だらけの作戦だ。

 目下一番の穴は。


「それで、どういう形で非国民を受け入れさせるか、だが」


 議長をリオンにして、俺たちはうちで話し合いをしていた。内密な話になる。城や学園を借りての会議はどうしても誰かに聞かれるのではという懸念が出て来るので、会議は基本ここで行うこととなった。

 リオンがここに来ることには反対の声も出たそうだが、リオン自身が押し切ったのと、リオンのお兄さんが後押ししてくれたおかげで来ることができた。一応名目としては、未開の地の調査ということになっている。もしかすると、お兄さんの興味が優先されたのかもしれない。

 まあうまくいっているのだから、問題ない。提起された議題に頭をひねる。


「案としては、リオンの大叔母様に手伝ってもらって国で受け入れてもらうか、非国民を魔物から守るための施設を作るか、だったかしら?」

「前者はオースグラットではいいかもしれないが、他国では通用しないだろうな」

「役者が居ないもんな」


 初めに出した案だが、この国ではいいが、他国ではバーさんの役が居ないため通用しないだろう。俺たちは何も、オースグラットだけ変えようとして世界を巻き込む気で居るわけではないのだ。少なくとも近隣諸国はどうにかしたい。

 全世界共通で非国民制度が実施されているわけではなく、なんでもこのあたりの同盟国でのみの制度だとは、先日リオンから聞いたことだった。城で調べてくれたらしい。だから、範囲はこの周辺の国だけだ。

 一応、ないとは思うがこちらの意図がばれては困るので国交のある、もう少し外の国まで巻き込ませてもらうが。


「神様に神託をしてもらって、信心深い神殿で非国民を受け入れてもらうってのも、出来過ぎてる気がするしなあ」

「世界中で同じ神託が下るなど前例にないからね。それだと、魔王の出現だけでは釣合わなくなる。それこそ本当に世界が滅びるくらいしないと」

「それなら、もう一つの選択肢しか今のところはないかしら」


 聖女を擁立して施設を作る、か。二人には俺の言う聖女のイメージがなかったので、説明しつつ、考える。ちなみに聖女に関するイメージは、俺もいまいちよくわからずに使った言葉なので「力のある慈悲深い乙女」という適当なものになった。

 しかし、言ったはいいが、施設では足りないとすぐに気付いた。何せオースグラットの王都だけでもあのスラム街に居ただけの人数が居るのだ。本当に国でも作らなければ間に合わない。

 このあたりを使えばいいとは以前出た意見だが、魔力の調整を考えるとやっぱり、人が住むには向かない。あと、カロンの唯一自由にできるこの場所を下手に使って非国民や、果ては人類を滅ぼされても困る。

 俺がここに住んでいたとさえ知られていなければ、魔王城を立ててもいいような場所だし、冷静に考えて適した場所にはならないだろう。


「だとすると、聖女はリリアかしら」

「へ?」


 代案へ思考を移していた俺は、名前を挙げられて驚いた。聖女が、俺? アンネを見るが、揶揄ったりふざけているわけではなさそうだ。


「力のある慈悲深い乙女、でしょう」

「アンネ。それは」


 俺を男だとわかって言ってるんだよな? いや、まあ、見た目だけ言えば、あと力のあるといえば俺なのかもしれないけれど。


「さすがに聖女と魔女を兼任はできないよ」


 魔女という指南役が俺にはあるのだ。これ以上の兼ね役は無理があるだろう。そして魔女に対して実はあまり「いいヤツ」のイメージのない俺としては、聖女と魔女は兼ねられるものではないという固定観念があった。


「いや。そうでもないだろう」


 しかし、元より両方の言葉にイメージのなかった二人は違うようだ。


「魔王を倒す手立てがリリアにしかないとわかれば、どこもリリアを丁重に扱わざるをえなくなる。そして、リリアはオースグラットで非国民として蔑視され、非国民の現状を嘆いているという事実がある」


 実績と言い換えてもいいだろう。それは、俺こと聖女をすることになる魔女が声を上げて改革してくれと頼んでもおかしくないことだ。

 というようなことをリオンに力説されては、俺はそうですねと頷くしかなかった。確かに、一番説得力があって役割を増やさなくていいのはそれだ。

 聖女のイメージはアンネの方があっていると俺は思うんだけど。

 まあ、一応その計画でいくか。二人が納得しているのに代案もない俺が否定することはできないで、結局俺は魔女と言う名の聖女兼指南役になることに決まった。

 ちなみに先代魔女で魔王になるカロンに言えば「茶番だなあ」としみじみ感想を言われた。うるせえ。




「ところで、勇者はどうする?」


 そして、次の問題は、俺の提示したこの国には存在しない「勇者」の確立の話だ。

 必要な役のうちで決まっているのは「魔王」と「魔女」の二つ。つまりカロンと俺。そして決まっていないのが「勇者」だ。この勇者は代替わりで構わないから、普通の人間から選ぶべきだろう。現世のファンタジーも勇者はだいたい代替わり制だった。

 重要な役割なのでここまで後回しにするようなものではなかったのだが、俺も別に何も考えず後回しにしていたわけだはない。「勇者」も俺の中では決まっていた。

 主人公の器を持っている、そこそこ強い力の持ち主。


「ミグリオに頼もうと思ってる」


 次代は構わないが、最初は全部ヤラセの方が何かと都合がいい。俺の言うことを信じて、味方で居てくれる、印象が主人公っぽい奴。そんなもの一人しか思い浮かばない。そもそも、人間の知り合いが少ないのも理由の一つではあるだろうけれど。ちょうど適任だったのだから問題はあるまい。

 求心力や認知度なども考えればリオンでもいいが、一国の王子である以上適任ではない。どこかの国に力が集まっては困るとは最初から言っていることだ。

 ミグリオもオースグラットの国民だが、田舎の少年だ。しかも国境に近い村の。プレゼンをすれば二人も納得してくれた。


「学園でも時々名前を耳にするわよ、彼」

「そうなのか?」

「ああ、人の良さもあって他人を惹きつけるようだよ。魔術も噂になっていたな」

「呪文なしで魔術を使うっていう話でしょう。ただの噂だと思っていたけれど、リリアの仕込みだったのね」

「うん。そうだな」


 二人からの噂話に苦笑がこぼれるが、それは好都合だ。

 田舎から出ていく少年に親切にされた魔女が、その少年に力を見出し封印の魔術を与え世界の命運を任せる。どこかで見たようなシンプルなストーリーでわかりやすい。あながち嘘でもないしな。


「しかし、彼が引き受けてくれるかが問題だな」

「ミグリオならやってくれると思うけどな」


 あの性格だ。それに俺の味方であるとも言ってくれた。……夢があって学園に入ったし、そのために表向きは下手に俺を助けられない、つまり国に反することができないとも言っていたけれど。そのあたりは懸念すべき点だろうが、もし、たとえ引き受けてくれず他に勇者を立てなければならなくなったとしても、他言はしないだろうし。打診して損はないはずだ。

 本当は、ベストは非国民から適当な魔術師を引っ張りだすことだったんだが、さすがに非国民の魔術師などホイホイ現れるものじゃない。世界中を探し回るのは時間がかかるだろうし、赤の他人をスカウトしてうまくいくかが不安になる。

 ああ。こういう妥協がたくさんあるから杜撰な計画になるのか。

 そうは言っても妥協していくしかないのだから仕方ない。ミグリオの了承を得るのは発案者だし、そもそも俺だけがミグリオの知り合いだということで俺に一任される。二人はミグリオにとっては先輩だし、殊更リオンなんて王子様なので、ここで出てもらうわけにはいかない。


「ということで、手伝ってくれないか」


 決まれば行動は早くて、その次の日に俺は学園に忍び込み、ミグリオの寝泊まりしている寮に突撃し、ミグリオが混乱している間にかいつまんだ説明をして、選択を迫った。

 ミグリオに断られれば新しい勇者探しから始めなければならないし、そうなると計画が数歩下がることになるから先に協力を取り付けるのは必須だ。

 アンネとリオンには小出しに話したことを一気に伝えたことでミグリオはかなり混乱していたけれど、俺のへたくそな説明を聞いたのち、ミグリオが出した答えは「時間をくれ」ということだった。

 二つ返事では了承できないことをお願いしている自覚はあるので、その日は一旦帰ることになった。礼の文通魔術具を渡して、答えが決まったら呼び出してもらうようにお願いする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ