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1-2 調査開始

 「まずは、目撃者にあって事件について詳しく聞くぞ。」

事件を調査するのだから、目撃証言を聴くことから始めるのが定石だろう。一番に尋ねるのは、村長の言っていた事件を目撃したという人間だ。

「分かりました。それはそうと、何故お師匠様は変化なさっているのですか。」

ストゥーリが怪訝と呆れをもって私を見つめている。今、私は黒のシャツに長ズボン、上から白いローブという普段着(だから白の魔術師という異名があるのだ。)から、王都でよく見かける裕福そうな中年の姿に変化している。私が事件について嗅ぎまわっているのが周知されると、犯人が警戒して隠れてしまうと思ったからだ。

「ほら、私が動いていると知られると色々面倒だろう?」

「あぁ、なるほど。そういうことですか。」

賢い弟子は、私の考えを理解してくれたようだった。

「それにしても、何故変な顔をするのだ。この姿が変か?」

「ええ、それはもう。センスの欠片もないです。」

彼女はそう言うと、さも一緒に歩きたくないという風につかつかと先へと進んでいった。

 事件の唯一の目撃者は、通り向かいに住む感じの良さそうな酒屋の女店主だった。先方はストゥーリのことを知っていたらしく、ストゥーリちゃん、と向こうから話しかけてきた。

「こんにちは、ピリスさん。この前のお薬は効きましたか。」

なるほど、客であったか。

「ええ、すぐに良くなったわ。ありがとうって白の魔術師さんにもよろしくね。」

女店主はそう言って笑った。私の薬で喜んでもらえるとは、薬剤師冥利に尽きる。

「因みにストゥーリちゃん、その方はどちら様。」

彼女は弟子の後ろでにへらとだらしなく笑っている男を不審に思っているようだった。

「私は騎士団本部から来た調査員です。デヴェスさんの事件について調査しています。お話を聞かせていただけませんか。」

私は顔を引き締めてそう告げると、彼女は何だ、という顔をして、当日の出来事を話して聞かせてくれた。

「私が店の片付けをしていた時にね、お向かいの家が妙に騒がしいなぁと思ったのよ。デヴェスさんって夜は早いから金属がじゃりじゃり音を立てているのは妙だなって。それで気にしていたのだけれど、急に女の子の悲鳴が聞こえたの。『キャー』ってね。流石に私も心配になって覗きにいったら大きな袋を抱えた男が塀を越えて逃げていくのが見えたの。家の中にお邪魔したのだけれど、相当荒らされていたわ。私は漸くさっきの大袋男が盗人だということに気がついて、それで村の騎士団に通報したの。その後のことはよく知らないけれど、ただ一つ言えることは、あの人の娘が消えたことよ。」

「消えた。」

と、私はまるで初耳だ、という風な口調で聞き返した。

「そう、消えたのよ。」

女店主は手をパチンと叩いて断言した。

「しかし、なぜ消えたと思われるのです。」

「何時もあそこの箱入り娘は夕刻に親が与えた舶来の、弦が4,5本張られた楽器を演奏するの。それが、事件があってからピタリと止んでしまって。デヴェスさんは、事件のことがショックで娘が体調を崩した。だから安静にさせているだけだ、と仰っていたけれど、お医者様が来ていた記憶はないし。妙でしょう。だから、消えてしまったと思ったの。」

 その後、私達は何人かに聞いて回った。各々の証言には微妙に差異はあったが、一つの共通点があった。事件後、頻繁に出入りしている人物が2人いるらしい。一人は王都に本社を構える保険会社の社員。デヴェスは保有する財宝に相当の保険金を掛けていた様だ。その金の運搬のために隊列を組んで3度も来たとか。もう一人は王国騎士団ラビオ支部の支部長、ペシスだという。


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