第5章 Danger zone(6)
「これ、ベレッタよね?」
「よく知ってるな。M92FS Vertecだ」
「ベレッタじゃないの?」
「ベレッタっていうのは、イタリアの銃器メーカー、ピエトロ・ベレッタ社の銃のことをざっくり呼んでるんだろ? いろんなシリーズがあんだよ」
綺麗に並べられたパーツを私のほうへ示して見せて、それからまた組み立て始める。
「俺のは自動拳銃のM92FS Vertec。バレルの先端が切り落としてあるから、元のモデルのM92FSよりも全長がちょっとばかし短い」
かちゃりと組み立てあがって、ウルフが照準を確認する。
「へぇ」
今ひとつわからずに、なんとなく返事をしたら、ウルフからコツンと頭を叩かれた。
「お前、分かってなくて返事しただろ」
「あ、ばれた?」
「まったく。M92っていうのが、このシリーズの最初のモデルなんだよ。それでスライド破損事故っていうのが起きた。1980年代のことだ。アメリカ海軍の特殊部隊で採用してたんだが、スライドが破損して撃ってる奴の顔面に当たるっていう事故が三回も起きた。それで特殊部隊は採用する銃を変えたんだが、銃器メーカーも事故をそのままにしておけないから、改良をしたわけだ。それがM92FS。ま、かなり乱暴に説明すると、そんなところだ」
「それでウルフのは、そのFSのバージョンの短いやつってことね?」
「そ」
ウルフが弄んでいる銃を、またまじまじと見る。
「こんな話、聞いてて面白いか? 一生懸命聞いてる女なんて、初めて見るぜ?」
「面白いわよ。今までそういう女の子に会えなかったんだったら、あんたの運が無かったってことね」
私の言葉に、ウルフが片方の眉を上げてから、にっと笑った。
「銃が好きな女なんて、変なやつ」
「うるさいわね」
ちょっと頬が熱くなる。
いいじゃない。そんなに変な奴呼ばわりしなくても。
「ま、いいんじゃないか? お嬢様っていって、パーティーですましているよりよっぽどいいと思うぜ?」
その言葉に違和感を覚えて、私はウルフをまじまじと見た。
「私のこと…知ってたの?」
茶色に金のメッシュが入った髪の間から、ウルフの瞳がのぞく。
「知ってるぜ。俺はお前の父親の護衛役。まあ、晃とはその前から腐れ縁だがな」
し、知らなかった…。




