第5章 Danger zone(4)
皆で手筈を決めて、それぞれの役目を確認する。
「先にロケハンしておいたほうがいいですね。遠野と仁をつれて、現場に行ってみておきます。お嬢様はその間、お一人ですが、大丈夫ですか?」
晃の言葉に、私はゆっくりと力強く頷いた。
「ここで大人しくしてるわ」
晃の目が満足そうに細められる。
「三人一緒に行動すると目立つから俺は自分で行く。場所だけ教えろ。その間、お嬢様は俺が見ておいてやるよ」
ウルフがそう言ったとたんに、満足そうな晃の目が冷ややかになって、そして横目でちらりとウルフを見た。
「手を出したら」
視線と同様、冷ややかな晃の声に、嫌そうな表情をしつつウルフが両手を挙げる。
「お前の『お嬢様』に手は出さない。誓う。ま、俺からは、な」
意味ありげに私を見るウルフの視線に、なんとなく居心地が悪くなって、頬に血が上った。何、今の視線。
「お嬢様。一応、仁を置いていきます。誓った以上、手は出さないと思いますが、置物かなにかだと思って、無視しておいてください」
「お、おい」
晃の言葉に、仁を無視して私は素直に返事をした。
「わかったわ」
「お前なぁ」
ぶつぶつ言うウルフは置いておいて、そのままミーティングは終了。
晃と遠野が下見に行くのは、三日後となった。
晃もウルフも帰った家の中。遠野が台所で食器を洗っている音がする。
ぼーっとテレビを眺めていたら、いつの間にか目の前にカップが置かれた。
ふと見ると、あわ立てたミルクとコーヒーが上手にハートの模様になっている。
「わっ。かわいい…」
遠野が照れたように笑った。
「飲んでみたいって言っていたから、やってみました」
うん。数日前にテレビを見ているときに、コーヒーの上のミルクで模様が描かれている喫茶店の特集をやっていたの。そういう喫茶店にも入ったことがなくて…思わず遠野がいることを忘れて、いいなって呟いていた。
四之宮のお嬢様。毎日「ごきげんよう」で終わる世界。いろんなものは雑誌の向こうか、テレビの向こう。
でも…この生活が始まってからは、違っている。
毎日が刺激的。
「あ、遠野の分もある? 一緒に飲む?」
遠野が自分の分のカップを持ってきた。思わず覗き込む。
特に模様はなくて…。
「自分の分はしなかったの?」
遠野の顔が赤くなった。
「やってみたんですけど…一個目は失敗したんです」
あ。
思わず、私は自分のカップを見た。ハート型の模様。
「ありがとう」
お礼を言うのが、気恥ずかしくて、呟くように言ったけれど、それは遠野の耳に届いていたみたいで…。
「どういたしまして」
遠野から声が返ってきた。




