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誘拐犯の星  作者: 沙羅咲
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第5章 Danger zone(10)

「来ました」


 しばらくして、遠野が静かな声で告げる。


 外からは人の声。


「近づくなっ!」


 遠野が拡声器で怒鳴った。うわー。うるさーい。


 狙撃がいたらまずいから、カーテンは閉めたまま。


「誰か一人だけ、金を持ってこい。警察はダメだっ!」


 決めたとおりの台詞。外から声が聞こえる。


「私に行かせてくれっ!」


 お父様の声…。必死な声を初めて聞いた。


 遠野が振り返る。


「満足…ですか?」


 私の視界はどんどん歪んで見えなくなっていく。


 ごめんなさい。お父様…私、その声が聞きたくて…無茶しました。


「良かったですね」


 遠野がそう言って、そしてもう一度拡声器を持ち上げた。




 ガチャーンッ!




「遠野っ!」


 ガラスが割れる音に遠野のうめき声が重なった。


「遠野っ。大丈夫? 遠野っ!」


 床に転がった遠野は腕から血を流していた。


 狙撃? どこから?


 カーテンが閉まっていたということは、熱による感知?


「遠野。そのまま転がってこっちまで来て」


「香織ちゃん?」


 私はすばやくウルフが施した縄を解いた。


「私に爆弾の発火装置を頂戴。早くっ!」


 伸ばした手に黒い物体が渡される。


「そのまま通路を抜けて逃げて」


「でも…」


「ダメよ。狙撃が来た以上、踏み込んでくる可能性があるわ。早くっ!」


「香織ちゃんは…」


「私は大丈夫。上手くやるわ。早くっ!」


 そのまま遠野を隠し通路に押し込むと、私は椅子に座り続けた。


 どっちが来るか。警察か、または晃か。



 ドンッ!



 音がして晃が踏み込んでくる。


「晃っ」


 晃が人差し指を唇に手をやって、自分のポケットを指差してから、耳に手をやる。


 盗聴器があるということだろう。


「痛いっ! やめて、殺さないでっ!」


 熱探知機ってどのぐらいの精度なのかしら? 晃の身体ぐらいじゃごまかせないかな。


 私はまるで誰かがいるかのように声を出しつつ、晃の身体を窓からの盾になるように動く。その上で、遠野が撃たれて、そして地下通路に逃がしたことを示した。


 そのとたんに晃が顔をしかめる。


 私に金を渡すと、地下通路に行けと身振りした。


「嫌っ。嫌っ。助けてっ!」


 私は騒ぎつつ思い出して、黒い物体-----起爆装置を晃の手の中に押し込んだ。そして地下の扉を開ける。



 …。

 えっと…。



 なんで居るのよ。


 馬鹿、遠野!



 地下の扉の下では、痛そうに腕を押さえたまま、遠野が突っ立っていた。


 とにかくお金が入ったスーツケースを渡した。そして遠野にささやく。


「晃が来たから大丈夫。作戦続行よっ」


 遠野が安心したように頷いて、スーツケースから金を出すと、用意してあったリュックに入れ替えて、走り出した。



 がんばって。遠野。


 

 そして振り返ったとたんに晃に抱きしめられた。



「無事でよかった」



 心からの声。えっと…あれ?


 あ、そうか。盗聴器があるんだ。


 私も慌てて涙声を作る。


「晃…来てくれて…助けてくれてありがとう」


 そう言って、玄関を出たところで、警官隊がずらりと向こう側にいるのが見えて、今更ながら結構大きなことやっちゃったな…なんて思ったのは一瞬だった。


 耳を劈く轟音と、そしていきなり晃に覆いかぶさられて倒される。


 あ…別荘…。


 後ろを振り返れば、突入しようとした警官たちの目の前で別荘が火に包まれているところだった。



 お父様とお母様が駆け寄ってきて…晃も私も土まみれだったけれど。それでも二人は私を抱きしめてくれた。


 ちらりと晃を見れば、晃が満足そうに笑っている。


 ごめんなさい。お父様。お母様。





 こうして、私の馬鹿な誘拐劇は終幕となったのだった。



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