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2日目。神の定義と天体

 二日目。

 ワイズリエルが上目遣いで、おそるおそる言った。

「ご主人さまッ☆ まず、神を定義したほうがよいと思うのですが」


 だから俺は、

「ああ、いよ」

 と、コーヒーを飲みながら言った。

 ちなみに、このコーヒーは俺が創り出したものだ。

 求めるだけで、じわあっと出現するのである。



「で、ワイズリエル。神を定義って?」

「はいッ☆ ご主人さま」

 ワイズリエルは、ちょこんと俺の隣に座った。

 ソファーの隅に俺を押しやるように、ぐいぐいと身を寄せてきた。

 そして、息を吹きかけるように言った。


「ご主人さまは、この世界の神であり造物主となられた御方ですッ☆ それで確認なのですが、ご主人さまのほかに誰か、神を創りますか?」

「えっ?」


「『唯一神教』と『多神教』という考えかたがあります。唯一神教――ユダヤ教・キリスト教・イスラム教などでは、神はひとりですッ☆ 多神教――神道・道教・ヒンドゥー教などには、たくさんの神が存在しますッ☆」

「はァ」

 俺が、あまり乗り気じゃないって感じの返事をすると、ワイズリエルは、ちょこんと可愛らしく舌を出した。そして、


「じゃあ、神はご主人さまだけで好いですねッ☆」

 と、早々に話を終わらせた。

 俺は満ち足りた笑みをした。





「それとご主人さまッ☆ お住まいはココでよろしいですか?」

「ん? もしかして引っ越ししたい?」

「ご主人さまが望むならばッ☆」

「はァ」


「神の暮らしかたには、大きく分けて2つのタイプがあるのです。ひとつは、人間の住む世界……すなわち地球に一緒に住むタイプッ☆ もうひとつは、どこか遠くの世界……たとえば宇宙のどこかに住むタイプですッ☆」

 なんだかややこしいことを言いはじめた。

 だから俺は、泣き笑いの顔をして、

「好きなほうで好いよ」

 と、判断を委ねた。

 するとワイズリエルは、


「もしものことを考えると、どこか遠くに住み、そこから世界を創ったほうがいいですねッ☆」

 と断言した。

 だから俺は、

「分かった」

 と首肯した。

 天を指差して、



「どこか遠くに、俺とワイズリエルをこの家ごと移動せよ」

 と言った。

 そして、俺たちは『どこか遠く』に瞬間移動した。

 といっても、見渡す限りまっ白である。

 ぶっちゃけ、もと居た場所とあまり変わらない。


挿絵(By みてみん)


「こんな感じで好いかな?」

「はい、ご主人さまッ☆」

 そう言ってワイズリエルは、俺の頬にキスをした。

 いや。

 ことあることにキスをしてくるのは困りものだけど、と言いつつ実は悪い気はしないのだけれど、しかし実際問題として、ワイズリエルは素早いからこのキスを避けることも防ぐこともできないのだ。




「それとご主人さまッ☆ 天体のことを相談したいのですが」

「ん? まかせるよ」

「はいッ?」


「地球と同じで好いよ。太陽と月がひとつずつで1年が365日、1日が24時間、朝と夜があるって感じ」

「なるほど分かりましたッ☆」

「ここも同じが好いよね? 朝は太陽で明るく、夜は暗くて星が見えると」

「でしたらッ☆」

 ワイズリエルは、嬉しそうになにやら書きはじめた。

 途中、彼女は首をかしげ、


「世界は地球のように球体でよろしいですか?」

 と訊いてきた。

 だから俺は、それで――と即答した。

 ワイズリエルは、くすりと笑ってメモを続けた。

 そして書き終わると、メモ書きの通りに世界を創造するよう、俺に言った。



「りょーかい」

 俺がその通りにすると、世界はその通りになった。


 ああこれだ。

 これこそ俺の望んだ創世だ。

 この、ゆるーい感じ。

 ひどく大らかな世界創造。

 これこそが俺の望んだ、自由かつお気楽な創世ライフである。


「ふふっ」

 俺はこみ上げてくる笑いを抑えることができなかった。

 そんな俺に、ワイズリエルは満面の笑みをした。

 もたれかかり、いつまでも嬉しそうに、俺の顔を間近で眺めていた。




――・――・――・――・――・――・――

■神となって2日目の創作活動■


 神は俺ひとりである――と定義した。

 世界は地球のような球体である――と定義した。

 俺は『どこか遠く』に住んでいて、そこにも朝晩がある――と定義した。


 ……何も考えずに、その場のノリで決めてしまった。もしなにか不具合が生じたら、まあ、その都度変更すればいいや。




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