青色の破片
酒場の常連客は
今日も変わった話をしていた
「純粋な心は透明だけど
誰より大きな心や純粋な人が大勢集まると
きっと青になるはずなんだ
だって空気は透明だけど
空高くまで空気が重なると青空になるし
水は透明だけど海は青い
透明だからこそ他からの影響で
染まる夕焼けや
エメラルドグリーンの海もあったりさ」
カウンターの中で聞いていた
派手なレディが反応する
「不思議なことを言うね
じゃあなんで透明な物が集まると青色になるの?
赤でもいいんじゃない?」
ニコニコの子供みたいな笑顔で
客は話を続ける
「たぶん透明の中には
本当に小さな青色の破片が混じっていて
沢山集まると人間にも見えるんだと思う
青色の破片はきっと
孤独や悲しみみたいな存在
まったく持ち合わせていない人なんか
この世界に存在しないもん」
レディは少し驚いた目で彼を見ると
客は泣きそうな目で笑って言った
「小さなことに気が付かなかったり
感じることが出来ないのは悲しいけど
とても人間らしいよね」
レディは優しい口調で伝える
「その話が正しいかどうかは
私にはわからないけど
酔っ払ってるのと
色々疲れてるのはよくわかる
だから今日は帰ってゆっくり休んでさ
元気になったらまたおいでよ
それまでに私も今日の話のことを
ちゃんと考えとくからさ」
その優しさが伝わったのか
客はまた子供みたいな笑顔に戻って
何度も頷いた
心が透明に戻っても
青色の破片を取り除くことは誰にも出来ない