3日目。大地
乳が、でかい。
ワイズリエルのワキからのぞくハミ乳を眺め、俺はぼんやり思った。
三日目の朝のことである。
「どうしたんですか? ご主人さまッ☆」
ワイズリエルは突然、俺を見た。
イタズラな笑みをした。
「へっ? いや」
「きゃはッ☆」
そして、動揺する俺に鋭く飛びつきキスをした。
俺は泣き笑いの顔をしたが、しかし内心喜んでいた。
ただ、世界創造を中途半端なままにするのも、気持ちが悪かった。
だから俺は、創世を次のステップに進めることにした。
「人間を創って、村にでも住ませたいんだけど」
すると、ワイズリエルは満面の笑みをして、
「かしこまりました、ご主人さまッ☆」
と言った。
そして、俺のことをうかがうような瞳で、
「ですがその前にッ☆ 大地を創りましょうッ☆」
と言った。
俺は微笑み頷いた。
「ご主人さまッ☆ いきなり土を盛っても好いのですが、なにかを参考にしたほうが楽だと思いますッ☆」
「それもそうだな」
「お好きな映画や漫画、小説を教えてくださいッ☆」
「りょーかい」
俺は好きな作品をリストアップした。
そして、それをワイズリエルが整理した。
「ご主人さまの好きな作品の舞台を以下にまとめましたッ☆ ただ、全体的に大ざっぱです。特に中国とか」
「まあ、大地を決めるためだから、大ざっぱで問題ないだろ?」
「はいッ☆」
俺とワイズリエルはリストを眺めた。
■作品の舞台――・――・――
イギリス
『アーサー王物語』のキャメロット
『ロビン・フッド』のシャーウッドの森
『ハリー・ポッター』のホグワーツ魔法魔術学校
フランス
『三銃士』のパリ
東ヨーロッパ
ルーマニア『ドラキュラ』のトランシルヴァニア
南ウクライナ『コナン・ザ・グレート』のキンメリア
アメリカ
カンザス州『オズの魔法使い』のドロシー家(オズの国は異世界)
カリフォルニア州『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3』のヒルバレー
ルイジアナ州『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のニューオリンズ
中国
『西遊記』五行山
『三国志演義』魏・呉・蜀
『水滸伝』『金瓶梅』梁山泊・河北
■――・――・――・――・――
「中国の四大奇書などは舞台が広大すぎてよく分かりませんが、だいたいの作品が内陸部ですねッ☆」
「ん? ……ああ、海があまり出てこないよな」
「はいッ☆」
ワイズリエルは安堵のため息をついた。
そして、
「地中海地方とかなくて良かったですッ☆」
と言って可愛らしく舌を出した。
俺が首をかしげると、ワイズリエルは言った。
「最初に集落を創るのは内陸部がオススメですッ☆ 海岸があるところからスタートすると面倒くさいのですッ☆」
「それはつまり……。『まっ白』の真ん中に地面のエリアを創り、そこから四方に世界を広げるということか?」
「その通りです、ご主人さまッ☆」
ワイズリエルは、本当に嬉しそうに両手を胸の前で合わせた。
「それでは次に気候なんですがッ☆ 乱暴にまとめると、日本より寒くて乾燥してますねッ☆」
「そうそう、そんな感じ」
「植生は東ヨーロッパをベースにすると、のちのち楽ができそうですッ☆」
「まかせるよ」
「はいッ☆」
ワイズリエルは喜んでメモ書きをはじめた。
その様子を見て、俺は満ち足りたため息をついた。
やっぱり、このワイズリエルは正解だ。
この娘の大ざっぱで大らかな感じ、テキトーな感じはとても好い。
そしてなにより飽きっぽいところが、すごく好い。
乳も、でかい。
でかくなった。
まあ、俺がでかくしたのだけれども。……。
俺は笑顔でワイズリエルからメモを受け取り、そしてその通りに創世した。
――世界はメモ書きの通りになった。
「あとは集落を創りながらで好いと思いますッ☆ ですが、その前にご主人さまッ☆」
ワイズリエルは怯えて言った。
ちらりと俺に流し目を送り、頬を赤らめた。
そうやって顔を背けたまま俺の太ももに手を伸ばし、滑り込ませた。
「なっ!?」
俺が動揺したところに、ワイズリエルはするどく言った。
「絵の描ける天使を、創ってえッ☆」
――・――・――・――・――・――・――
■神となって3日目の創作活動■
『まっ白』の真ん中に、ぽつんと大地を創った。
その大地は日本より寒くて乾燥している。
暫定的に東ヨーロッパの植生とした。
……実際にはテキトーに決めているだけなのだが、こうやってまとめると真面目に創世しているように見えてしまうのが、困りものである。