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11日目。お酒

 あたたかな陽差しのもと。

 お花畑で、世にもバカげた花見がはじまった。



「しかし、すげえ桜だな」

「ドイツの桜のトンネルですッ☆」

「それを検索かけたんだっけ」

「はいッ☆ ヨウジョラエルに精密描写してもらいましたッ☆」

 そして、それを見て俺が創ったのだが、


挿絵(By みてみん)


「しかし、すげえな」

 もれるのは感嘆の声ばかり。

 俺たちは満開の桜を、うっとり見上げた。

 そして料理を広げたのだ。



「とりあえず評判が良かった料理だよ。もし、ほかに食べたいものがあれば『神の力』で創るけど」

「せっかくだから、料理して作ったものを食べたいですッ☆」

「うん!」

 ワイズリエルとヨウジョラエルが微笑んだ。

 俺は満ち足りた笑みで小皿を配った。


「ご主人さまッ☆ その茶褐色の飲み物はなんですか?」

「ああこれ? ビールだよ」

「きゃはッ☆ いつもはワインなのに珍しいですねッ☆」

「うん。中世ヨーロッパっぽいかなってワイン飲んでたんだけどね。実はこのビール、アダムの集落で作られたんだよ」

「ははァ」

 ワイズリエルは笑い、俺のことをうかがうような瞳で見た。

 俺が頷くと、ワイズリエルは話しはじめた。



「お酒は『人類が必ず発明する』といわれるほど、様々な土地で同時多発的に、しかも最初期に発明されたのですッ☆」

「それはアダムの集落でも例外ではなかった」


「はいッ☆ 中世ヨーロッパ的な地形では、南ではワイン、北ではビールが作られます。そして乱暴にまとめますが、ワインは高い階級の人々が飲み、そしてビールは貧しい農民が飲みましたッ☆」

「そうなのか」


「しかも、ビールは水の代わりに飲まれていました。ヨーロッパの水は硬水で、日本と違いマズイのです。それに水は腐りますッ☆」

「水は長く保たないのか」

「はいッ☆ だから、ビールは保存できる飲料水なのですッ☆」

「なるほど……」

 俺はビールを口に含んだ。

 アルコール度数は低く、しかも常温だ。

「常温のバドワイザーを水で二倍に薄めた感じかな」

 これならいくら飲んでも酔わないだろう。

 だからひとりで飲むのもなんだからと、ワイズリエルに勧めようとしたのだけど、



「あっ、お酒大丈夫?」

「きゃはッ☆ 飲みたいです」

「あっ、そう? だったらワインも飲む?」

「はいッ☆」

「なんだよ言ってよ。俺、母親とか周りにいた女性がお酒飲まなかったからさ、てっきり飲まないもんだと思って」

「きゃはッ☆ 母親とかだってッ☆」

 そう言って、ワイズリエルは思いっきりスケベな笑みをした。

 まあ、神になる前の女性関係に探りを入れているのだろうが、そんなことをしても無駄である。

 なぜなら俺の記憶はすっぽり抜け落ちているからだ。

 大学くらいまでの記憶はあるのだが、そこから先が抜けている。

 抜けているというか、断片的な記憶しかない。

 世界が滅びた瞬間と、あとはアニメやゲームの美少女たちの記憶しかないのだ。

 ……。

 このまま、すっぽり抜け落ちたままでいかもしれない。




「ええっと。じゃあ、ワイン飲みなよ。グラスとかは現代のでいよね?」

「はいッ☆」

「ヨウジョラエルも、のみたいよ~」

「えっ? 飲んで大丈夫かな」

「ビールなら大丈夫じゃないですかッ☆」

「んー、水の代わりに飲むくらいだから」

 このビールのアルコール度数は、おそらく2%もない。


「じゃあ、はい。くらくらしたら言うんだよ?」

「は~い」

 ヨウジョラエルは赤ちゃんのような無垢な笑みをした。

 少し心配だったけど、酔ってるようにも体調が悪くなる様子も見られなかったので、好きに飲ませることにした。

 もちろん、アルコールのほかにもさまざまな飲み物を用意している。


「って、ヨウジョラエルは何歳なんだ?」

「わかんな~い」

「そうか。まあ、創った俺も特に年齢決めなかったしな」

「ご主人さまッ☆ 辞書に『幼女』は『おさない女の子』とあります。そして『おさない』は、親などの保護を必要とする年齢の子供に対して使用するようですッ☆」

「となると、八歳ぐらいかなあ」

「ですがッ☆ 年齢にくらべて実際の成長が遅いときにも使うようです。『高校生にしては、おさないなあ』みたいにッ☆」

「なるほどよく分からん」

「きゃはッ☆」

「まあ好いか何歳でも」

「まあいいよ~」

 俺たちは大らかに笑いお酒を飲んだ。

 ワイズリエルは、俺にもたれかかって飲んだ。

 嬉しそうに俺の顔を間近で眺め、とろんとした瞳で飲んでいた。

 ヨウジョラエルは両手でコップを持ち、ニコヤカに飲んでいた。

 で。

 ここからがひどかった。……――





 ――……ワイズリエルの酒癖(さけぐせ)がひどすぎたのだ。

「おいこら、ご主人さまァ☆」

「あっ、ああン?」

 ちなみに俺も相当酔っている。

 しかし、それ以上にワイズリエルがぐにゃぐにゃなのである。


「なぜ、抱かないんですくわッ☆」

「にゃぜ、だかないんですか~」

 ヨウジョラエルも一緒になってからんでくるのだが、しかし、ヨウジョラエルはまったく酔っていない。呂律が回らないのはいつものことだし、面白がってワイズリエルのマネをするのもいつものことだ。

 そう。意外にもヨウジョラエルは強かったのだ。



「なぜ、ご主人さまは抱いてくれないんですかァ☆」

「にゃぜぜぜか~」

「いやそれはっ」

「うるさいッ☆」

 ワイズリエルは抱きつき、何度も噛みつくようにキスをした。

 吸いつくようにキスをした。

 舌をも滑り込ませ、全身を投げ出すようにして抱きついた。

 優越感に満ちた目で、真っ正面から俺を見た。

 そして言った。


「ご主人さまは私たちを子供扱いしすぎですッ☆」

「そうだそうだ~」

「中世ヨーロッパの女性の結婚は、裕福なほど若くて平均十二歳です。貧しい農村でも十七歳までには結婚していますッ☆」

「けっこんしててます~」

「エッチも、出産もしていますッ☆」

「そうだそうだ~」

「いやでもっ」

「うるさいッ☆」

 ワイズリエルは、じっとりとした目で可愛らしく(にら)んだ。

 俺はそのなまめかしさと、淫らな声に思考力を奪われた。



「神様なら、二人同時に相手してよォ☆」

「えっちしろ~」

「いっ」

 うめき出そうとした俺を、ワイズリエルが声もなく抑えた。

 俺のくちびるに、おのれの艶めかしいくちびるを押しつけ、そしておおいかぶさり交わってきた。

 跳ねるように上体を起こすと、


「待てッ☆」

 と、つかんで引きずり寄せられた。

 俺たちは交わった。

 いや、犯し犯され犯しあった――というべきか。

 それが翌日になっても続いた。

 ヨウジョラエルは屈託のない笑みで、ずっと見ていた。



――・――・――・――・――・――・――

■神となって11日目の創作活動■


 アダムの集落でビールが発明された。



 ……もちろんこれはアダムの息子・アイスによる発明で、俺の創作ではない。ちなみに、花見は明日も続きます。ノンストップです。




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