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3/3

未知との遭遇。

スライムといえば、おもちゃ屋なんかに売っていた気がする。半透明な色合いに、ゴニョゴニョとしたら触感、粘るわけでもない、柔らかくてちぎれるのにまたくっつく不思議な物質。原材料がなんなのか日々謎に思っていた。

しかし目の前のこれは、おもちゃやなんかに売っていない。かといってペットショップでもないだろう。

自生するスライムなんて、どこにいだろうか。


否、ここにいた。


おっとあまりの驚きに一周して冷静になってしまった。まさか、生きてるスライムなんていやしないのである。ただ風に靡く大量のスライムだ。

「…キャピー」

最近のスライムは鳴くらしい。おもちゃも知らないうちに進化したなー。

そのスライムは独りでにうにょうにょ波打ちながら、その目をこちらに向けていた。うん。機械仕掛けで動いてるのかな?じゃなきゃなんだ。

「…ぐわっ」

スライムが横にぱっくりと裂けた。まるで口を開いたかのように。

すると、俺の方に噛みついてきた。

「うわ!っぶねぇ!」

足を噛まれそうになり、反射的に後ろに飛んで回避する。やっぱり生きてるよこいつ!

そして、今こいつは俺に対して敵意を向けていた。仕方ない。エンカウントしたらやることはただひとつ!

逃げよう。

スライムの目を見ながら徐々に後退する。背中を向けたり、機敏な動きは相手を刺激してしまい襲ってくるらしい。なのでゆっくりと移動して物陰に隠れるのがいいと小学校の先生に教わった。いや、これは熊の対処法だな。田舎生まれなもので。

しかしスライムは俺のペースに合わせてこっちに迫ってきた。やばい。あれから距離が変わらん。見渡す限りの草原には木や岩、身を隠すものはない。

そのまま後退してるうちに、背中がなにかにぶつかった。そこには大きなものがたっていた。木ではない。

「…パイン。おーいパイーん」

パインは固まって動かなくなっていた。…まばたきもしてないけどダイジョブか?ただの屍のようだ。

まぁよかった。無駄に横にでかいパインの後ろに回り込む。あれ?これってパインが食べられちゃうかも。

…何事も犠牲は必要だ。それで納得。

スライムはそれでもパインの足下へと徐々に迫ってくる。パイン、ほんとに動かないけど。

パインが食われるまで、3、2、1…よし。

「ごめんパイン!」

スライムが再び口を開こうとする瞬間にパインを押し倒す。カッチカチのパインは重力に従って前へ倒れ込み、スライムの上にのし掛かる。

…喰らえ。パインクラッシャー!

見事パインはスライムを押し潰した。スライムの破片が回りに飛び散ったのが異様にグロいが、スライムは跡形もなく消える。

「んっんんんん!ぷふぁる!なんかぐにょっていったでござる!」

あまりの感触の悪さにパインは我に帰ったらしい。なんだ、ど根性なんとかみたいに服に染み込むのかと思った。

「シオン殿!な、なにするんでござるか!」

「すまん。これしか思い付かなかった。反省はしている」

「むふぁ。…すごく嫌な感触でござった」

「まぁ、いなくなってよかったな」

そういった矢先、ふと物音に気づいた。

みれば。飛び散ったスライムの破片が一ヶ所に集まっているのだった。まとまってもとの大きさに戻ると、なんと言うことでしょう。元通り。

「パインクラッ…」

「シオン殿!拙者の後ろに立たないで欲しいでござる!」

くそ、あの手はもう使えないのか。

するとスライムが甲高い声を発した。その高さに耳をふさぐ。さっきのちょっとした鳴き声ではなかった。

その声が止まり安堵すると、地中に異変が起こった。半透明ななにかがわきでてきたのだ。それは徐々に形をなしていく。

目が生えて、口が裂けて完成しました!大量のスライムが!

「パイン見るな!今度かたまったら見捨てるからな!」

「それは困るでござる!」

「んじゃ走れ!」

スライムの大群に背を向けて走りだす。パインも後ろを追いかけていた。

どれ程走ったか。地平線は変わらないままだ。ふと振り返ると、果たしてスライムはいなかった。

ついでにあいつもいなかった。

「…お前のことは忘れないよ。…マンゴー」

「忘れてるでござる!」

あれ?違うっけ?果物だったような…てか生きてたんだ。ぷよぷよしてるからスライムかと思った。四つ繋げて消したい。

パインは俺よりも少し手前でくたばっていたらしい。てか、この体型でよくここまで走ったなと思う。

「あいつら、移動は遅いらしいな」

「でも次はもう走る力はないでござる…」

もうあいつらがわいてこないことを祈る。つぶれても戻るとかどうすればいいんだよ。

というか、忘れていたが少しだけ日が傾いていた。つまりあっちが西か。わかったところでなんだという感じだが、時間は刻々とたっているらしい。

「…どうやって寝ようか。適当に寝ててもダイジョブかな」

「なぁ、シオン殿?」

「ん?なんだマンゴー」

「…もうそれでいいでござるが。あそこはなんでござるかね?」

「あそこ?」

パインが指差す方向を見る。草むらに隠れているが、少し地面の色が違う。

「いってみるぞ」

「また面倒にならなければいいでござるなぁ」

警戒しながらよってみると、草は生えてなく、地面には紋章のようなものが描かれていた。その紋章を囲むように岩が埋め込まれている。今までは草原しかなかったし、これはなんだろう。恐らく自然にできたものではない、人の手による物だろう。

つまり、どこかに人がいる。それが確認できた。

「とりあえずパイン。ここを目印にしよう」

「むふ? 新しい発見でござるね。…なんか紋章がかかれてて中二心が…」

そういってパインが岩のひとつに触れたときだった。紋章が仄かな光を発した。突然の事態に俺もパインも固まってしまう。

光を放ちながらゆっくりと紋章の中心に穴が開く。光が消えたときには、空洞ができていた。

それは、地下へと続いている階段だった。

「…パイン。行ってみるか」

「シオン殿好奇心押さえてほしいでござる!」

「んじゃ待ってろ」

「あぁもういくでござるよ!」

なんで発言と行動が一致してないんだよ。ツンデレ娘みたいだな。なにこいつときめかない。


岩の階段を下りていく。暗くて足元がみえなくなってきた。やめるべきか、また変なやつがわいてくるかもしれない。

壁に伝ってあるいていると、したから光が漏れてきた。なにかはわからんが一気にかけ降りる。光はどんどんちかくなっていった。

降りるとすこし広い空間にでた。何より不思議は、光があるのだ。洞窟なのに。

気づいた。突出している岩が青く光っているのだ。

転がっている普通の岩を持ちあげ、光っている岩の先端を砕く。それは思ったよりも脆かった。そして、その破片はいまだ光を放っている。

手頃な大きさの破片を拾い上げると、ライトのように回りをてらしていた。飛行石みたいだ。何より不思議は、

「パイン、静かだな」

パインは俺の後方で口を閉ざしていた。

「…シオン殿! 洞窟なんてゲームでは魔物の巣窟!ほボスキャラがいたっておかしくないんで候!」

こいつはまたモンスターみたいなやつが現れるのを危惧していたらしい。

「いや、そしたらまたお前で何とかするけどよ」

「…本当の敵はシオン殿な気がしてきたでござる」

物騒なことをいう。

俺はパインはほっといて洞窟の奥へと進んでいく。光る岩も少なくなってきて、ほとんど暗い場所に出た。手に持っている飛行石(と呼ぶことにする)の明かりを頼りに歩いている。

ある程度歩いたところで、洞窟の奥から光が反射してきた。行き止まりだろうか。そう思ってすこし近づくと、そこには何か、岩ではないものがあった。

近づく度に、その全貌が照らされていく。すべてを照らしてやっと、それがなにかわかった。


身長は十メートルを超えるであろう、鎧を着て、大きな剣を携えた、巨大な骸骨である。

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