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隕石と地下迷宮

「ザヴィレッジから船が南下している!」

 俺はテレビに映るバージ船を指さした。

 そして、マリとワイズリエルに対策を求めた。



挿絵(By みてみん)



「隕石よ。山の南側、川から離れたところに隕石を落とすのよ。それで地面にクレーターを創るの。そして注目させるのよ」

 マリはゲス顔でそう言った。


「隕石って……。まあ、直撃させるわけじゃないか」

「ご主人さま、お気を付けくださいッ☆ クレーターができるほどの隕石衝突はとてつもないエネルギーですッ☆ その衝撃波によって、離れたところにも死傷者が出るのですッ☆」


■――・――・――・――・――

バリンジャークレーター

 アメリカ、アリゾナ州。直径1.2~1.5km、深さ170m

 クレーターを取り囲む周壁は高さ30m


隕石が衝突とした同時に、衝突地点から半径3~4km以内の生物は死滅。

その後、衝突によって発生した巨大な火の玉によって半径10km以内のあらゆる物質が焦げた。

さらに時速2000kmの衝撃波が半径40km近くまで広がる。

そのことによって、半径14~22km以内は閑散とした荒野に変わった。


■――・――・――・――・――


「なるほど、船の連中が死なないよう手加減をしないと」

 そう言って俺がテレビを指さそうとしたら、マリが言った。


「別に隕石で地面に穴を開ける必要はないわよ。隕石を落として、それと同時にクレーターを創るのよ」

「ああそうか、じゃあそれっぽく慎重に……って難しいな」


「平気よ。誰も隕石が地面に穴を開けるところ見たことなんかないでしょ? だから大胆にやっても大丈夫よ」

「それもそうか」

 と、俺が指さそうとしたら、またマリがさえぎるように言った。



「クレーターを創ったら、そのなかに遺跡も創ってね。もちろん船の人たちに見せるためよ。だから、よく見えるように火事を起こして照らすのよ」

「んんん????」

 俺は手を振りかぶったまま、首をかしげた。

 落ち着いて注文を整理した。


 ・山の南側に隕石を落とす

 ・巨大なクレーターを創る

 ・クレーターのなかに遺跡を創る

 ・遺跡が船からよく見えるように、火災を発生させる


「なるほど分かったが、これを同時にヤレというのか」

「ご主人さまならできますッ☆」

「はあ」

「右手でおっぱいをもみ、左手で髪をなでて、耳もとでイヤらしい言葉を囁きながら、右のヒザを、ぐいっと太ももの間に入れる――それと同じですッ☆」

 ワイズリエルが鼻息荒く言った。

 俺は失笑しながら、かるくツッコミを入れた。

 ワイズリエルは頭をおさえながら、嬉しそうにスケベな笑みをした。

 そして言った。



「ちなみに遺跡は、ダンジョンがよろしいかと思いますッ☆」

「ああ、良いわね」

 マリが賛同した。

 俺が首をかしげると、ワイズリエルが説明した。


「ダンジョンとは『地下牢』のこと――ッ☆ 城の地下に造られた監獄を指す言葉です、がッ☆ もともと中世では、城の最重要部……天守のことでしたッ☆」

「天守って城の一番上にあるんじゃないの?」


「最後の砦である天守……すなわちダンジョンは、もともとは塔の頂上4階あたりにあったのですッ☆ ただ、壁の強度を保つために窓などなくほぼ密閉空間でしたッ☆ それは外壁が占領されてしまうと、その塔を敵に使われてしまうからですッ☆」

「外壁から内側に向かって撃ってくるのだな」



「はいッ☆ それで防御力を最優先とした結果、まるで牢獄のようになりましたッ☆ だから籠城戦をしなくなってからは、囚人を閉じこめる場所として使ったのですッ☆」

「それが時代が下り、地下に移された。ダンジョンという名前はそのままに」

「さすがですッ☆ ご主人さまッ☆」


「ちなみに城の地下といえば、秘密の地下道だけれども――。これは山の司教城から(ふもと)の町に地下道が延びていたという事例はあるけれど、まあ、レアケースよ。それよりも、むしろ財産を隠す『秘密の地下室』のほうがよくみられたわ」

「地下の財宝か」


「たとえばッ☆ ヴァルデンシュタイン城は、礼拝堂祭壇に落とし戸があります。そこから長いハシゴで地下室に降りていくことができるのですッ☆ また、ハシゴのほかにも、隠し螺旋(らせん)階段もよく使われましたッ☆」

「なるほどそれは分かったが」

 どんな遺跡を創っていいのか、ますます分からなくなってしまった。

 しかし、こうしている間にも船は南下していく。

 ゆっくりではあるが、順調に進んでいるのだ。



「おいこら、カミサマ。また悪いクセがでてるわよ。あなたテキトーなクセに、たまに気まぐれで悩んだり、ガラにもなく細かいことを考えたりするんだから」

「そうなんだよ。って、うるせえよ」


「ご主人さまッ☆ 船のデッキに人影があります。今がチャンスですッ☆」

「ああ、分かったよ」

「ほらっ、しっかりやりなさいよ。予定を中止してまで探索したくなるような、そんな魅力的な遺跡を創るのよ」

「そうやってプレッシャーかけるなよなあ?」

 と俺は、ぼやきつつ隕石を落とした。

 とりあえず発光させて注目させるよう仕向けた。

 やがて隕石は地面に衝突した。

 俺はそこにクレーターを創り、そして……。


「どんな遺跡がいいかな?」

 ここで持ち前の優柔不断を発揮させた。

 というか、頭の中がまっ白になった。


「ごっ、ご主人さまッ☆」

「なに創ればいい!?」

「あはは、なにプレッシャーに負けているのよ」

「って、人ごとのように言うなよ」

 思わず声を荒げると、そこにミカンがやってきた。


「おっ、なんか面白そうなことやってンじゃん」

「遺跡を創ろうとしているところですッ☆」

「あはは。急ぎなんだけど、カミサマが急に動揺しちゃって」

「へえー」

「まるで童貞が、初エッチで()えてしまった――みたいな感じで」

「ぷっ」

「きゃはッ☆」

「こらっ」

 笑い事じゃないんだけど。

 結構、急いでいるのだけれども。


「じゃあ、とりあえずゲームのダンジョンをネットから丸パクリして置いておけば?」

「おまえ、ふざけんなよ」

「ふざけてないわよ。だってアダマヒアの連中はドラクエとかやったことないでしょう? 丸パクリしても分からないわよ」

「いやっ、だとしても。そんなこと言うなよ」

 それに、おまえがそんなこと言ってしまったら丸パクリできないじゃないか。


「うーん」

「なんだよ、悩んでンのかよ」

「ああ、ミカンなんかない?」

「自由の女神だな。自由の女神が地面から生えてるってのはどうだ?」

 ミカンは得意げに胸を張って言った。

 ぷるんと、おっぱいが揺れた。

 俺はがっくりうなだれた。

 するとワイズリエルが、俺の太ももをさすりながら言った。



「ご主人さまッ☆ 先日、ヨウジョラエルが『城塞都市カルカソンヌ』のイラストを描いたと思うのですがッ☆」

「あーそれだ!」

 俺はカルカソンヌっぽい城壁を創った。

 それをクレーターから出現させた。

 するとマリがするどく言った。


「城門よ。城門を川に向けるのよ。そこからダンジョンに侵入するように仕向けるのよ」

「分かった」

「そしてその奥にも、内側城壁と第二の城門よ。さらに城門と第二城門に挟まれたエリアを塔で囲めば、とりあえずの時間稼ぎができるわよ」

「時間稼ぎ?」


「ダンジョンにはモンスターが棲みついていたのだ! ――とか、テキトーな理由であまり深く考えないでモンスターを配置しなさいよ。それでダンジョンを守らせて、内部を創る時間稼ぎをするのよ」

「なるほどそういうことか」

 カルカソンヌは5年の籠城に成功している。

 そこまでではないにしろ、かなりの時間が稼げるはずだ。



「ご主人さまッ☆ 火災をお願いしますッ☆」

「よし!」

「もっと派手に、そしてよく見えるようにお願いしますッ☆」

「こんな感じかな」

 と炎に集中していたら、マリが横に座った。

 そして俺のボトムスに手を突っ込み、俺の性的なところを握ってこう言った。


「火災も大切だけど、塔もどんどん創って欲しいわね」

「了解」

「ああ、そこよりも右よ。もっと右」

「右ってあそこらへん?」

「だからこんな感じに右、ええっと下、それに右下と同時に、胸の敏感なところをポチっ」

「しょーりゅーけん! って止めようよ」

「あはは、ノリが良いわね」

「というか、格ゲーのスティックみたいに(いじ)らないでよ」

「あなたの握りかたはワイン持ち? それとも上から被せる派?」

「おうふっ。って、遊んでる場合じゃなくて」

「ご主人さまッ☆ 船が止まりません。ダメ押しが必要ですッ☆」

「ええっと、どうすればいい?」


「隕石を落としてくださいッ☆ それで遺跡の破片を船に飛ばすのですッ☆」

 そう言ってワイズリエルは、俺のボトムスに手を突っ込んだ。

 そして俺のスティック状のソレを握ってこう言った。


「ご主人さまッ☆ 急いでくださいッ☆」

「よしっ」

「もっと左ですッ☆」

「いやいや」

「もっと左の上のほうに、そしてゆっくりと下のほうへと」

「ってキミはなにをやっているんだ」

「ちょっと私にも操作させなさいよ」

「ああン、あたしも参加させろよなあ?」

「いやいやキミたち待ってくれよ」

 誤解があるようだが、そこを右とか左とかレバーのように操作しても。

 俺の創った隕石や塔は動かない。



「って、まあいいか」

 俺は、ワイズリエルとマリに(はさ)まれ、握られたこともあって。

 しかも、ミカンが後ろからおっぱいで圧迫してしたこともあって。

 まあ、ぶっちゃけ面倒くさくなってしまったので。

 後は、テキトーに隕石を降らせた。

 そして稲妻も落として、船を無理やり着岸させた。


「ああン。なんか松明(たいまつ)出して救助活動してるけど、大丈夫っぽいぞ?」

 ミカンがソファーを飛びこえてそう言った。

 俺はミカンの悪魔的な迫力のおっぱいから顔を出して、それを確かめた。



 彼らに死傷者はなかった。

 しかも、船が破損しこれ以上の航行は不可能だった。

 それを確認した俺は、美少女たちにモミクチャにされながらも、安堵のため息をつくのだった。



挿絵(By みてみん)



――・――・――・――・――・――・――

■神になって久しぶりの創作活動■


 アダマヒア東南部にクレーターとダンジョンを創った。



 ……デモニオンヒルの南じゃダメなのかと、マリに訊くと、マリは「これで穂村からの東部開拓も防げるわよ」と言った。なるほどと思ったが、でも、それはつまりそれだけの規模のダンジョンを創れってことじゃあ……。ここまで思考が到達すると、俺は考えるのを止めた。


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