表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/128

8日目。秘密基地

 秘密基地は、アダマヒアの東の山奥にある。

 水源からすこし南に登り、山の稜線(りょうせん)を越えて降りたところ、窪地(くぼち)にある。

 窪地には木が生い茂っている。

 秘密基地は、木の影にひっそり建っている。


 今日は、俺ひとり、秘密基地に降り立った。


挿絵(By みてみん)



 さて。

 ここ秘密基地のある地上界は、天空界から『早送り』をすることによって、あっという間に時間が経過するのだけれど……。

 扉を開いた俺は、さっそく指を鳴らした。

 それで基地のなかは綺麗になった。


「ああ、すばらしき神の力。ガチのチート能力」

 俺は満ち足りたため息をつき、机に向かった。

 そして、引き出しを開けて日記を取り出した。


「ふふっ」

 俺は、つるつるの日記を見てほくそ笑む。

 この日記帳には、『早送り』で()ちてしまわないよう、特殊な加工を(ほどこ)した。

 その加工が上手くいったことに、俺は喜んだのだ。



「さっそく、ウーツのことでも書くか……」

 俺は昨日観たこと、ウーツのことを日記に書いた。

 ほかにもアダマヒアが王国になったこと、製鉄所が順調なことなども書いた。

 日記は、天空界でも書けるけど、ワイズリエルたちに見られたらなんだか照れくさいし、それに、見られて恥ずかしいようなことも書きたかったのだ。

 だから、秘密基地に来たときにコッソリ書くことにした。



 ちなみに。

 天空界からは、テレビで地上界の様子を覗くことができる。

 当然、この秘密基地も見ることができる。

 だから今、ワイズリエルたちが、ここを覗き見している可能性もあるのだけれども、しかしそれは、ほぼありえないと思ってる。


 なぜなら、この秘密基地の位置を示す★マーカーを、出るときにこっそり抜いてきたからだ。

 そうなってしまえば、この広大な山脈の、しかも木影にポツンと建った山小屋など、上空からとても探すことなどできないのだ。

 映像をズームしようにも木々が邪魔をする。

 地面すれすれまで降りないと観ることができない。

 そんな高さまで降りて小さな目標を探すなど、とても現実的ではない。


「それに、道義的な話だよな」

 たとえ(のぞ)くことができたとしても、覗かないのがマナーだと思う。……。





 さて。

 日記を書き終えた俺は、次に鉢植(はちう)えをいくつか創り出した。

 唐辛子やトマト、それに様々なハーブ、香辛料の鉢植えだ。


「種から育てるのは難しいから、苗木から試すのさ」

 俺は基地の外に鉢植えを飛ばした。

 両手を伸ばし、まるで魔法使いのように鉢植えをあやつった。

 そうやって、外に飛ばし、次々と苗を植え込んでいったのだ。



「まあ、天空界でやればいいのだけれど」

 飽きたときに笑われそうだし、たとえ長続きしたとしても、失敗したらクーラにため息をつかれる。それになにより、彼女たちの見ている前で育てたら、


「ズルをしてしまう」

 そう。確実に俺は見栄を張る。

 間違いなく『神の力』……ガチのチート能力に頼ってしまう。

 でも、そんなことをしたら、つまらないじゃないか。

 そう思って、ため息をついたら、




「痛っ!?」

 基地の外で女の声がした。

 というか、ワイズリエルの声がした。


「はァ!?」

 慌てて飛びだすと、ワイズリエルが頭を押さえてうずくまっていた。

 そしてその足もとには、鉢植えが落ちていた。


「ご主人さまッ☆」

 ワイズリエルは、恨めしそうに俺を見上げ、そして可愛らしく舌を出した。


「どうしたの!?」

「すみません、ご主人さまッ☆ ご主人さまが飛びたつ直前に、こう、お尻をぺろんと触ったのですがッ☆」

「はァ」


「そのとき、つい、出来心で(すそ)をつかんでしまったのですッ☆」

「それで」

「一緒にッ☆」

「来ちゃったのか」

「来ちゃいましたッ☆」

「はァ」


「それでそのっ、どう説明をしようかと考えながら、秘密基地のまわりをうろうろしていたのですがッ☆」

「そこに鉢植えが飛んできたのか」

「ビックリして避けたのですけどッ☆」

「よく避けることができたな」

「私は結構、すばしっこいのですッ☆」

「まあそれは」

 よく知っている。


「ですが結局、当たってしまいましたッ☆」

「ふふっ……て、笑いごとじゃないか」

「いえッ☆ 自業自得ですッ☆」

「もう、危ないから、飛ぶときはイタズラしちゃだめだよ?」

「はいッ☆」

 ワイズリエルは泣き笑いの顔をした。




「まあ、いいや」

 俺はワイズリエルを立ち上がらせた。

 怪我(けが)したところはないかと確認し、傷があれば神の力で治した。

 ワイズリエルは喜び、抱きついてきた。

 手脚をからませ、噛みつくように何度もキスをした。


「ご主人さまッ☆ ご主人さまッ☆ ご主人さまッ☆」

 瞳にハートマークが映ってるんじゃないか――ってくらい、ワイズリエルのテンションは高かった。

 俺は、からみつく彼女を抱きかかえ秘密基地に入った。

 彼女をソファーに座らせ、



「とりあえず落ち着こうよ」

 と、ため息をつくように言った。

 すると、ワイズリエルは飛びついて、俺の胸に顔をうずめた。

 顔をあげ、上目遣(うわめづか)いで言った。


「とりあえず落ち着いた、その後は?」


 俺の全身にどよめくような快感がはしった。

 そして。

 気がつくと俺は――。





 すべてが終わると、ワイズリエルは俺の胸に(ほほ)を寄せ、甘えて言った。

「ご主人さまッ☆ ポリネシアン・セックスというものがあるのですが……」

 俺は、ぼんやりと天井を見ながら彼女の話を聞いていた。



――・――・――・――・――・――・――

■神となって1ヶ月と8日目の創作活動■


 秘密基地のまわりに唐辛子などを植えてみた。



 ……ただ植えただけで、とくに世話はしないつもりだ。いわゆる『植えっぱなし菜園』である。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ