1-6 反撃開始
我々は闇夜を駆けた。逮捕者が支部を爆破して逃亡したのだ。どれだけ応援を出しているのか知れたものではない。
「お師匠様、前に騎士団が!右に逸れましょう!」
「分かった。」
この弟子は夜目が利く。このような場合には非常に役に立つスキルだ。
「あぁ、またいます!どうしますか。」
引き返せば、先程の兵士に発見されてしまうだろう。
「そうだな・・・ん?あのでか物はもしや・・・」
眼前に見える一際大柄の兵士。見覚えがある。多分…。一か八か、声を掛けてみるか。
「おーい、クスエド!」
ストゥーリの制止を無視して私が呼びかけると、前の大男はぐるりと振り返った。そして目を見開いた。
「やあ、久しぶりだな、白鷹!それと・・・もしかしてお前、白鷹のガキか?かわいいじゃぁねぇか!」
「な?大丈夫だったろう。」
私は、師匠を盾にして怯えている弟子に優しく言葉を掛けた。
「お、お師匠様。この方は・・・」
「こいつは、ク・・・」
「お初にお目にかかる、白鷹の娘!我が名はクスエド。王国騎士団第一師団の団長をしておる!」
「おいこら、人が話しているところに割り込むな!あと、この子は娘ではない。弟子のストゥーリだ!」
「あぁ?そうなのか。なんだ、ガハハハ。」
全く、こいつの早とちりで私がどれだけ振り回され、周囲から誤解されてきたことか知れたものではない。だがしかし、「娘」というのは良かったか。
逮捕されないことを知り、安心して元気を取り戻したストゥーリが
「ハクタカ、というのは、お師匠様のことなのですか。」
と尋ねてきた。
「ん?あぁ、そうだ。古い名だがな。」
「鋼竜討伐時の二つ名だな。」
「へえ、お師匠様って戦えるのですか。」
弟子に酷いことを言われた。ただ、先程の醜態だけを見るとそう思われるのも仕方が無い。
「あ、そうだ、このような雑談をわざわざしに来たのではない。実は斯く斯く云々でな。」
私が話してゆくうち、徐々にクスエドが怒りでわなわなと震えだした。
「何、それは本当か!」
「ああ。だから奴らをブタ箱にぶち込むのを手伝ってくれないか。」
「おう。そのまま王都まで引きずって行ってやる!」
「野郎共、行くぞ!」
大将の威勢のよい号令に「おー」とは言っているが、どこか疲れが感じられる。一日中行軍してへとへとなのだろう。憐れなり第一師団。
「うーん。それにしても、噂は本当だったのだな。」
私達一行がデヴェス邸へ馬を走らせていた最中、クスエドが呟いた。
「噂?」
「ああ、噂だ。この地域の支部長にペシスを続投させるよう斡旋している奴がいるらしくてな。」
「もしやそいつは・・・」
「デヴェスだよ。探偵さん。」
クスエドはにやっと笑った。
「それで、俺達は国内巡回のついでに確かめに来たのだ。んで今日は快速で進んできたから今日は休んで明日調査しようってことで隊を解散したのだが、丁度その時に走ってきたのがお前さんってことさ。」
それでか。どうりで兵士が私に冷たい視線を浴びせてくるわけだ。すまぬ、と私は心の内で謝った。