4日目。二人目の天使
「絵の描ける天使を、創ってえッ☆」
と、ワイズリエルにおねだりされた翌日、俺は二人目の天使を創ることにした。
その前に念のため、ワイズリエルに確認をした。
「『絵の描ける天使』を創ればいいんだな?」
「はい、ご主人さまッ☆ ワイズリエルはインターネットなどから情報を得ることができます。そして、それをご主人さまに創ってもらうのですが、しかし、上手く伝えられないものもあるのですッ☆」
「それを『絵の描ける天使』に描いてもらうのか」
「はいッ☆ ワイズリエルの得た情報を受信し、精密描写する天使ですッ☆」
「そして、その天使が精密描写したものを、俺が創る」
俺は深く頷いた。
すると、ワイズリエルは少し得意げに、だけど遠慮しながら言った。
「トリニティ……三位一体という概念がありますッ☆ 三者はそれぞれ独立の相をなしつつ、一体として働き、本質において同一である――という考えかたですッ☆」
「それを俺とワイズリエル、そして新たな天使が体現するわけか」
「神っぽいシステムを組んでおくと、もしかしたら後で役に立つかもしれませんッ☆」
「ワイズリエルが知識を得て、それを新天使が伝え、そして神の俺が創造する」
ちょっとカッコイイかもと思った。
「それにご主人さまッ☆ これからは地形や建造物なども創ることになります。そういった話のときに、図面が描ける天使がいると」
「理解が早いか」
「楽ちんです」
「楽か、たしかにそうだよな」
「そうなのです」
俺とワイズリエルは、ゆるーい感じの笑みをした。
で。
「じゃあ、さっそく創るけど」
と、立ち上がったそのとき、
「ご主人さまッ☆」
と言って、ワイズリエルが手をぎゅっと握った。
そして、じいっと切なげな瞳で俺を見た。
瞳をうるませて、そのまま見つめたのだ。
「………………」
俺はその瞳から、彼女の気持ちを察した。
ワイズリエルは世界創造の利便性から、二人目の天使が必要だと言った。
しかし彼女個人としては、その天使の存在は、あまり好ましくないのだ。
ワイズリエルは、俺の愛が新しい天使に移ってしまうことを心配している。
その新しい天使の出現によって、俺が冷たくなるんじゃないかと、不安になっているのだ。
「大丈夫だよ」
俺はワイズリエルにやわらかく頷いた。
彼女は、申し訳なさそうな、恥ずかしがっているようなそんな顔をして、こくんと頷いた。
俺は父性に満ちたため息をつき、新天使の創造に集中した。――
二人目の天使。
その特技は、精密描写である。
ワイズリエルから情報を受信し、イラスト化し、正確に俺に伝える能力である。
そしてそれとは別に、純粋に絵が上手い。
さて。
そんな天使だが、男は面倒なことになりそうなので除外する。
さらに、ワイズリエルと俺の心の安息のために、恋愛対象外な年齢とする。
となると候補は、よぼよぼのババアか、よちよちの幼女になるのだが……。
「介護とか大変だよな」
俺はため息をついて結論した。
そして虚空を指差し、宣言した。
「出でよ! 二人目の天使!! ヨウジョラエル!!!」
すると、ぴっちぴちの幼女が出現した。
幼女は首をかしげ、ニコッと屈託のない笑みをした。
そして、金髪幼女な天使・ヨウジョラエルは、
「おにいちゃ~ん!」
と叫んで、俺の胸に飛びこんだ。
それを見て、ワイズリエルは愕然とし、真っ青になった。
やがてその表情は、スケベな笑みへと変化した。
「え? ダメ!? だってほら、恋愛対象外でしょ!?」
「ふうん?」
ワイズリエルは、じとっとした目で、にたあっと笑う。
「いやっ、だからこの子は対象外、キミは恋愛対象。ダメ?」
「ふうん?」
ワイズリエルが、ぷっくらと可愛らしく頬をふくらませる。
それをヨウジョラエルが、まるで赤ちゃんのような笑みで見る。
俺が、沈黙に堪えきれず泣き笑いの顔で頭をかいている。
そして――。
「きゃはッ☆」
ワイズリエルは突然、俺の腕にしがみついた。
おっぱいを思いっきり押しつけた。
そして顔をあげ、上目遣いで甘えて言った。
「平等に愛してくださいねッ☆」
「はァ。……はい」
ワイズリエルとヨウジョラエルは、満面の笑みをした。
――・――・――・――・――・――・――
■神となって4日目の創作活動■
精密描写ができる美幼女――ヨウジョラエルを創造した。
・天使ワイズリエルが知識を得て
・それを天使ヨウジョラエルが伝え
・そして神の俺が創造する
――という三位一体をかたちにしてみた。
……なにやらワイズリエルには勘違いをされているが、幼女は恋愛対象外である。