第5章 Danger zone(3)
「ど、どうせ、しの…いえ、お嬢様を誘拐した時点で、僕の罪なんか決定してますから」
そう遠野が言ったとたんに、ウルフが眉を寄せた。
「何? お前、お嬢様を誘拐したの?」
にらまれて、遠野が小さくなる。
「は、はい…」
「どうやって」
「ナ、ナイフで脅して…自転車に乗せて」
「自転車~っ?!」
ウルフが大声で叫び、晃の目が丸くなる。
あ~しまった。言わなくてもいいことを言ってくれたわ。
「一体全体、自転車使う誘拐犯なんて、どこにいるんだよっ」
「く、車…持ってないんです…」
「いや、そういう問題じゃないだろ」
「呆れました。それに付いていったんですか? お嬢様は」
晃が大きなため息をついた。
何も言い返せなくて、遠野と二人で思わず小さくなる。
「だ、だって、しょうがないわよね?」
「は、はい」
晃とウルフが睨んでくる。
「あ~。茶番だ。こんな茶番に俺、つき合わされてるわけ?」
ウルフが言えば、晃ももう一度大きなため息をついた。
思わず私は立ち上がる。
「茶番だって、なんだっていいでしょっ! やるって言ったんだからやりなさいよ!」
三人の男の目がぎょっとして私に釘付けになった。
仁王立ちで三人を睨みつける。力をこめて一生懸命。
ちょっとだけ涙が出そうになって声が震えたことには、皆気づかなかったと思いたい。
「ここまで来たんだから。ここまでやったんだからね。最後まで付き合ってよ」
皆無言。
無言が怖い。
最初に立ち上がったのは遠野だった。
「ぼ、僕はやりますよ。さ、最初は僕ですから」
そう言ったとたんに、はぁっと大きなため息が聞こえる。
「仕方ねぇな。付き合ってやるよ。それに俺がいねぇと、お譲ちゃんは困るんだろ?」
ウルフが茶髪に金色のメッシュの髪をかきあげる。
思わず私は晃を見た。
「晃…」
弱気な声を私が出せば、晃は私を見てにやりと嗤った。
「お嬢様、どうぞご命令を」
思わず私も晃を真似てにやりと嗤う。どうかな。できていたかな。
「ええ。始めましょう! 最後の大舞台よっ!」