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泡を飼う

作者: 稚早

私は、泡を飼う。


水の中で空気が気泡になるように、私の周りでは空気の中に水が浮かんでいる。足は確かに地に着くのに、いつかテレビで見た宇宙ステーションの様に、プカプカと浮かぶのだ。   雨上がりを散歩なんてした日には、水溜りからポコポコ湧いてくる。この泡はこんな風にいつの間にか増え、いつの間にか減っている。川や海に近づけば、嬉しそうに潜っていった。そして、また私の傍らをフワフワと飛んでいる。たまに肩に乗っていることもあるが、濡れたりしない、よく分からない存在だ。


「こっちにおいで」

気まぐれに呼んでみる。水の塊達は表面を小さく波立たせながらやってきた。

意思疎通はできないけれど、日光の下でキラキラと輝く水の球を見ると不思議と心が落ち着いた。


一つ、印象的だった出来事がある。

ふらりと川に立ち寄った、溶けそうな位の夏日。

いつものように泡達が川に溶けて戻ってきた、その中に。

1匹の、小魚がいた。


私は、生まれてこの方泳いだことが無い。大量の水に自分の身を沈めるということが、どうしても怖かったのだ。水は澄んでいて好きなのに、だからこそ畏怖の念が湧く。

川のほとりを散歩するのも、そんな水への未練を断ち切れていない証拠だ。

昔、友人が川で遊んだ時に言っていた。

「数えきれないほどの魚が、山の緑に囲まれて泳いでいるみたい」

そんな情景に、1度でもいいから触れてみたかった。泳ぐどころか、川に入れもしない私に、できるはずもない。こんな私が水の泡を飼うなんて、何の嫌味だろう。


そう、思っていたのに。


初めて、自然の水の世界に触れた。友人の見た魚の大群には遠く及ばない。それでも、その1匹の小魚は私にとって大群と同じくらいの価値があった。魚を内包する泡に両手をそっとかざす。泡は私の手の中でやさしく魚に光を与えていた。鱗が、それに応えるように光る。私は、両目から小さな小さな泡を生んだ。


 あれからも、泡は相変わらず私の周りを浮かんでいる。何をするでもない。個体という概念もなく、ただそこに在る。今となっては私の日常だ。

私は今日も、泡が反射する朝日に目を覚まし、泡が残す僅かな光を頼りに眠りにつくのだった。


お読みいただきありがとうございます

昔から、水の球みたいなものが魚を包んで浮かんでいたらきれいだろうなと思っていたのがこうして形になりました


そして、今日で小説家になろう投稿を初めて一年になります

少しでも成長できていればいいのですが・・・^^;

他の作品にも興味を持っていただければ幸いです*^^*

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