5日目。文化レベル
エロ可愛い天使ワイズリエルと、金髪幼女な天使ヨウジョラエル。
ふたりと一緒に昼食を食べていると、ワイズリエルが思い出したかのように言った。
「ああ、そういえば、ご主人さまッ☆ 集落の文化レベルはどうしますか?」
俺はワインを口に含み、体ごと彼女のほうにむけた。
世界創造の打ち合わせをするためである。
「ご主人さまッ☆ 東ヨーロッパのような土地に集落を創ることは、すでに決めました。それで次に、文化レベルを決めたいのですッ☆」
「ん?」
「原始人のような文化レベルから集落をスタートさせますか? それとも、世界が滅亡した20XX年の文化レベルで集落を創りますか?」
「ああ、それは」
決めてるよ――と、俺は言った。
すこし照れ笑いをして、しかしハッキリと言った。
「剣と魔法のファンタジー世界を創りたい」
すると、ワイズリエルは満ち足りた笑みで頷いた。
そしてヨウジョラエルが、パスタを口いっぱいに含んだまま顔をあげた。
俺とワイズリエルが黙ったまま、ニヤニヤしていたからだ。
「ああ、もしかして気付いてた?」
「先日のリストを見て、なんとなく察していましたッ☆」
「やっぱり分かった」
「はいッ☆ ですから年代を書き込んでみましたッ☆」
俺たちは年表を眺めた。
■作品年表――・――・――
1万2000年ほど昔 『コナン・ザ・グレート』
184年~ 280年 『三国志演義』
~539年 『アーサー王物語』(+1130年と1485年頃の風俗と宗教観)
1100年~1125年 『水滸伝』『金瓶梅』
1199年~1216年 『ロビン・フッド』
1493年■唐辛子 ヨーロッパ伝来 (コロンブス新大陸発見)
1542年■騎兵用短銃の発明(1543年種子島伝来)
1610年~1643年 『三銃士』
18世紀■トマト ヨーロッパで食用に
1776年~1976年 『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』
1827年■イギリスで蒸気自動車の定期バス運行
1836年■サミュエル・コルトがリボルバーを開発
1885年 『ドラキュラ』
1885年 『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』
1900年 『オズの魔法使い』
1990年代 『ハリー・ポッター』
■――・――・――・――・――
「ご主人さまの好きな作品の文化レベルは、大きく分けて3つですッ☆ まず、1万2000年ほど昔という『古代』。次に、アーサー王から新大陸発見までの『中世ヨーロッパ』。最後に、蒸気機関と銃の『西部開拓時代』ですッ☆ 三国志とハリー・ポッターは年代的には外れますが、結局は『中世ヨーロッパ』風ファンタジーに含まれると思いますッ☆ その詳しい説明をしましょうか?」
「いいや」
「ですよねえッ☆」
「それでご主人さまッ☆」
「中世ヨーロッパがいい」
「中世ヨーロッパをベースにした、剣と魔法のファンタジー世界ですねッ☆」
「そのとおり」
「だったら、『アーサー王物語』ですべて説明できると思いますッ☆」
そう言ってワイズリエルは、メモ書きを差しだした。
■――・――・――・――・――
中世ヨーロッパは、以下の3つに分類される
●中世前期 500年~1000年
ゲルマン民族の大移動 (蛮族の侵入)から
マジャール人、ノルマン人の侵入が収まるまでの時代
●中世盛期 1000年~1300年
十字軍により西欧が拡大、教皇権が世俗王権と争う時代
●中世後期 1300年~1500年
ルネサンスの興隆や百年戦争の争乱を経て、絶対王制にむかいはじめる時代
■――・――・――・――・――
「『アーサー王物語』は、中世前期が舞台ですッ☆ ですが、中世盛期にまとめられ、さらに中世後期にロマンスになりますッ☆ ご主人さまがご存知の『アーサー王物語』は、このふたつの文化・価値観で脚色されたファンタジーな世界ですッ☆」
「1130年と1485年頃の風俗と宗教観で、脚色されているのか」
「詳しい話をすると一日かかってしまいますッ☆」
「興味はあるが、今日のところはいいや」
「かしこまりましたッ☆ でしたら、異なる時代の文化をミックスすると、ファンタジーな雰囲気になる――とだけ、おぼえておいてくださいッ☆」
「りょーかい。で、さじ加減が大切なんだろ?」
「さすがです、ご主人さまッ☆」
そう言って、ワイズリエルは上体を乗り出しキスをした。
俺は驚き、ちらっとヨウジョラエルを見た。
ヨウジョラエルは楽しそうに、パスタから唐辛子をより分けていた。
で。
たしなめるようにワイズリエルを見ると、
「きゃはッ☆」
と、彼女はイタズラな笑みをして、そして可愛らしくウインクをキメた。
「………………」
その後。
文化レベルは『アーサー王物語』準拠でいいや――って感じで話はまとまった。
俺は、お昼寝するヨウジョラエルに膝枕をしながら、ワインを飲んでいた。
ワイズリエルは首をかしげて、しばらく考えていたが、
「ご主人さまッ☆」
と、妙な顔をして言いだした。
「異なる時代の文化をミックスするとき、この唐辛子とトマトだけは、気をつけたほうが良いかもしれませんッ☆」
――・――・――・――・――・――・――
■神となって5日目の創作活動■
文化レベルを『中世ヨーロッパをベースにした、剣と魔法のファンタジー世界』とした。
……とりあえずは大ざっぱに決定し、詳細は創りながら決めていくつもりだ。というか細かいことは全部、ワイズリエルにブン投げようと思ってる。