1-3 潜入調査
王国騎士団ラビオ支部長ペシス。こいつに良い話はない。傲慢で、村人には威圧的な態度をとる。酒屋で酒を飲むと「まずい」と言って店主に盃を投げつける。自分が行く道を塞ぐ様に病人が倒れていても、介抱しようとせず、冷笑して蹴り飛ばす。そのような人間だ。しかし、村人達の苦しみも終わりを告げようとしているらしい。被害者等が騎士団本部に提出した人事異動の嘆願書が本部で真剣に議論されているらしい。ペシスは罰が当たったのである。悪が成敗される。ああ、良き事かな。
「まあ、何にせよ、デヴェスとペシスの関係が気になるな。洗ってみるか。」
ということで、私達はデヴェス邸の中に侵入している。家人が全てで払っている時間を狙った。勿論、念には念を、お手軽便利な結界を張って他の人間からは見えないようにしている。
「お師匠様、この家、壁がありませんよ。」
ストゥーリは初めて見る建築工法に興味津々という風であった。
「この引き戸はだな、フスマというのだ。東にある地方では一般的なつくりなのだよ。」
私は得意げにそう言った。デヴェスがヤパンだったかヤーパンだったか、とにかく東にある地方の出身で、自邸も故郷の造りだと聞いていた。きっと、ストゥーリはこの珍しい建造物について質問してくるだろう。そう考えた私は、わざわざ予習してきたのであった。師匠たる者、弟子の疑問には全て応じなければならぬ。そして、多大な信頼を勝ち取るのだ。
「へえぇ、そうなのですか。お師匠様、物知りですね!」
案の定、愛弟子が感心している。フフッ。計画どおり。
「やはり、泥棒が入ったのは事実の様ですね。」
ストゥーリが探偵宜しくそう言った。
「…んあ、んん……そ、そのようだな。」
一人悦に入っていたので腑抜けた物答えをしてしまった。いかんいかん。ここはあくまでも他所の家。いくら結界がはってあるといっても、足音や引き戸を開ける動作までは隠しきれない。万一のことを考えて行動しなければ。私は気を引き締めた。
「こっちには何があるかな。」
弟子は師匠の気の緩みもお構いなしに探索を続けた。