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チェンジリング・ヒロインゲーム ~私のハッピーエンドを目指して~  作者: えとう蜜夏


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 式が終わり、家族と話をする時間があるので両親の元に近寄るとお母様は上機嫌になっていた。


「アーシア、素晴らしかったわ! お母様も鼻が高くてよ」


 お父様もその隣で無言で肯いている。いつも微笑を浮かべているが、今はかなり嬉しいのが伝わってきた。この世界のお父様は黒髪のとてもダンディな方で今は少し銀色も交じってイケおじ。でもね。お父様と言っても、二人は早く結婚したので当然若い……。


「アーシア、私も鼻が高くてよ。是非私の家族を紹介したいわ」


 ジョーゼットがそう声を掛けてきたので、それぞれのご家族とも挨拶を交わした。


「モードレット侯、ご機嫌いかがかな?」


「これは、ローレン公爵様」


「侯のご子息とは宮廷でお会いたしたことがあるが、将来が頼もしい青年の上にこのような素晴らしいお嬢さんがいらしたとは。今まで華やかなデビューも控えておったようですな」


「……恐れ多いお言葉です」


 お父様はそう言って穏やかな微笑みを浮かべていた。


 でも私はお父様が内心冷や汗をかいているのもなんとなく分かる。うちは侯爵家とはいっても代々学者肌の人が多い。だから、権力争いを避けて静かに暮らしている。お父様は領地に植物園を作っていて、そこで希少種のこけを愛でていて、社交界などは必要最低限度のみ。


 お母様の方は逆でかなり社交的な方だけど。そんな二人は、なんでもお父様の温室で電撃的な出会いをして、あっという間に結婚。今でも二人の恋バナは社交界の伝説として語られている様子。そんな華々しいお話は昔の事で今は温室に籠りきりになっている。


 上位の王位継承権をお持ちの上に、中央の財務の顧問をしておられる公爵家と親しくすることなど無く。そもそもお父様が派手な社交を嫌っているから、私を伯爵家に嫁がせても問題なかったのよ。私も王太子様にだって、他の王族だって嫁がせても申し分ない家柄だからね。家柄だけはね。




 気が付けばいつの間にか周囲は私達を遠巻きにして眺めている状態になっていた。まあ、公爵様はこの国の財務を担っている方で、そのご令嬢は次期王太子妃候補、ゆくゆくは王妃になって、この国のトップレディになられる予定だものね。私も遠巻きにしたい。国の中枢の方々とお話しするなんて、あー、肩凝る。顔まで引きつっちゃう。


「これからも娘を宜しく」


 そう話されて公爵様はお帰りになった。うちの家族も一緒に帰ってくれたが、お母様は馬車に乗る際、何食わぬ感じでお話になった。


「……そう言えば、アーシア。あなた、このことをルークにお話をしていなかったの?」


「え?」


 突然告げられた内容に私はぎくりと体を強張らせた。お母様は私の沈黙を肯定と受け取ったようだった。


「そうよねえ。あなたがここに入ることなんて出来なかったわよね……」


 やっぱりね。と呟いて口元を扇子でお隠しになったお母様は私と違って立派な淑女です。お母様も別の侯爵家のお嬢様だし。遡れば王家の血も混じっていらっしゃるとかどうとか……。


 私は全身から冷や汗がどっと噴き出していた。


「ル、ルークお兄様にはお母様からお話ししてくださっていると……」


「私が? やあよ。あなたが学校の寮に入ったことは伝えたけれど、とっても怒ってお話になんないんですもの。今日はあの子が帰って来るのに間に合わなかったけれど、後は自分でお話しなさいな」


 ほほほとお母様は典雅な高笑いをするとお父様とお帰りになった。


 ――ルークお兄様が怒ってる?




 部屋に戻り私は今後の方針を考えた。だけどルークお兄様が乗り込んできて無理やり連れて帰られるエンドの一択しか考えられない。くぅぅ。


 そんなお先真っ暗な考えに支配されつつも、私の学園生活は無事幕を開けた。






 さて、私の潜り込んだこの学園では社交界への準備ということで、外国語や社交界のマナーを中心に学ぶことになっている。


 そして、気が付いたことなんだけど遠山明日香のときしたことのある『ゆるハー』は乙女ゲームのアドベンチャー系のものだった。それはよくあるもので分岐点の選択肢で話が進んでいく。最後は選んだ方のエンディングになる。


 しかし、私は始業式の夜に自室の机に座ったときに教科書を開けたときに突如自分目の前に何かが浮かび上がってきたのだった。――そう、こんなパターンもよくあるあるよね。


《ステータス》


 アーシア・モードレット


 [好感度]


 ジョーゼット・ローレン……


 ユリアン・ライル……


 ルーク・モードレット……

 

 ……何これ? 


 突如浮かび上がってきたそれは空気中に透けていて自分の名前の次に好感度とか書いてあって知ってる名前が浮かんできていた。表示はそれだけで一体どういう意味なのか分からなかった。消灯時間もきたので私は明日また考えようとベッドに入った。

 





 翌朝、食堂に行くと美しい少女達が給仕を受けつつ、食事を始めていた。時間は指定時間内ならいつでも利用できるし、給仕などは寮付のメイド達がしている。


 その集まりの中心にはジョーゼットがいて、心地よい笑い声を響かせていた。私が入ってきたのを見つけて手招きしてくれる。そうして横に座るように勧められた。


 こうしたところは年長の生徒が集団の中心となるのだけど、やはり身分のせいか公爵令嬢のジョーゼットが中心になっていた。彼女の家の公爵家はその中でも一番のお家なのだ。


 今年のこの学園の在籍者の内、公爵家の令嬢は彼女だけで、次の位の侯爵家は私ともうご婚約を決められた先輩の二人だけ、後は絶対数の多い伯爵家と一部の名門の基準を満たした子爵家の令嬢達だった。子爵家は特別な家柄か有力貴族の口添えが無ければ入学できないらしい。ここは元々伯爵家以上からでないと受け入れないようだ。まさしく超お嬢様校。


 その中でもジョーゼットは身分的にも見た目もピカ一番よね。うんうん。


 流石、私のジョーゼットっ! 私の薔薇色の女神さまっ。


 流石、未来の王太子妃! あ、なんだか称える歌が出来そう。


 食事の後で、一度自室に戻って身支度を整えるとそれぞれの授業のある教室に向かう。入学時の試験でランク分けされているんだけど私は勿論上級クラス。だから、あの好感度とやらは何を表しているのだろう? まだ名前しか無いけど。


 それで初日は所謂オリエンテーリングのようなものが大半だった。

 


 あれやこれやと入学から一か月ほど経った頃、授業とかクラスの雰囲気も慣れてきた。


 だが――、私の恐れていたルークの訪れは未だ無かった。

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