1日目。その2
「ご主人さまッ☆ 私に名前をつけてくださいッ☆」
と言って、美少女はバチッとウインクをした。
だから俺は、
「まっ、まあ、とりあえずそこに座って」
と言って、椅子を創った。
それに美少女は、ちょこんと座った。
自然と、バイトの面接をするような雰囲気になった。
「あっ、ええと、キミ。名前は」
「だからご主人さまに、名前を付けて欲しいのですッ☆」
「あっ、そうか。じゃあ、とりあえず名前は後まわしで……」
俺は美少女に真っ正面から見つめられて、挙動不審気味になった。
しかし、懸命に動揺を隠して質問をした。
「とりあえず、キミ。なにができるのかね?」
「私は、膨大な知識をもっていますッ☆」
「なるほど。俺の望んだ通りの能力だね」
「きゃはッ☆ 私はご主人さまの望んだ通りの女の子ですッ☆」
たしかに、見た目はそんな感じだ。
「それにッ☆ どんな望みにも笑顔で応える女の子ですッ☆」
「はァ」
俺は上手く創造できたことを確信した。
この美少女は、真面目な感じにはみえない。
一生懸命なにかをやるタイプにもみえない。
だが、それが好い、それがベスト。
それになにより俺の好みから、若干、ズレている。
これなら、ふたりきりだからといって緊張することもない――はずだ。
「ああ、ええと、キミ。膨大な情報とは具体的にはどういったものかね?」
「私はインターネットの情報に直接アクセスすることができるのです」
「えっ?」
「ご主人さまの話す言葉は、各種辞典にアクセスして理解しました。ほかにもいろいろな情報にアクセスできます。ヤフウ知恵袋とか」
「ん? ということはネットのサービスは生きているのか? 人類は滅亡したのではなかったのか?」
「分かりませんッ☆ でも、私がアクセスしているインターネットは、今朝の情報でストップしています。今現在、リアルタイムで更新されている情報はありませんッ☆」
「……なるほど」
俺は頷き、情報を整理した。
そして結論を出し、美少女に言った。
「なるほど、たしかにキミは俺の望んだ通りの人材のようだ」
「ありがとうございますッ☆」
「あらためて言うけど、初めまして。俺はカミサマ、これから世界を創るところだ」
「初めまして、ご主人さまッ☆」
「キミの力を貸してくれるか?」
「喜んでッ☆」
そう言った美少女は、やがて俺をうかがうような瞳で見た。
まるで何か俺に言いたいことでもあるような、そんな瞳だった。
「うん、分かってる。まずはキミの名前を決めようか」
「きゃはッ☆」
美少女は、本当に嬉しそうに両手を胸の前で合わせた。
その笑顔を見て、俺はこの娘を創って好かったと、そう思った。
そして、しばらく考えてから俺は言った。
「キミは賢いからね……ワイズマン」
言った途端、美少女は泣き出しそうな顔をした。
「ごっ、ごめん」
「いえッ☆ ……でも」
「なにか希望があったら」
「……私の希望は、ご主人さまに名前を付けてもらうことです。でも、無理やり希望を述べるならそれは」
そう言って、美少女は上目遣いで俺を視た。
そして、おそるおそる言った。
「もう少し、女の子らしい名前が好いです」
「わっ、分かった」
俺はあえぐように言った。
怯える美少女が、あまりにも可愛かったからだ。
「じゃっ、じゃあ。ワイズウーマン」
「……あの」
「うーん、ワイズレディ、ワイズガール、インテリ」
「あの、英語から離れたほうが」
「よし分かった」
「きゃはッ☆」
美少女は、ころころと笑った。
俺はその笑顔に心を奪われ、一緒になって笑った。
そして、仲良く名前を考えた。
いや。
名前なんかどうでも好かった。
俺は、この美少女と話をしているだけで、楽しかったのだ。
美少女のやわらかな唇から、切なげな吐息とともにつむぎ出される言葉の甘美さが、俺の脳みそをしびれさせた。
俺は女の子から、今までこのような媚びを受けたことがなかった。……――
――……そして。
「ご主人さまッ☆ ご主人さまが神様なので、私は天使のような名前が好いですッ☆」
「うん、じゃあ。……ワイズラエル」
美少女は、ぱっと花の咲いたような笑みをした。
しかし、すぐにぷっくらと頬をふくらませた。
「ダメかな?」
「なんか髪の毛が薄い人っぽいです。その、ズラのあたりが」
「じゃあ、ワイズリエル」
「きゃはッ☆ それが好いです」
「ほんと?」
「はいッ☆ なんかエッチっぽくて気に入りました。ズリエルって感じが」
そう言って、美少女はなにかを握るような手つきをした。
頬を赤らめつつも、じわあっと笑っている。
そんな美少女を見て俺は、
この娘は下ネタもOKなのだな――と、思った。
これは嬉しい誤算だな――と、思った。
すると。
美少女は、俺の表情をすばやく読みとったのだろう。
思いっきりスケベな笑みをした。
そして言った。
「ワイズリって言うのもなんかエッチですッ☆」
そう言って美少女は、自身の胸をもみしだいた。
腰をくねらせて陽気に笑った。
しかし、すぐに甘えるような目をして、
「ワイズリするには、すこし物足りないですッ☆」
と、ねだるように言った。
……。
俺はあえぐように頷いて、そして大きくなるよう念じた。
「ご主人さまッ☆ すごいですッ☆ すごいですッ☆」
美少女は俺の胸に飛びこんできた。
抱きついて、何度も何度も噛みつくようにキスをした。
吸いつくようにキスをした。
舌をも滑り込ませ、全身を投げ出すようにして抱きついた。
「ご主人さまッ☆ この大きさなら、たっぷりご奉仕できますッ☆」
そう言って、美少女は俺の頬をすくうように触り、じいっと見つめた。
俺がつばを呑みこむと、美少女はくすりと笑ってキスをした。
そして、勢いよく立ち上がり、背を向け、誘うようにお尻を振った。
「たっぷりご奉仕できますよッ☆」
――・――・――・――・――・――・――
■神となって1日目の創作活動■
膨大な知識をもつ美少女――ワイズリエルを創造した。
……性格にやや不安をおぼえるが、ひとりでいるのも寂しいので、とりあえず一緒に暮らそうと思う。