b.f.3
「ただいま〜」
「おかえりなさい。お風呂先入る?」
「うん。」
デビューが決まって、
レコーディングやらなんやらで
毎日クタクタで帰ってくる。
半同棲みたいなもんだから、
私は毎日晴くんを出迎えていた。
夜ご飯にしては遅い時間なので、
消化にいいものを作って
テーブルに並べた。
「お、うまそ。」
お風呂から上がった晴くんは
タオルでゴシゴシと髪の毛を拭きながら椅子に座る。
…新婚さんみたいで、なんだか くすぐったい。
「いただきます。」
「いただきます。」
「お、うまー!」
「ほんと?良かったっ」
「やっぱ、疲れてるときにこうやって出迎えられると嬉しいな。」
「…私も、出迎えることができて、嬉しい。」
少しでも晴くんの役に立ってる気がするから。
「いつまでも、こうしてられるといいなぁ。」
「ね。」
私も、そう思う。
「…なんかね。」
「ん?」
ベットで2人、並んで。
晴くんに腕枕をしてもらう。
至福のひと時だ。
「デビューできるなんて、夢にも思わなかった。」
「ん…」
「最初は騙されてるじゃないかって色々考えたけど…毎日会社に行って、話を進めていくでしょ?
そしたら、どんどん自分の中で現実化していくわけ。
しまいに、テレビで見たことある人とかが横を通るの。
あぁ、この人たちと同じ世界に踏み出せたんだ、って思うと…震えた。」
「震えた…?」
「そう。なんだろ、自分の中の熱みたいなものが沸騰したっていうか…
やる気みたいなものが、湧き上がってきたの。
いつかデビューできれば、って軽い調子で思ってた、思おうとしてた…だって、いつまでも夢を追いかけらんねぇじゃん。
いつでも、諦められるように、傷が浅く済むように自分を防御してたんだ。
それが、全部なくなって、素直な気持ちが出てきた。
俺は本当に歌手になりたいんだって心から思えた。」
「晴くん…」
「俺が今まで頑張ってこれたのは、友紀のおかげだよ?ありがとう。」
「…っそうなことない、晴くんが頑張ったからだよ…
私は、ほんのちょっとお手伝いしただけ…」
「それが助かったんだ…友紀がいなかったら、
ここまでこれてなかったから…」
晴くんは優しく目尻に溜まった涙を拭ってくれた。
私の方こそ、ありがとう。
私を選んでくれて、ありがとう。