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リアル王子  作者: 国見あや
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いやしけ良事

リアル王子は今年になってすぐの元旦のことをおもむろに話し出した。私はあまりに最近のことすぎるので、急になんだろうか?と耳を傾けた。

リアル王子は話しを切り出した。

「元旦は正月早々に雪が降ったよね?」

私は思い出しながら、空返事だった。

「うん、うん、確かにね。」

リアル王子は続けて話す。

「万葉集の最後の歌は正月に雪が降ることをおめでたいことだ、と大伴家持が歌っているんだよ。」

私は空返事だった空虚な状態から急に身を乗り出し、最後は自分の本棚をあさり、本棚の奥のほうにあった万葉集を取り出した。4516番に確かにある、ある、家持の歌。


「年の始めの 初春の 今日降る雪の いやしけ良事」


さすが名歌人!42歳のときの作品らしい。

お正月に雪が降るのはめでたい。万葉集にも良い未来があることに希望を託した歌でもあるし、家持本人の新しい赴任の地での将来が良いことを願う歌らしい。


リアル王子はこの万葉集の歌をどういう経緯で知ったのか?少し興味を持った私だった。

だって、私は大学でこういうのを勉強していたから。でも、大学に限らず勉強はこれだとか、あれだとか、何を勉強したとか言っても身についていなければ全く意味ないですね。


とりあえずリアル王子になるほど、よく知っているな、と思い聞いてみると、それらの知識は私の教科書から知り得た知識だったとのことでした。


以前 リアル王子に「ハウトゥー本は何だって先人たちの書いた知恵を真似したものだからあまり読まないほうがいいよ。」と言われ、私の書棚は少しだけミーハー路線やハウトゥー系とは遠ざかっていました。

でも、一番本棚の奥の万葉集に関する教科書をリアル王子が読んでいるとは!


ところで、万葉集を切り出したリアル王子はなぜ、この話しをしてくれたのかというと、

もちろん元旦に雪が降ったことは重なる話しだし、いうまでもないなですが、実は新しい一年の始まりに私がネガティヴなことばかり言って、ああでもない、こうでもない、と不安や不平や不満を言っていたからです。


こんな風な私に、おめでたい一年がくる!と喜びながら歌う大伴家持の歌と気持ちを教えてくれたリアル王子でした。


なんだか気分が晴れやかになった私でした。


今日はリアル王子は私を3時間もお昼寝させている間にクリスマスに人を招いて以来散らかってしまったテーブルの上や部屋を片付けてくれました!

おかげでスッキリきれいなテーブルの上でリアル王子とフォッションの紅茶を飲みながら、ハーゲンダッツの期間限定のアイス、キャラメルクラッシュを半分ずつ食べて落ち着いた夜を迎えることができるのです。


明日から仕事のリアル王子。

目覚まし時計をセットしています。


私はそんな忙しいリアル王子に不平不満ばかり言っていてごめんなさい。

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