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12日目。ミカンからの報告

 ちょうどお昼くらい。

 俺はソファーに腰掛け、ミカンからのメールを読んだ……――。





 あー、あたしだ、ミカンだ。

 カミサマにワイズリエル、ヨウジョラエルも元気にしているか?

 ちゃんと美味しいもん食べてるか?

 クーラは、みんなの生活習慣の乱れをしきりに心配してたけど、まあ、あたしはそれについては気にしてない。たまには羽を伸ばしても好いんじゃないかって思ってる。

 ていうか。

 クーラがキッチリしすぎなンだよな。


 今ちょうどキャンプしてるとこなんだけど。

 クーラが休んで、あたしが見張りをしてて、でも、モンスターなんか全然いないし、ここは痩せた土地で見晴らしがすごく良いから来たら来たですぐ分かるしさ、そんな感じでメールを書いてンだけど。

 クーラの寝顔を見てるんだけどさ。

 クーラって、ほんとキッチリしてンのな。


 ピクリとも動かない。

 真っ直ぐ上を向いて、真っ直ぐ背筋を伸ばして、手足を真っ直ぐにして寝てる。

 このまま宇宙空間に射出されンじゃね?

 みたいな格好で寝てる。

 すげえ整った人形みたいな綺麗な顔で、まあ、それは起きてるときもそうなんだけど、とにかく寝てる。

 まったく動かないンだよ。

 それでピッタリ四時間経つと起きる。


 おまえはロボットか――ってツッコミを入れそうになったけど、でも、寝言とか言うし、寝言を言いながら幸せそうな顔になるから、たぶんロボットじゃない。

 だから結局、ツッコミは入れなかった。

 寝言言ってるヤツと会話してはダメって言うしな。

 ああ、そうそう。

 クーラって寝言でも丁寧語なのな。

 あと『さん』付けなのな。

 ちょっと笑っちゃった。あはははは。


 で。

 あんまり書くと、あたしのことも散々書かれそうだからここら辺で止めておく。

 そんなメールもらっても困るよな。

 それに読んでもつまらないと思うぜ。




 さて。それはさておき、あたしたちなんだけど。

 今日のお昼過ぎに、黒い霧のところに到着した。



挿絵(By みてみん)



 黒い霧は、遠くから観るとぼんやりと黒ずんでいて。

 なかの様子がまったく見えないンだけど。

 間際まで来ると、というか、なかに入ると普通の霧と同じ感じだった。

 まあ、あれだ。

 穂村の早朝なんか結構、霧深いンだけどさ。

 それなんかより、ずっと視界が良いんだよ。

 結構先まで見えるから、霧のなか、モンスターとバッタリみたいなことはないと思う。


 だけど、カミサマのテレビで見れないっつーし、クーラも気をつけたほうが良いってウルサイから、深くは入らず、今日は入ってすぐのところで色々調べてみた。

 ああ、そうそう。

 もちろん、見渡した限りではマリはいない。

 いたら問答無用で捕まえてやるつもりだけど、まあ、見つからないンだわ。



 でさ。

 黒い霧の話に戻るンだけど、あたしにはまったく無害だな。

 それに、アダマヒアや穂村の連中にも無害な霧だ。

 それはなんでかって言うと……なんか上手く文章にできなかったから、箇条書きにしてみたわ。



 黒い霧の特徴

 【1】視界はそれほど悪くなく、戦闘にはまったく支障がない

 【2】カミサマのパワーを拡散吸収する

 【3】そのことによって、カミサマのパワーを放出するアイテムは使えない

 【4】ただし、すでに作られたアイテムはそのままである



 それで簡単に補足するけれど。

 【3】の『カミサマのパワーを放出するアイテムは使えない』は、これはカミサマのパワーが放出した瞬間、霧に吸収されちゃうんだよ。


 具体的には、地上に降りるときにもらった天空界にワープする指輪。

 あれは使えない。

 光った瞬間、その光が霧に吸い込まれて終わり。

 でも。だからといって、パワーを全部吸われたかといえば違うんだ。

 霧の外に出て使えば、いつものようにちゃんと使えると思う。



 なんでそう言い切るかというと。

 あのゲーム機みたいな装置がそうだったから。

 あれも霧のなかでは使えなかったンだけど、霧の外に出たらまたちゃんと使えるようになったんだ。


 それと【4】にも関係するんだけど。

 カミサマが作ったアイテムは、霧のなかに入ったからといって、壊れたり霧に吸い込まれたりするわけじゃない。

 クーラの剣や盾なんかは、カミサマの作った物なんだろ?

 つーか、服もそうなのか。

 それらが消えたりしないから、あたしたちは【4】と結論したわけだ。



 ちなみに。

 モンスターから奪った装置に、面白い記述を発見した。

 あたしたちのデータだ。


■――・――・――・――・――


クーラ

レベル:26 属性:ロウフル

クラス:騎士 性別:女

特性:正義感が強い

 体力が少ない仲間の盾となる。身代わりになって自身がダメージを受ける


ミカン

レベル:25 属性:カオス

クラス:忍者 性別:女

特性:運動神経抜群

 体力が多く、敏捷性が高め。ただし、魅了への耐性が低い


■――・――・――・――・――


 まあ、なんかあれだ。

 まるでクーラが主人公っぽくて、あたしが脇役みたいとか、なんで、あたしのほうがレベルが低いんだとか、よくよく考えてみると、あたしのことまったく褒めてないとか、なんだか悪口のように思えてきたとか、言いたいことは色々あるんだけれど、それを全部呑みこんで、あたしはこの装置を結構楽しんでいる。


 ほんとは、あたしの職業は『モンク』で属性が『ニュートラル』だったんだけど、何度か叩いてたら『忍者』に変わった。それと同時に『カオス』になった。

 結構、いい加減な装置だよな。



 ああ、そうそう。

 あたしのことはどうでも好くって、重要なのはコレなんだ。


■――・――・――・――・――


マリシオ

レベル:25 属性:カオス

クラス:呪術師 性別:女

特性:ゲス

 瀕死の敵と、状態異常の敵に対して、攻撃力がとても増大する


■――・――・――・――・――


 このデータってマリだよな。

 名前は『マリシオ』になってンだけど、それは四文字までしか表示できないからで、まずマリに間違いないと思うンだ。

 まあ。

 だからどーだと言われても困るンだけど。

 なにかの役に立てばと思ったから、メールに書いてみた。


 といっても、すぐに帰るつもりだ。


 なんか、黒い霧の先にコイルのような装置が見えるけど、マリは見あたらないし、装置を破壊すればいいのか、それともあの施設を制圧すればいいのか、そこら辺のことを一度相談したほうが良いと思ったんだ。


 というわけで、夜が明けたらもう一度霧を調べてから、いったん戻る。

 そんな感じだから、よろしくな。





 ――……読み終えた俺は、穏やかな笑みをした。

 ミカンのカラっとした笑顔を思い出した。

 彼女の手料理を思い出した。

 それを食べたときの、首をかしげた、すこし不安そうな顔。

 ぱっと花が咲いたような笑顔。

 得意げな顔、ぷるんとゆれる胸を思い出した。

 思わずニヤニヤしてしまった。

 と、そこに。



「よっ!」

 ミカンとクーラが帰ってきた。

 目と目が逢うと、ふたりの顔には、じわっと喜びが浮かんだ。


「おかえりなさい」

「ただいま」

「ただいま帰りました」

 ちょうどそのとき、ワイズリエルとヨウジョラエルが顔を出した。

 というより、飛びこみ抱きついた。


「おねえちゃんお~」

 そしてこの日は、久しぶりに全員そろっての食事、ミカンの手料理をたっぷり堪能したのである。



――・――・――・――・――・――・――

■神となって2ヶ月と12日目の創作活動■


 黒い霧について知った。



 ……ミカンは「まあ、ミノフスキー粒子みたいなもんだろ」と乱暴にまとめたけれど、なんか違うし、その違いをクーラがいちいち指摘してくるのが容易に想像できたから、とりあえず俺は聞かなかったことにした。



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