2日目。モンスター対策ギルド
今日は、ギルドを創設することにした。
俺とミカンは、ワイズリエルにアドバイスを求めた。
するとワイズリエルは、
「そもそも『ギルド』とはなにか――ッ☆」
と、前置きしてから言った。
「そもそも中世ヨーロッパにおけるギルドとは、職業毎に存在する組合のことッ☆ たとえば、商人ギルドや手工業ギルドといった組合のことでしたッ☆」
「商人や鍛冶職人、服飾職人などの組合か」
「はいッ☆ これらギルドの主な目的は、政治に圧力をかけることですッ☆ 彼らは、その職業に有利な政策を通すために結束しましたッ☆ もちろん、商品の品質を保証するための結束でもあるのですがッ☆」
「主な目的は上への突き上げなのだな」
「その通りですッ☆ ちなみに、ミカンさまがイメージしているギルドは、それとは別のものッ☆ おそらくゲームに登場するギルドだと思われますッ☆」
「よく分かンねえけど、鍛冶屋の組合なんかとは違いそうだ」
「はいッ☆ ゲームのギルドは、漁業組合や猟友会に近いもの……狩猟時期や数を管理する組織に近しいですッ☆ そして、ご主人さまの創ろうとしているギルドは、こちらに近いと思われますッ☆」
「そのようだな」
俺とミカンが頷くと、ワイズリエルは微笑んだ。
「じゃあ、そのギルドを創るときに注意することは?」
俺が訊くと、ワイズリエルは言った。
「仕事の範囲をハッキリさせることですッ☆ 聖バイン騎士団の仕事を奪わないことを、まず初めに宣言しておくことですッ☆」
「なるほど」
「そしてッ☆ どこかに従属することですッ☆ さらには、アダマヒアの騎士団や穂村の自警団との関係……上下関係はどうなのかなど、そういったことも決めておくと好いでしょうッ☆」
「よし分かった」
俺たちはしばらく話し合った。
そして、こう結論した。
「アダマヒア王国に属そう。そして、聖バイン騎士団の下につく。騎士団から、交易商の護衛を請け負うかたちにしよう」
なぜなら、穂村は交易にひたすら受け身で、あの台地から出ようとしないからだ。
彼らに領土的な野心はまるでなかった。
あの台地の外にまったく興味を示さなかったのだ。
「というわけで、アダマヒアに使者を送ろうか」
「はやくしようぜ」
「楽しみですッ☆」
俺たちは、教会に使者を送った。
と、ちょうどそのとき、クーラがやってきた。
「どうしたのですか?」
「ああ、ギルドを設立することをね、今教会に伝えるところだよ」
「では、いよいよですねっ」
そう言ってクーラは、わずかに喜びを顔に浮かべた。
クーラは整った顔をしているから冷淡に見えるけれど、実のところ、感情がかなり表情に現れる。
というより、なにを考えているのか分かりやすい娘だと思う。
「それでギルドなんだけど、騎士団の下につこうと思うんだ」
俺がそう言うと、ワイズリエルが要点をまとめて説明してくれた。
クーラはそれを素早く理解した。
「分かりました。あの、もしよろしければ使者に指示を出したいのですが」
「ああ、好いよ。というか、お願いできるかな」
クーラは元・騎士である。
彼女は真面目で頑固なところがあって、まるで交渉ごとには向いてないのだけれど、しかし、騎士団の規範には誰より詳しかった。
そしてなにより、堅物ぞろいの騎士たちとメンタルがよく似ていた。
まあ、身もフタもない言いかたをすると。
優等生同士、ウマが合う――といった感じである。
「では、騎士団と交渉してみます」
クーラは、俺の右に座った。
コントローラを持つ俺の手に、そっと彼女は手を添えた。
ぴたっと、そのフラットな胸を寄せて、クーラは画面を見つめた。
使者が教会に着くと、クーラは交渉をはじめた。
自分たちで商隊を護りたいのです。
自分たちの力で村を護りたいのです。
そのためのギルドを創設したいのです、と。
じゅんじゅんとして、女教師のごとく、また母親のごとく。
クーラは冷淡な口調で、まるで責めるようにギルドの必要性を説いた。
その高圧的な言いかたに俺たちはヒヤヒヤしたが、しかし、どういうわけか交渉はすんなりまとまった。
すなわち、ギルドの創設は聖バイン教会公認のものとなり。
ギルドは聖バイン騎士団の外部委託組織のようなものになった。
もちろん、村はアダマヒア王国に属することとなる。
「すげえ」
「教会が太陽王ドライに話を通してくれました」
「しかし、あっさり認められたな」
「クーラさまの交渉が素晴らしかったのですッ☆」
「いえ、即断即決したドライ王こそ優れているのです」
「たしかにそれもあるな」
そう言って俺たちが頷いていると、
「なに言ってンだ」
と、ミカンが不敵な笑みで大らかな声をあげた。
そして言った。
「カミサマの着眼点が好かったからだろー? このギルドは、みんなが欲しいものだった。だから、あいつらはソッコーでサンドーしたンだよ」
「ええ。たしかに」
「さすがです、ご主人さまッ☆」
「いっ、いやあ」
と、俺は照れ笑いで頭をかいた。
ミカンは誇らしげに何度も頷いていた。
「じゃあ、建物を創るか」
「すでに村人たちが居ますから、ちゃんと人間たちに造らせるのですよ?」
「ああ、そうだった」
俺は『早送り』しながら、職人に家屋を建てさせた。
ギルドハウスが完成すると、受付カウンターを設置した。
そしてまずは、交易商人の護衛を募集した。
初めのころは、護衛に聖バインの騎士たちが付き添ってくれた。
そのことで、ギルドの信頼は高まった。
そして、ぽつぽつと応募してくる者があらわれた。
「そろそろ近くの森でも探索させようぜ」
「ああ。モンスター観察系の募集もかけてみよう」
北の森には、モンスターが棲息しているようだった。
それらは川沿いを進む商隊を滅多に襲いはしなかったが、しかし、村の畑にはたびたび顔を出した。
ギルドはそのモンスターを追い払う仕事を請け負った。
その様子を、俺たちはモンスター監視衛星でチェックした。
「おっ!? 意外と頑張るじゃん」
「我がギルドメンバーもなかなか優秀だな」
「なんだよ偉そうにぃ」
俺たちは、着々と成果を上げるギルドに、満ち足りた笑みをした。
――・――・――・――・――・――・――
■神となって2ヶ月と2日目の創作活動■
モンスター対策ギルドを創設した。
・聖バイン教会公認の組織となった
・聖バイン騎士団の外部委託組織のようなものになった
……そのことで村はアダマヒア王国に属することになった。




