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6日目。村の命名、そして

 モンスターとは、村から出てすぐに遭遇した。

 巨大モンスターは何匹かのモンスターを引き連れていた。

 そのことに問題はなかったのだけど。

 村から何人かが見物に付いてきたことが、俺を苦しめた。

 『神の力』を使えないからだ。


 そう、俺は『神の力』を持ってはいるが、基本的には素人(しろうと)だ。

 剣の修行などしたことないし、戦闘訓練なども受けていない。

 まあ、戦闘経験なら結構あるのだけれども。


「ああ、そうか。結構、経験豊富だよな」

 俺は自嘲気味(じちょうぎみ)に笑い、大きく息を吐いた。

 気持ちをリセットして、顔をあげた。



 巨大モンスターは遠く、かすかに見える。

 その前座のように、数匹のモンスターが立ちはだかっている。

 その前座モンスターをクーラとミカンは次々と倒している。


「やあっ!」

 クーラは盾を構え突進する。

 吹っ飛んだモンスターに剣を降ろす。

 叩き斬る。

 それでも死なない場合は、盾で殴る。

 近くに他のモンスターがいれば、やはり盾で殴る。

 盾を構えて突進する。斬りつける。

 あとはこれの繰り返し。

 クーラはひたすら直線的な動きで、モンスターを倒していた。



 一方、ミカンはというと。

「おらァ!」

 めちゃくちゃガラが悪かった。

 ミカンは短刀を片手にぷらぷら歩いていた。

 モンスターが近づけば、それで斬りつけた。

 というより、首をカッ斬った。

 あるいは蹴り殺していた。

 ミカンは、まるでチンピラのように歩き、次々と血を噴きあげていた。

 彼女の歩いた後には、モンスターの死体が残るのみだった。



「おっかねえな」

 俺は苦笑いをしながら、彼女たちを追いかけた。

 追いついたときには、前座モンスターはすでに全滅していた。


 と、そこに。

 クマとトカゲを掛け合わせて巨大にした感じのモンスター。

 恐竜のような巨大なモンスターが、もそりと顔を出した。


「うわっ、デカイなあ」

「ヒグマよりも、かなり大きいですね」

「10メートルあるかなあ……」

 俺はぼんやり見上げ、だいたいビルの四階くらいかなあと目測した。

 しかし、恐れはしなかった。

 戦闘経験と『神の力』への信頼が、俺を落ち着かせていた。

 それに、見物人にバレないよう『神の力』をコッソリつかう方法を思いついていた。



「俺がやるよ」

 と言って前に出る。

 クーラとミカンが、母性に満ちた笑みで後ろに下がる。

 巨大モンスターが気だるそうに俺を見下ろす。

 その様子に村人やギルド会員たちが息を呑む。

 そして――。



 俺は低く鋭く間合いを詰めた。

 ドスンッ!

 と、モンスターの手が振りおろされる。

 俺はその手に飛び乗った。

 と同時に、モンスターの真下に竹を生やした。

 短く、しかし鋭い無数の竹を、見物人にバレないよう伸ばしたのだ。


 ブモォオオォオォォオオオ!

 モンスターの腹に竹が刺さる。

 (もだ)え、身をよじり、()()り、()える。

 その勢いを利用して、俺は天高く飛び上がる。

 コッソリ『神の力』を使ったのは言うまでもない。

 俺は両手の剣を振り上げた。

 そして、斬り降ろそう――としたのだけれど、ここでふと思った。


「なんかツヴァイの丸パクリだよな」


 いや、ほんとオトナゲないとは思うのだけど。

 このときの俺は、妙な自尊心と反骨精神から、余計なオリジナリティを発揮させた。たぶん、アダマヒアの見物人は、ツヴァイを忠実にマネすることを望んでいるのだけれども。


「まあいいや!」

 俺は、ふた振りの剣を持ったまま、背中の剣を掴んだ。

 そして、三本の剣をまとめて両手で握った。

 ぐいっ!

 ぐっ!

 ぐぐっ!

 っと、Zのかたちにモンスターを斬った。

 着地した俺は、なんだか照れくささもあって、

「ファっ、ファイナルレターっていう技なんだけど」

 と頭をかきながら言った。


 すると。

 無限にも感じる静寂の後。

 モンスターが悲鳴とも空気の振動とも付かぬ巨大な音をあげ、地に伏した。

 大地が振動した。

 そして、歓声があがった。

 ミカンとクーラと村人と、ギルド会員が興奮にわきたっていた。――





 村に帰ると、村長とギルド支配人が来て言った。


「英雄さまッ☆ 村に名前をつけてくださいッ☆」


 この言葉に村人は驚きと喜びの声をあげた。

 村人だけでなく、ギルド会員も喜び頷いた。

 そして、いっせいに俺を見た。


「じゃあ……」

 俺は、あごに手をあて、眉を絞った。

 そして村の名前を考えた――。


 もうヘブライ語とかスペイン語とかは嫌だった。

 しかも最近のアダマヒアでは、ドイツ語っぽい名前が流行ってる。

 調べないと分からない単語が地上界にあふれはじめてる。

 いや。

 ことの発端は俺なのだけど。

 ファンタジーっぽいかなってアダムたちに名前をつけたからなんだけど。

 まあでも。

 それはともかくとして。

 俺は深くため息をつく。


 ――そして英語で命名しようと結論した。



「じゃあ、村の名前はヴィレッジね」

 すると即座にクーラがツッコミを入れた。

「ヴィレッジって、村って意味ですよね。そのまんまじゃないですか」

 なかなか鋭いツッコミである。

 しかし俺は引かなかった。


「ザ・ヴィレッジ」

 念を押すように、もう一度言った。

 ただし冠詞の『ザ』がついている。


 するとクーラは母性に満ちたため息をついた。

 その横でミカンが、ぽんと手を叩いた。

 満面の笑みで頷いた。

 そして。



「ザヴィレッジ! カッコイイじゃん」

 とミカンは叫んだ。

 すると村人がわいた。


「いや、ザヴィレッジじゃなくて、ザ・ヴィレッジなんだけど」

 と、俺は慌てて訂正する。

「ああン!?」

 ミカンは面倒くさそうに眉をゆがめてから、すぐみんなに向かって、



「ザヴィレッジ!」

 ともう一度叫んだ。

「ザヴィレッジ!」

 何度も叫んだ。

 歓声が上がった。村は歓喜につつまれた。


「いやっ、ちょっと」

 慌てふためく俺に、クーラは微笑んだ。

「いいじゃないですか」

 やわらかい笑みをした。

 それと同時に、俺の手をミカンが引っぱった。

 俺は村人の中心に連れられて、酒を持たされた。



「英雄とザヴィレッジに乾杯!!」

 村中に響きわたる拍手と歓声のもと、俺は酒を一気に呑み干した……――。



挿絵(By みてみん)



 ――……天上界に帰ると。

 今度はワイズリエルとヨウジョラエルの歓待を受けることになった。

 ふたりは興奮して俺に抱きつき、かみつくように何度もキスをした。


「サキュバスだぞーッ☆」

「さきゅきゅすだぞ~」

 そう言ってしがみつく二人に、俺たちは微笑んだ。

 とりあえず抱きつかれたまま、リビングに向かい、ソファーに座った。


 そして、もみくちゃにされながらも、テレビをつけた。

 地上界をそこに映したのだ。

 すると。

 クーラが髪を耳にかけて、すうっと目を細めた。

 画面の西端を指さして、こう言った。



「あの、ここに川が出来てませんか?」



挿絵(By みてみん)



――・――・――・――・――・――・――

■神となって2ヶ月と6日目の創作活動■


 南の村に『ザヴィレッジ』と名付けた。

 ・宿屋の一階が酒場になった


 西部に謎の川を発見した。



 ……また俺が勝手に創ったのだと責められたけど、まったく身に覚えのない川である。



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