第5章 Danger zone(6)
そして遠野を徹底的に避けた三日間。あっちから謝ってこないんだったら、しゃべらないんだからって思ってるのに、気づいてないように遠野はおろおろするばかり。本当にバカじゃないのっ。
そして約束の三日後。遠野は女の子に変装して出て行き、入れ違うように、ウルフが来た。
「よぉ」
こいつはこいつで胡散臭い。
ちらりと横目で見てから、いないつもりでテレビのスイッチを入れる。
「おい」
置物だと思ってろって晃も言ってたもんね。うん。無視しておこう。
しばらくテレビの音だけが響くリビングのテーブルの上。ゴトリ…と硬質な音がした。
ゴトリ?
ちらりとウルフのほうを見れば、拳銃がバラバラになっていくところで…。
「す、すごい」
思わず見入っちゃったわよ。テレビや映画の中で、拳銃をばらして掃除している姿は見たことがあるけど、実物をやってるのは初めて。
「触るなよ」
そっと手を伸ばした私に、そっけない声でウルフが言う。
「だ、ダメ?」
「ダメだ。見るだけ。拳銃はデリケートなんだ」
うっ。けち。
でも拳銃はデリケートっていうのは、認めるところだから黙ることにした。
かちゃかちゃとばらして、きゅきゅと古い油を拭い取る。
手馴れた手つきで、また油を差しながら、綺麗に組み立てていく。
「面白いか?」
「面白いわよっ。こんなの誰も見せてくれないわ」
ウルフの隣にちゃっかり座って、組み立てた銃を覗き込む。綺麗なフォルムに思わず見入った。
「変な女」
「失礼ね。綺麗なものに見惚れるのに、男も女もないでしょ」
私の言葉にウルフが苦笑した。
「まあな。だが銃を綺麗だって思う女ってなかなかいないぜ?」
「そう?」
「普通は怖がるもんだ」
そうなのかしら? 思わず考え込めば、ウルフが言葉を追加する。
「見せたりなんかしたら、まずやばい筋だと思われるしな」
「まあ、そりゃあ、日本では、そもそも許されてないもの。仕方ないんじゃない?」
「そこを差っぴいても、武器っていうのは怖がるもんだろ」
「別に」
なんとも思っていないことが丸分かりな私の言葉にウルフがまた苦笑する。
「だから変な奴っていうんだよ」
組み立てあがった銃…バラバラにするのを最初から見たかったな…。
「ばらしてみせようか?」
「え?」
「心の声がだだ漏れ。見たいんだろ? ばらして組み立てるぐらいお手の物だ」
そういうとウルフの手の中で、また拳銃がばらばらになっていく。
マガジンをはずし、スライドトップがはずれ、銃口がはずれ…。
すごい。まるで美しい立体パズルみたい。




