12日目。女性観
「待てッ☆」
と、ワイズリエルが俺をつかんで引きずり寄せた。
俺たちは交わった。
ヨウジョラエルは屈託のない笑みで、それをずっと見ていたが、俺たちが陶酔から醒め魔睡のような状態でぼんやりながめたときには、すやすやと眠っていた。
俺たちも心地良い気だるさに包まれてしばし眠った。――
「ご主人さまッ☆」
ワイズリエルは俺の頬をすくうようにさわり、じいっと見つめた。
俺がつばを呑みこむと、切なげに目をつぶりキスをした。
そして俺の手をとり、下にさわらせた。
「ご主人さまは、このワイズリエルに膨大な知識を授けてくれましたッ☆ そのことには大変感謝をしておりますが、しかしこのワイズリエル、時折、知識に押しつぶされそうになるのですッ☆」
「………………」
「性知識も膨大に有しているのですッ☆ 経験がまったくないというのに……」
「俺に、なにかできることは」
と訊いたら、ワイズリエルは瞳をうるませて、
「お話を聞いてください」
と言った。
「ただ膨大な知識を口にするだけ、はき出すだけで楽になるのです」
「いいよ」
肩を抱いて微笑んだら、
「それに経験も。知識に追いつくように経験も、ご主人さまと一緒につみたいですッ☆」
と言った。
――なにやらどんどん要求が増えそうだな。
そう思って苦笑いしたら、ワイズリエルはイタズラな笑みをした。
そして、俺の指をつまみ、太ももの根幹にあてた。
「ご主人さまッ☆ 中世ヨーロッパ……とくにキリスト教では、ここのことを『悪魔の乳首』と呼び、忌み嫌っておりました。恐れていたと、いっていいかもしれませんッ☆」
「………………」
「なぜならこの突起は、ただ気持ちいいだけで、ほかの役割をなんら与えられていないのですッ☆ 教会の影響力の大きい中世ヨーロッパでは、女の性的快楽は赦されませんから、この、撫でられると快感がはしる突起はっ、突起はご主人さまッ☆」
「………………」
「すみません……文献に書かれている以上の刺激です。これはクセになりますッ☆」
彼女はくやしそうな顔をして、しかし歓んで俺に屈服した。
このとき。
俺とワイズリエルの関係が、あらためて定義された。
「ちなみにご主人さまッ☆ 以前、キリスト教は食に寛大だ――と言いましたが、キリスト教が厳しく規制したのは、この性についてなのですッ☆」
「………………」
「すみません、しゃべりすぎましたッ☆」
「いや、もっとしゃべってよ。興味あるよ」
「はい」
ワイズリエルは、にたあっと笑った。
そして、膨大な知識を、まるでたまった水を放出するかのごとく話しはじめた。
「中世の聖職者は、性行為の監督者になろうとしましたッ☆ 回数や体位、時間が適正かどうかに審判をくだしていたのです。そして、女性には貞淑であることを求めましたッ☆ ちなみに女性の結婚が早いのは、『女は性的な欲求が満たされないと淫乱になる』という訓戒があったからですッ☆」
「はァ」
「もちろん、このような女性蔑視は、思想の時代的な限界だと思いますが、しかし、ご主人さまッ☆ 悪魔の乳首を知ってしまったワイズリエルとしては、この訓戒に対して、あいまいな意見を持たざるを得ませんッ☆」
「……うん」
「ワイズリエルは今、『かまってくれないと淫乱になるぞ』と、脅迫しましたよッ☆」
俺が泣き笑いの顔をしたら、ワイズリエルは、
「きゃはッ☆」
と、上体をそらし、べちゃっとしたオンナの笑みをした。
そして。
この日はこのことだけで終わった。
――・――・――・――・――・――・――
■神となって12日目の創作活動■
俺たちはお互いを深く知ることによって今まで以上に結束した。
……こうやって成果だけを書いてみれば、なにやらすごいことを成し遂げたように見えてしまうのが、困ったところである。




