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チェンジリング・ヒロインゲーム ~私のハッピーエンドを目指して~  作者: えとう蜜夏


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十五

「侮辱した訳ではないだと? そんなことがある筈無い………」


 ジルは私を信じられないといった表情をして私を眺めていた。勿論彼は床に転がったままだけど。


「私の知っている国の騎士団長の息子達は筋肉系の美丈夫が多かったから。つい騎士団長の息子というとマッチョーズを思い出すの。だから、あなたのことは何も知らなかったというか、気にしてなかったというか……」


 まあ、今までの侯爵令嬢のアーシアなら下賤なものとか思ってユリアン様以外は目に入って無いだろうし。どっちにしても知らない。


「そうか……。失礼した。早合点だったようだ。それによく見ると君は……」


 ジルは立ち上がると最後は言葉を濁していた。何か言いたそうだけどここを早く去らないと人だかりができちゃって、無駄に目立つのよ。


 私はそそくさと立ち去ろうとした。ジルの待ての言葉にも足を止めずにジョーゼットと急いでその場を去った。


 目立たぬようにジョーゼットとその場を逃げていると聞き覚えのある奇声が聞こえてきた。


「あー! あなた。こんなところに来て、何してんのよ! それにまたそんな恰好をしてっ。一体どうなっちゃてるの!」


 ――ガブリエラちゃん。目聡いです。


「ちょ、ちょっと見学に来ただけだから」

 

「見学者が制服で来る訳ないでしょ! それも男子用のなんて。ああ、そんなこと、どうでもいいわ。今日の私の邪魔はしないでよ。今日は隠れキャラの王太子様とのイベントなんだからね!」


 ――ああ、はいはい。ありました。将来の側近のスカウトと称して、見学にいらっしゃるのよね。でもそのイベントって、二周目以降じゃなかったっけ? 


 幸いなことに試合場の喧騒で私とガブリエラちゃんの会話はあまり周囲に聞こえないようだった。ジョーゼットは不思議そうに私を見返してくる。説明できるかな。どう誤魔化そう。


「ねえ、あなたは王太子様を見てない?」


 ガブリエラちゃんは私の背中に隠れていたジョーゼットを目聡く見つけて話しかけてきた。


「……あれ、何、その子? どうしてあんたと一緒にいるの。その子もライバル令嬢じゃないの! 王太子様を攻略するときに邪魔になる子よね。でも、そうだわ。ねぇ、あなたは何処で王太子様と合流するの? そのためにお忍びでここにくるイベントよね?」


「あ、あの、私はその……」


 突然、話しかけられてジョーゼットは面食らっていた。仕方が無いのでガブリエラちゃんの暴走を止めようと間に入る。


「ちょっとガブちゃん、いい加減にして頂戴」


「「ガブちゃん?」」


 ガブリエルが長いので省略して呼んだら、何故かジョーゼットまで二人同時に問い返してきた。


「あ、ほらね。ガブリエラって長いじゃない?」


「はあ? 省略し過ぎでしょ。何なのよ? ガブちゃんて。酷いセンス」


「アーシア! いつの間に彼女と仲良くなっているの? 私の方がアーシアの一番のお友達よね?」


 そんな風に二人に詰め寄られて、その場はカオスな状態になっていた。どうしてよ?


「ジョーゼット。ガブリエラちゃんとは先日の、ええと、……そう! お茶会のときに知り合ってね」


 ――何だか私って、妻に対して言い訳している夫の気分を味わってる。どうにもおかしい。


「ああ。もういい! 他の人のイベントも今日は沢山あるから急いでるの。見かけたら教えて頂戴!」


 ガブリエラちゃんは慌ただしくそう言って立ち去った。その後柄の悪そうな若者たちがガブリエラちゃんの来た方から走ってきた。


「あいつどこ行った? おい、そこの奴。茶髪の女を知らねえか?」


 見るからにガラの良くなさそうな二人組だったし、それに部外者のようだった。


 ――こんなの入口で良く通してくれたわね。王太子様がお忍びでいらしているのに。どうなってるのかしら? それに茶髪の女の子ってガブリエラちゃんのこと? 何やったのよ?


「行き成りぶつかってきて、そっちが悪いとか言いがかりつけやがって!」


「そんなこと私達に言われても……。全然関係ないですが」


「ん? 後ろの子、滅茶可愛い。一緒に見て回らない? こんな彼氏放っておいてさ」


「え?」


 そう言って二人組はジョーゼットに話しかけてきた。驚いて嫌そうなジョーゼットと私を無視して二人組の男達を見ていると何か既視感が……。これこそイベントじゃん! まさかの、ガブリエラちゃんに擦り付けられた?


 あのゲームの『ゆるハー』ここは戦闘モードになるのよ。でも緩いから親密度がそこそこあれば勝手に攻略者が一緒に戦ってくれるという。


 ――ちょっと今は攻略者が誰もいないんですけど?


「ちょっと待ってください。この子はそんな子じゃなくて」


 私が盾になって間に入るけど。


「お前、何だよ。俺らに歯向かうってか?」


 ああ、もうどうするの。 もう一度ムチの出番?


「――待ちたまえ」


 そこに正義のヒーローの如く現れたのは私のユリアン様だったの! 生ユリアン様を拝見できた。


「不審者がいるとの通報があって見回っていた。貴様たちだな」


 これは生徒会執行部の巡回イベントですね。


 そう思い出して、私の頭の中で『プリムラ学園生徒会はグローリアス』が流れだす。


  『君には困った顔は似合わない~♪


   もう大丈夫だよ。ハニー? 僕らがきたから~


   君を笑顔にしてあげる♪


   ああ、グローリアス! どこまでも輝いて~


   グローリアス生徒会! 輝かしき僕らは君の味方!


   グローリアス、グローリアス(繰り返し)』


 不埒な者どもは生徒会メンバーに一瞬で成敗された。ユリアン様は私を見て麗しい笑顔を向けてくれた。


「大丈夫だったかい? まさか君が来てくれるなんて……。あれ、隣の方は……」


 ユリアン様はジョーゼットに気が付いたみたいだった。


「ありがとう。ユリアン様。彼女は私のお友達なの。今日は一緒に見学に来てるの」


 ユリアン様はじっと私達を見て考えているようだった。バレてるよね。


 ――もしかして、強制的に帰されるのかな……。 

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