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装甲外食産業騎サイゼガスト  作者: 岡木八幡
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第1話「戦場のハンバーグ」

リハビリがてら書いて見ました。


西暦2066年…

人類は宇宙への進出を果たし、枯渇しかけた資源を求め旅立つ…それは新たな時代への幕開けであった。


しかし、本来誰の物でも無いはずの宇宙のそれらは、各国の利権争いに巻き込まれ、気づけば新たなる戦争の引き金ともなっていた。



本来は人類が皆幸せになる為に求めた筈の宇宙資源は、一部の人間の政治的思考の為だけに争われ、今では大多数の人々が日々食うものにも困り果て、怯え、恐れ、そして疲れ果てていた。



これは、大多数の人々を結果的に救う事となるとある英雄達の物語である。



『第1話 戦場のハンバーグ』


「クソったれ!もう空っぽかよ!」

湿気激しい森の中、頭部や右腕がもげ、残ったのは左腕と胴体、そして下半身だけとなった人型ロボットの狭いコクピットの中でジョバンニ・データヤッツは飲料水が入っていたペットボトルを投げ捨て悪態を付く。

「ったく…どうしたらいいんだ…」

辛うじて動作しているレーダー器具に目を移す。敵影は無し、撃たれる心配は無い。

それどころか風で揺らめく木々以外に動くものすらも無い。完全なる孤立だ。



最新鋭の装甲歩兵【メルルーサ】のパイロットに選ばれたまでは良かった。10m越えの人型ロボットのパイロット。それはエリートの証なのだから。

後は敵軍の装甲歩兵を2、3体倒して帰艦すれば十分な筈だった。当分メシには困らない金が手に入り、田舎にいる老いた母の生活も楽になる筈だった。



しかし、ここは戦場、そう上手く行くはずも無かった。



『危ない!』味方から通信が聞こえたその瞬間には、ジョバンニは敵影を見るまでも無くすさまじい衝撃と共に気絶していた。

次にジョバンニが目を覚ました時には敵も味方も居らず、大破した【メルルーサ】の中でただ一人残されていた。



今思い出しても悔いしか残らない。機体を置いて徒歩で周りを捜索しようにも自分の足が思うように動かない。そんなもどかしい状況に陥ってからかれこれ3日は経過していた。


「……救助を待つしかねぇな…」

幾度となくそう自分に言い聞かせた言葉を呟き、今後の事を考える。

水は【メルルーサ】の冷却水を飲めばなんとかなる。携帯用ろ過装置を使えば飲めない事は無いと軍で習った。

問題は食料だ。こういう時の為にカバンにはレーションが3日分入っていたがもう限界が近い。昨日から切り詰めて食べてはいるがいつ救助が来るかも分からない現状、綿で首を絞め付けるようにジワジワと死が近づいてくる。その感覚は精神的に辛く苦しい。

「……はぁ……」

ため息を付く事しか出来ない。こんな時、せめて通信くらいつながれば希望は持てるのだが…


…ピーピー

「…アラーム?レーダーに…反応?」

見間違いかもしれない、ジョバンニは確認の為にレーダーを凝視する。見間違いではない、確かに反応がある。正確なサイズは分からないがこの反応は10m超えの金属塊、間違いない、装甲歩兵だ。


まず考えた事は味方機の救援。戦場が落ち着き、自分を迎えに来たのだと思った。

次に、これは救援ではなく敵の機影なのではと考えた。

しかしそれでも問題ではない。自分の機体はもう既にボロボロだ、一目見ただけで動けないと分かるだろう。

見つかったところで下手な反抗を行わなければ捕虜として扱われる。大人しく降伏すれば故郷に帰るまでには時間はかかるが死ぬことはない。

「…助かるのか…?いや!助かったんだ俺は、ハハッ!やったぜ!」

急いで無線機を立ち上げる。長距離無線は現在使えないが、短距離の無線なら使える筈だ。

「そこの装甲歩兵!聞こえてるか!こちら連邦軍所属、ジョバンニ・データヤッツ伍長、救援を求む!SOSだ!」

『……機体反応有……ガガッ……生存…ガガガガッ…』

電波は悪いが人の声が聞こえる。しかも自分の機体に気づいている。ジョバンニはその幸運に感謝した。

「おい!聞こえるか!こちら連合軍のジョバンニ・データヤッツ伍長!聞こえたなら返事してくれ!SOSだ!当然ながらこちらに戦闘の意思はない!SOSだ!」

興奮のあまり必要以上に声を荒げてしまう。もうすぐ帰れる、いや、帰れなくてもいい、生きる事が出来る!

『……無線反応受け取った、そこには一人だけか?』

「ああ!ああそうだ!俺一人だ!早く来てくれ!もう何日も孤立しててろくに飯食べてないんだ!」

自分の言葉に反応があるというのは何と素晴らしい事なのだろうか。ジョバンニはもう助かったつもりでいた。



だが…



『…だ、そうですが…』



『くくっ…何日も…くくっ…孤立してた?』



「……?その通りだ!何日も孤立していた!」



その気持ちは、次の通信で、



『ケヒャヒャヒャヒャヒャ!!見つけたぁぁぁ~~』



その安堵の気持ちは



『丁度いい実験材料を発見したぞおおおおお!!』



狂った雄たけびと共に



『了解、進路変更します』



一瞬で消え失せた。



「な…なんだよ…おい!返事をしろ!」

無線機から反応はない。

「なんだよ…なんだよ実験材料ってよ…!?」

そういえば噂に聞いた事はある。敵対している帝国軍の中には、非人道的な手術を行い強化兵を作る実験が行われていると。しかもその実験には敵対している我々連合軍の兵士を使っていると。

「や、ヤバイ…逃げないと…」

しかしどうやって?自分が乗っている装甲歩兵【メルルーサ】は全く動く事が出来ない、では外にでるか?この足で?この森の中を?

パニックに陥る。落ち着けと呟くも何もする事は出来ない。

「な、なんだよ!なんなんだよこれ!?」

レーダーを見たら、先ほど反応した機体と思わしき反応が高速でこちらに向かって来る。

「100…50…10…装甲歩兵のスピードじゃ…ひぃっ!」

『みぃ〜つけたぁ〜!!』

気づけば反応は自分の目の前になっていた。



ズウウウウウン………



「ひ、ひいいいっ!?な、なんだよ!?こ、こ、こ、こんなでけぇのが!?」

半狂乱になりながら叫ぶ。

通常、装甲歩兵というのは10m前後の人型ロボットの事を指す。装備によりサイズの大小は変わるが、基本的にその定義は変わらない。

しかし、ジョバンニの目の前に出てきたそれは、かれの定義からは大きく外れていた。

高さ自体は他の装甲歩兵と同じく約10m程の大きさではあった。しかし、背中についているバックパックが異様な大きさだったのだ。

「ま…まさか…あの中に…人間を…詰め…?」

装甲歩兵が2台は入るであろう程の巨大なコンテナを背負うその様は、彼の恐怖を後押しした。

『さあ!さあそこの実験動物!開けろ!開けるのだぁ!』

「ひっ!?ひいいいいいっ!?」

謎の巨大装甲歩兵はジョバンニのコクピットを強引に掴みあげる。

「(あ、開けたら捕まる!死ぬ!?)」

ジョバンニはコクピットの隅で頭を抱え震えるしかなかった。

『教授、その通信では絶対開けないと思うのですが…』

『ここでは『店長』と呼べと言っておるだろうがマジマ!』

外部スピーカーからだと思われる音声がジョバンニの耳に入ってくる。二人乗りの機体で、片方は教授と呼ばれていた。これはもう確実だ。俺は実験台にされてしまうんだ。

『了解『店長』。で、どうしますか?』

『こういう時の為に君を雇ったつもりだったんだがなぁ!マジマくぅん!?』

『…了解』

次の瞬間、謎の機体は徐に右腕を振り上げ、コクピットの隙間にナイフを突き立てる。

そのままテコの原理で牡蠣の殻を剥がす様にコクピットを無理やりこじ空ける。

「あっ…ああっ…」

『メルルーサ』のコクピットが丸裸にされる。

それを確認したのか、謎の装甲歩兵のコクピットも開く。

そこには、パイロットスーツを着た鋭い目つきの青年と、戦場に似つかわしくない全身白衣の青年が載っていた。

「ターゲット、捕捉。『店長』。メニューは」

「クカカカカカッ!?決まっておろう!挽肉だぁマジマぁ!」

「了解。オートミールコード(ミンチ肉)準備します」

マジマと呼ばれる男が店長と呼ばれる男の命令を受け、謎の機体のコクピットから降りる。

「…挽肉って…なんの事だよ…何のことだよ!!!」

ジョバンニは、これから起こるであろう事を想像し怯え震える。

自分がひき肉になるのか、それとも何かの隠語なのか、少なくとも自分の命は彼らの手のひらの上だという事は理解した。


「くかかっ…きひゃひゃ…そぉだ…その疲れきった目!怯えきった目つき…くくくっ…実験しがいがあると言うものだ!マジマァ!こっちは準備完了だぁ!お前も準備はできたかぁかぁ!?」

『店長』と呼ばれた白衣の男が叫ぶ。

「はっ、準備完了しました」

マジマと呼ばれた男が返事をする。

「きひゃひゃ…いいじゃないかマジマァ…ではぁ!この挽肉を持って実験開始だぁぁぁぁっ!」

「任務了解、セイジロウ・マジマ。実験に移行します」

マジマと名乗るその男は店長と呼ばれる男から何かを受け取りジョバンニへと近づく。

実験開始、その言葉を聞きジョバンニはより強く目を見開き叫ぶ。


「や、やだ!やだよかーちゃん…!俺、俺は帰りてぇよぉ!実験なんてされたくねぇよぅ!ああっ…く、くるなよおおおお!!!」

腰にかけていた非常用の銃を取り出し、セイジロウと名乗る男に発砲する。

一発、二発、三発、四発…

「あ、ああ…あああ…」

しかし、マジマと名乗る男はその銃撃を全て紙一重で躱す。

「…諦めろ…貴様は選ばれたのだ…このサイゼガストの起動テスト、その実験体としてな…」

「や…やめ…来るな…!」

カチ、カチと弾切れになった銃を鳴らす。弾切れになったのを確認したマジマは、一気にジョバンニへと近き、手に持った何かを突きつける。

「チェックメイトだ…『お客様』…!」

「う、うわぁぁぁぁあああぁぁぁ!!」

恐怖で目を瞑り叫ぶ。一体俺は何をされるんだ?その恐怖で目を瞑る以外何もする事は出来ない。

「やめろおおおおおおおおおお……!!」





「あ、あれ…?」

しかし一向に何も起こらない。恐る恐るジョバンニは目を開ける。

そこには、鉄板プレートを持っているマジマと呼ばれいた青年が立っていた。

鉄板プレートの上には湯気を立てている、どう見てもハンバーグにしか見えない物が置いてある

「あ…あの…これ…は?」

ジョバンニはこの状況が理解できずに呆けた声を上げる。

「これか…これはな…?ハンバーグ・ベーシックスタイル試作1号機だ…

…スペック:食肉(牛肉、豚肉)、たまねぎ、つなぎ(パン粉、粉末状大豆たん白、)、牛脂肪、粒状大豆たん白、香辛料、寒天、たん白加水分解物、ゼラチン、加工デンプン、調味料(アミノ酸等)、着色料カラメル、リン酸Na

メイン装備:ソース(市販物)

サブ装備:ブロッコリー、コーン

また、輸送機として鉄板を使用しているため到着後即食べる事が可能となっている」

「は…はあ…」

「さあ食え」

「は、はぁ!?」

「食えと言っている。冷める前に食え、そして感想が聞きたい」

「あ、はい…」


あまりの訳の分からなさに、つい先ほどまで感じていた今恐怖その他はどこかに行ってしまい、ジョバンニは気の抜けた返事しか出来なくなっていた。


「じゃあ…まずは一口…」


マジマから鉄板を受け取り、ハンバーグを一口サイズに切った後口に入れる。

「もぐ…もぐ…ん?ううん…」

感想に困ったかのようにジョバンニは首を傾げる。

「どうだ…!?」

どこから持ってきたのか、マジマは録音用マイクをジョバンニに向け感想を求める。

「あ…うん…疲れてた腹減ってたからそれなりに食えるけど…うん…なんつーか…ボソボソしてて…」

「それで…どうだ!?」

口の中で広がる明らかに安物と分かる豚と牛の味。それを無理矢理繋ぎで固め、その上に市販の醤油と化学調味料の味しかしないようなソースで誤魔化している。空腹だからと言うのもありそこそこ食えてはいるが、好んで食べたいとは思えない味だった。

しかし、何故かは知らないが自分の感想を期待してじっと見つめるマジマに対し、そのまま伝えるのも悪く感じ言葉を探す…

「…うん…なんつーか…緊急用レーションよかマシってレベル…かな…うん…」

その言葉を聞きマジマが顔を近づける。

「レーションよりマシ!?つまり!レーションよりも美味いと言う事だな!?」

「あ…うん、ま、まあ…」

その問いにマジマは悠々とした顔で白衣の男に向かって大声で叫ぶ

「教授!!聞こえましたか!ハンバーグ・ベーシックスタイル試作1号機!レーションよりも上と言う評価を得る事が出来ました!」

『ひゃはははっはあ!聞こえてるぞマジマぁ!教授じゃなくて店長と呼べと言っているだろうがぁ!!しかぁし!この【サイゼガスト】初出撃、しかも装備品はハンバーグ・ベーシックスタイル試作1号機!その割には上等の結果が出たぁ!引き上げるぞぉ!!』

「はっ!おい!貴様!」

「は、はいぃ!」

「試食リポート感謝する。それはその礼だ」

そう言ってマジマは大量のメーカーが書いていないカンパンをジョバンニに渡す。

「それは一応市場に出回っている物と同等の物だ、訳あってどこのメーカーかは開かせないが味は保証しよう。では!」

そう言い残しマジマは、サイゼガストと呼ばれる機体に乗り込む。

「えっ!?あ!帰るの!えっ!あ!なら俺もそれに乗せ…」

ジョバンニが声をかける間に、【サイゼガスト】と呼ばれた謎の機体は、遥か彼方へを飛んで行っていた。

「何だったんだ…さっきの…」

ジョバンニはあまりの訳の分からなさに、そう呟きしばらく呆然としていた。



装甲外食産業騎サイゼガスト、のちに『最低な所に届ける最低の飯』として、大多数の人々を結果的に救う事となるとは、ジョバンニも含めまだ誰も知らない

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